「今日の私を、ずっと覚えていて。」(春・切断・誕生)
「私を、撮ってくれない?」
先輩にそう声をかけられたのは、春のただ中のことだった。
僕は先輩に焦がれ続けてきた。長く艶やかな髪。透き通るような肌。鈴を転がすような声音。
それは恋だっただろうか。よく分からない。ただ、ずっと思っていた。この人を、撮ってみたい。その瞬間を切り取って、僕の写真の中で永遠になってほしい。だから願ってもないことだった。
「僕で良いんですか?」
先輩は何も言わず、ただ、曖昧に微笑む。
その夜、僕たちは初めて、二人で飲みに行った。サークルの飲み会で