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飲食店業界の現状と改革・改善策 〜数値に基づかなければ、優れた人材確保は出来ない〜

当方は、本年度(2023年)から、飲食店の経営コンサルティングに力を入れています。

飲食業界は、2011年から2021年の10年間で、3.8%営業施設数が減少しています。

コロナ禍(2020年)からの売上高減少は、パブ・居酒屋が−68.5%と最大、次にディナーレストラン−34.6%となっています。

※一般社団法人 日本フードサービス協会の公表データより作成
※FF=ファストフード、FR=ファミリーレストラン、DR=ディナーレストラン

閉店や廃業や倒産の話はよく聞くのですが、思ったより数が減ってないのは、新規出店や新規参入(個人含む)も多く、入れ替わりが激しい業界だからです。

新規物件登録↓では、ダントツに小規模店舗(10坪〜20坪)が多く、家賃の低下もあり、居抜きでの出店がしやすい事も要因にあげられます。

従業者数↓は、3人以下の施設が、60.2%という数値からも小規模経営である。

また、経営者の高齢化も進んでおり。

50歳以上の経営者が、86.4%にもなります。

(人生100年の時代では、50代も若いと言えますが・・・。)

こうした、飲食業界の現状の「経営上の問題点」の1番は、「客数の減少」です。

2022年末からのインフレ(現在4%)で、「材料費の上昇」「光熱費の上昇」「燃料費の上昇」も次の経営課題です。

では、「今後の経営方針」をどう考えているかというと、1番が「食事メニューの工夫」となります。

次が、「価格の見直し」です。

この「経営上の問題点」と「今後の経営方針」は、間違っているというのが、私の見方です。

もちろん、経営の問題や課題は、店ごとに全て異なることは承知していますが、統計から分かる大きな問題点があるのです。

まず、客数の減少が「経営上の問題点」ですから、その対策が「経営方針」に反映されてなくてはいけません。

ところが、「メニューの工夫」「価格の見直し」という「今後の経営方針」であることに違和感があります。

「メニューの工夫」というのは、メニュー構成と品目数、メニューの質の変更などが含まれます。

では、本当にメニューに問題があることを、データの基づき、科学的に、数字と論理で分析出来ているか、一つづつ考察します。

「メニュー構成」
小売業でよく言われる、売れ筋だけを揃えても、店舗の魅力は向上しません。食のコーディネイト(一緒に食べる組み合わせ)も見直す必要があります。

「メニューの質」
食堂業の品質とは、見かけ(器、盛り付けなど)や味(アロマ・テイスト・フレーバー)でしょう。そのうち何が欠けているのかを、本当に知っているかが問題です。

次に、「価格の見直し」です。

インフレ下では、ほとんどの経営者は、価格の値上げと考えるでしょう。

価格の値上げで、客数は増加するのかが問題です。

価格を値上げする前から、客数減少している店が、価格の値上げで客数を増やせるとは思えません。

例え、価格以外で改善したとしても、相当な改善努力がないとお客様には、伝わらないでしょう。

そもそも、客数とは、顧客名簿の数を増やすことではありません。

来店頻度を上げることです。

1,000人の客が1ヶ月に1回来店するより、週1回来店することで、4,000人の客数にすることです。

この来店頻度の向上こそが、客数対策の決め手です。

価格の値上げが、果たして来店頻度向上になるのか、慎重によく考えるべきです。

同業態の、価格が上げる店と価格を維持する店とを比較して、お客様は「どちらを選ぶのか」「どちらのファンになるのか」を想像しなくてはいけません。

実は、これらのデータにない、日本の飲食業界の最大の問題点は、「店舗数が過剰」だということです。

以前にも当方が掲載したデータです。↓

世界の大都市(ニューヨーク・シンガポール)と比較しても、東京は4.7倍も飲食店舗数が多いのです。

総務省統計局の出している経済センサスによると、飲食店の事業所は全国で70万弱、東京に8万店舗ほどが存在しています。 人口1000人あたりで7店舗ほどになります。 ニューヨークやシンガポールなどが人口1000人あたり1.5店舗を切る程度なので、世界の都市と比較してもダントツに多いことがわかります。

地方においても同じ環境と言えます。

こうした飲食業界特性としての、競争状況を考えての参入や戦略が必要なことは明らかです。

一言で言えば、「差別化」が出来なければ生き残ることも出来ません。

つまり、今回のデータに基づくと、食事メニューと価格の差別化が必要です。

飲食店は、地域特性が強い業種ですから、出店する地域における、事前の調査や情報収集が必要なことは、言うまでもありません。

インフレで、みんなが値上げだからという理由では、必ずお客様の期待を裏切ることになります。

常連客や来店頻度の高い客離れは、最も注意しなくてはいけないでしょう。

このように、「メニューの工夫」「価格の見直し」が客数減少の問題を解決するかどうかは、「お客様がどう感じるか」「お客様が喜んでくれるか」が大事であり、お客様が「また(近いうちに)来よう」と思ってくれるかで判断しなくてはいけないのです。

それは、少なくとも現在来店して頂けるお客様のデータを観察・分析しているかどうかが大切になります。

宣伝や広告は、現在のお客さを最大限満足させる改革や改善の次に考えるべきです。

現状のお客様を満足出来ないのに、広告宣伝しても、出来損ないの店を広く認知してもらうことになるだけです。

そのためには、客観的な店舗のデータ(数値)が必要です。

現状のレジにあるPOSデータ(数値)からの観察・分析では不十分です。

ABC分析だけでは、店舗の売上・利益・生産性が上がらない本当の原因の究明は出来ません。

稼働実績(シフト)や仕入実績との相関を分析し、計画数値との比較も、日々行うことが大事です。

「店舗に立てば分かる」から、数値は無視するというのが、飲食業界の最大の欠点と言えます。

当方が、飲食店経営は、飛行機の操縦と同じだと主張しています。

飛行機を、操縦室のメータや警報器なしでは正常運転出来ません。

長い経験があるから、コクピットの計器は必要ないというパイロットを信じて、搭乗する客はいません。

現状での飲食店の経営は、厳しい同業との競争とインフレ・コロナ禍などの経営環境にあるのですから、高度な飛行機の操縦と同様と考えるべきです。

「飛行機の墜落」は、廃業や倒産を意味します。

顧客、従業員、取引先への裏切り行為です。

数値で管理しなくては、改善や改革における指示・命令が、数値に基づかない、勘や抽象的なものになります。

言い換えると、数値に基づかない店舗運営は、経験を積まないと「一人前にならない」という昔ながらの零細・家業型スタイルです。

それでは、現在における、最大の経営課題の「生産性向上=処遇・給与の向上」による、優れた人材確保も出来ません。

経験だけの経営では、スタッフも従業員も育たないし、たとえ多店舗展開してもすぐに限界が訪れます。

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