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[特定社労士試験]第2問(倫理)の解き方 後編

こんにちは。ににです。(自己紹介はこちら

今回は、第2問(倫理)の解き方全2回の後編として、についてお話しします。
※第15回(令和元年度)~第19回(令和5年度)がすべて同じ問題構成・形式のため、その形式に沿っての解説です。今後の試験において、形式が変わる可能性があることをご承知おきください。

なお、試験全体の問題の構成は、以下の記事でご確認くださいませ。

第2問(事例)の解法:型

前回紹介したフレームワークによって、受託できるかどうかの判断はできるようになりました。

あとはそれを解答用紙に「どう書くか」、解答文として作り上げる工程です。

それには、他の問題と同様、「」を用意しておくことが有効です。

第2問(倫理)の型として、私は以下のような形を使っていました。

(法第22条に該当するかどうか)→(守秘義務の制限を受けるかどうか)→(利益相反行為に該当するかどうか)→(信用失墜行為に該当するかどうか)→(結論)

お気づきかと思いますが、前回ご紹介したフレームワークの順番そのままです。
フレームワークで順序良く考えることは、解答文の書きやすさにもつながってきます。

そして、それぞれの( )の中身は、「事実→判断→結論」の順番で書きます。
たとえば、「立ち話はごく短時間であり(事実)、協議や賛助をしたものとはいえず(判断)、社会保険労務士法22条2項1号には該当しない(結論)」といった感じです。

それぞれ、「設問文から正しく状況を読み取れていますよ」「状況を正しく理解できていますよ」「法的あるいは倫理的に正しく判断できていますよ」ということを表現するため、このような書き方をしていました。

言い回しをストックする

そして、この第2問(倫理)の問題では、「型」として、言い回しをストックしていくことをおすすめします。
私が試験勉強中ずっと使っていた要点まとめノートには、以下の言い回しが書いてありました。
ちょっと多いですが、ご紹介します。

全体

● [事実]があり、今回の依頼は[内容]であるため、[根拠]の制限により受けられない。

法22条

● ○○の依頼は社会保険労務士法第2条1項1号ないし3号の業務であるため、法律上は受任できる
● 社会保険労務士法2条1項3号の業務であり、個別労働関係紛争ではない
● 甲の身分がみなし公務員であれば、社会保険労務士法22条1項により、依頼は受けられない

守秘義務

● 仮に今回の依頼を引き受けると、過去に行なった[事実]のときに得た秘密により、[今回の依頼人]の権利を十分に実現し得ない可能性が考えられるので、依頼は受けられない
● 仮に今回の依頼を引き受けると、その業務遂行中に知り得た秘密により、[従前の依頼人]の権利を十分に実現し得ない可能性が考えられるので、依頼は受けられない

利益相反行為・信用失墜行為

● 仮に[あとからの依頼人]の依頼を引き受けると、紛争の相手方より報酬を得ることとなり、利益相反行為となり、また、[従前に相談等を行った依頼人]との信頼関係を損ねることになる。よって、今回の依頼を受けると、公正に業務を遂行してもその業務の公正さを疑われかねないこととなるので、依頼は受けられない。

受任が可能

● [法律上の規制]もなく、[予想される受任阻害要因]も考えられない。よって、受任は可能である。

こういった言い回しは、その場で考えようとすると意外と思い浮かばず、時間の浪費につながりかねません。
できる限り事前の試験勉強のときから意識して、同じ言い回しを繰り返し使うようにしてください。
そうすれば、本番でも自動的に思い浮かぶようになります。

さらに私は、上記の型以外にも決まり文句もメモしていました。
以下のようなものです。

● 2つの事件は接点がない
● 紛争の相手方より報酬を得る
● 守るべき秘密も持っていない
● (守秘義務により)依頼人の権利を十分に実現しえない可能性がある
● 公正に業務を遂行したとしてもその業務の公正さを疑われかねない
● 最初の依頼人との信頼関係を損ねる
● 信頼関係は残存していない
● 社会保険労務士の品位と信用を著しく損なう恐れがある
● 社会保険労務士法1条の2の公正誠実義務違反となるおそれが否定できない

主に結論の部分の表現ですね。
文にするほどでもないけれど、慣用句的に使えると思い、ストックしていました。

判断に迷ったときは

第2問(倫理)は、判断に迷うような微妙な設定がされることが多いです。何せ、試験ですからね。

繰り返しお伝えしているように、そういった場合に「どちらかだけが正解で、他方は0点」ということはありません。
受託できる/できないのどちらを選んでも、論理展開がしっかりしていれば、少なくとも足切りにかかるような低得点になることはないでしょう。

とはいえ、それでもどちらにするか決めかねることもあるかもしれません。
そんなときは、「受託できない」を選ぶことをおすすめします。

理由は2つあります。

理由①:外したときのダメージの小ささ

理由の1つ目は、「受託できない」を選ぶ方が、外したときのダメージが小さいと思われるから、です。
想定解と解答の判断がそれぞれ受注できる/受注できないの2種類であるときの、4象限の表を書いてみました。(余談ですが、中小企業診断士はこういった4象限の表を好みます)

薄い色の2か所、想定解と解答の判断が一致しているところはまったく問題ありません。
問題となるのは濃い色の2か所、想定解と判断が一致しない場合です。

想定解が「受託できる」のときに解答の判断として「受託できない」とした場合、法的には問題ありません。(集合研修で学びますが、特定社労士の業務については、依頼を受託する法的義務はありません)
ただ単に、特定社労士として業務を受注するチャンスを逃すことになるだけです。

一方、逆のパターンの、想定解が「受託できない」であるのに対して解答の判断として「受託できる」とした場合、これはちょっとまずいです。
法的あるいは倫理的に受託できないものを「受託できる」と判断する人は、特定社労士としてふさわしい知識や判断力を持っていない、と判断されるおそれがあります。
つまり、試験としては大幅減点となる可能性が否定できません。

想定解は、試験を解いているときにはわかりません。
となると、解答の判断として「受託できない」を選ぶ方が、最悪の組み合わせを避けるという意味で無難といえます。

理由②:解答文の書きやすさ

もう一つ、「受託できない」の方をおすすめする理由は、解答文の書きやすさです。

「受託できる」を結論とする場合、前編のフレームワークの挙げたような判断の根拠となる論点すべてで問題ないことを示さなくてはなりません。一つでも制限に引っかかる場合、結論は「受託できない」となります。
そしてそれを、250字という字数制限の中で表現することが必要となります。

おそらく、いくつかの論点について記述したあと、「その他公正誠実義務や品位保持義務などの問題もないから」など、論点を考慮したことだけ示して理由などは省略せざるを得ないことになるでしょう。

一方、「受託できない」という結論の場合、どれか一つの論点に抵触していることを示すことができれば十分です。
そしてその論点について、「事実→判断→結論」で詳しく述べることができます。

まとめ

2回にわたり、第2問(倫理)の解き方を解説しました。
足切りがあるので、最低限10点は確保できるようにしておかなくてはなりません。
解説したように、結論そのものよりそこに至るまでの論理展開の方が重要なので、システマティックに論理を構成できるよう、またそれを解答用紙に表現できるよう、練習を繰り返してください。

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