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親友

 西加奈子「サラバ」を読んだ。主人公の歩(あゆむ)が自分の誕生から37歳の現在までを一人称で語る、文庫3冊の長編。家族、特に母と姉との葛藤と、2人の親友との繋がりが主テーマだが、その他諸々の人との物語もあり、すべてが複雑に絡み合っている。結局自分自身に失望し、落ち込んで行くのだが、最後は家族と親友にすくわれて心の安定を取り戻す、広い意味でハッピーエンドの物語だ。
 
 読みながら、随所で自分の若いころを思い出し、つい比べてしまう。特に彼には無二の親友が(多分2人)いるが、自分には心から気持ちを許せる親友はいない。物語と真剣に比べる必要はないとは思うが、些か寂しい。
 
 学生時代から続いている友人は数人いる。特に高校時代からのA氏とは長い。彼は文系、私は理系で違う大学に進学したが、大学時代は完全な(女性を巡っての)遊び仲間、真面目に人生を語った記憶はない。社会人になってからも、結婚してからも偶に会っていた。時には夫妻同士で会うこともあった。
 
 其の後、彼はお父上殿の後を継いで、それなりの(少しは世に知られた)企業のオーナー社長になった。当方は真面目で地味な技術系サラリーマン、53歳で新潟に転勤して会うことはなかったが、8年後に東京に戻って企業のトップになり、立場が似ていたこともあり、再び偶に会うようになった。当方が姫路にいた7年間は会わなかったが、3年前74歳で姫路から東京に戻って、再び偶に会うようになった。社長を長男に引き継ぎ暇になったとのこと。
 
 付き合いは高校2年から足掛け60年になるから、長いと言えば長い。その間、付かず離れずだから、偶に会えば積もる話はいくらでもある。親友・・・・なのかもしれない。

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