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林真理子「下流の宴」

 林真理子さんは1986年に「最終便に間に合えば・京都まで」で直木賞を受賞している。小池真理子さん、宮部みゆきさんはそれなりに読んでいたが、林真理子さんは読んでいなかったので、「下流の宴」を読んでみた。
 
 上流乃至中流の家庭の主婦が、長男・長女の諸々にてこずる話で、当方と時代が重なることもあり、興味深い内容だが、もう一つのめり込めなかった。主要な登場人物が典型的なモデルのように描かれて分かり易いが、それだけに誰でもが持つ複雑な心模様が見えない。
 
 長男は、勉強が嫌だと高校を中退、家出してバイト生活をしている。バイトで生活できるのだからそれでいい、嫌な事を一生懸命にやる、努力するなどはやりたい人がやればいい、自分には必要ない、と思っている。同じくバイト中の女性と同棲して結婚しようと考えている。
 
 長女は、勉強はほどほど、大学はお嬢さん学校(学習院?)に行き、就職は人形町に本社のある中堅の上場企業、某メーカーから内定をもらうが、そこではいい結婚相手が見つけられそうもないと、派遣で六本木の新進IT企業に勤務する。
 
 話しは脱線するが、私が2008年から6年間トップを務めた企業が、人形町に本社のある中堅の上場企業、メーカーだった。物語のモデルになっているのかもしれない。それにしても長女は人形町より六本木が上と思っているようで、あまり面白くない。
 
 物語は予想外の展開が続き、それなりに楽しめるが、(誠に失礼ながら)余韻は残らない。

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