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夜に星を放つ

 窪美澄さんの「夜に星を放つ」は5編の短編を一冊にまとめたもので、2022年の直木賞を受賞している。最初の短編「真夜中のアボカド」を半分程読んだところで、前に読んだことを思い出して、改めて自分の読書記録を見ると昨年の1月に読んでいる。
 
 その時の1行コメントには、「ほのぼのとした短編集」とあり、勝手評価は中間のBだった。それにしても1年まえに読んだのに忘れているくらいだから、それほどの印象がなかったのか、あるいは・・・・ボケ始めているのか、少々心配になる。
 
 1作目「真夜中のアボカド」は32歳の独身OLがコロナ禍のなか、婚活アプリで知り合った34歳の男性との話がメインテーマだ。順調に交際が進み、お互いに結婚を考えるまでになるのだが、ある日電車中で偶然に、子供を連れた彼と彼の奥さんの姿を見てしまい、騙されていたと判明する。他に諸々の付帯事項が絡み、読後にいい余韻が残る。
 
 2作目「銀紙色のアンタレス」は高校に入ったばかりの16歳の少年が、赤ちゃんのいる若い奥さんに淡い恋心を抱く話だ。自分の少年時代を思い起こすとあながちない話とは言えない。こちらも付帯事項が多いが、上手く絡みあい、ほのぼのした余韻が残る。
 
 今、4作目を読んでいる途中だが、そうだったと思いだしながら、読み進めている。各短編で描いているのは、誰にでもあり得る人生の一断面であり、自分に置き変えてもそれほどの違和感はない。

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