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「この映画はアクションモノじゃない、サイエンスミステリーモノだ」「ドドドどういうコトだよ晴明!?」【陰陽師0 感想】

※本記事、filmarksの転載になります。
以下リンクからも読めるので是非。


予告編の映像美に釣られて鑑賞。
……まぁそこそこ面白かった。

実写版『呪術廻戦』を期待して見に行ったものの、まさか『TRICK+インセプション』だったとは。

先に言っておくと、本作はアクションものではない。ミステリーモノだ。とある姫が真夜中に経験する怪異や、権力者が呪いにより不審な死を遂げた殺人事件など、その裏に潜むトリックを暴いていくのがメインストーリーとなる。

作中の陰陽師達は、"呪"と書いて"シュ"と呼ばれる魔術を操る。その字面だけで捉えるとオカルトを連想するだろうが、そのどれもが現実の科学を応用したハッタリである。

例えば物語冒頭。主人公"安倍晴明"が、モブ達の前で、呪言を念じた葉をカエルに当て爆殺するシーンがある。その仕組みはこうだ。まず精神をボーっとさせるお香を焚き、モブ達の正常な判断力を奪う。そして葉がカエルに当たった瞬間激しく足踏み、音で爆殺を演出すると共にカエルを逃がす。更にモブ達に水滴を当て、それを血しぶきと錯覚させる。こうして、爆死したように"見せかけていた"のだ。

上記のように、科学的な理屈に基づいた超常現象≠呪を引き起していく描写の数々が非常に面白い。マジックにおけるテクニック講座を見ている感覚というか……。「自分も努力すれば、この時代で陰陽師になれたかもしれない」と思わせられる、絶妙な"地味さ"に惹かれた。

逆に、予告を見てド派手なアクションを期待すると肩透かしを食らうかもしれない。まぁ私はドラマ『TRICK』が好きなので、意外ながらも楽しめました。……謎はとべてすけた!

「じゃあ予告に映っていた超常現象の数々はなんだったんだ?」と、ツッコミたくなる未視聴勢もいるだろうから更に解説。

物語終盤晴明は、とある陰謀で催眠術の呪にかかり、精神世界に閉じ込められてしまう。晴明曰く「人は皆、意識の底でつながっている。」とのことで、いわば全員で同じ夢を見ている様な状況に陥るわけだ。まんまインセプション(orパプリカ)だね。

つまり、予告で描かれていた、炎龍の襲来や天変地異は、どれも精神世界での出来事だったというワケだ。これも現実の科学に則っている……



とはならんか。まぁ「複数の人物を一斉に気絶させて、悪夢を自由に操るなんてもはやガチ魔法では?」と思わなくも無かったが、元々ドッカン呪術バトルを期待していたので許す。

あとは散々"呪"を科学として描いていた割に、晴明だけは本物の超能力者でしたー、というオチは結構好き。作中晴明が扱う呪だけ、トリックで片付けるには無理がある描写も所々あったので、「あーあれはガチ魔法だったのね」と納得。『TRICK』でも、エセ霊能力者だらけな中でたまーにホンモノ混じってる時テンション上がったもんね?『霊能力者バトルロイヤル』の佐藤健とかまさによ。あの感覚を思い出したので好印象。



良かった点はこれくらいかな。あとは不満点が3点ほどあるのでそれも語らせて欲しい。


まず晴明の相棒ポジション、染谷将太演じる源博雅役が、無駄にコミカル過ぎる。

本作、全編通して神秘的かつシリアスな画作りで統一されている。しかしソメショウお得意のオドオドしたキョロ充演技が間に入ることで、世界観が壊れているように感じたのだ。まぁ劇場ではクスクス笑い声が聞こえていたので、人によっては、引き締まった画を和らいでくれる"癒やし枠"として許容出来るのかもしれない。私の隣に座ってるお姉さんとか結構声出して笑ってたしね。

ただ私個人としてはイマイチだった。役者としてのソメショウは嫌いじゃないんだけどねー。今回に関しては、ウケを狙いすぎて滑っている佐藤二郎みたいに写ってしまった。


また本作、サイエンスミステリーと称したものの、申し訳程度に生身のアクションがある。ただ………正直微妙。

第一に、アクション全体を通して寄りの画が多く、何をやっているか非常に分かりづらい。また各アクションの1挙動ごとに細かいカットが入るため、見応えを感じない。1カット内で一連の流れを見せてほしいのに、無駄に分割されるせいでモヤモヤする。既存の作品を挙げると、『シン・仮面ライダー』や実写版『ムーラン』が近いかな。まぁこの2作ほど酷くは無かったけど。

金カム実写の方で、"山崎賢人は動ける役者"という実績を見ているので、これは単に制作陣がアクションを取るのが下手だったと言わざるを得ない。あーあ、せっかくザッケンがワイヤーアクション頑張ってるのに勿体無い。


そして最後の不満。というかこれは邦画全般に言えることだけど、やはり説明台詞が多い。序盤、ツダケンのイケボナレーションで世界観が説明される件に関しては何とも思わない。アレが無いと陰陽師の縦社会とか社会的地位がボンヤリしてしまうから。ただ「平安時代の言葉遣いだと分かりづらいので、ここからは現代語訳でお送りします」みたいなことを言い出した時は失笑したけどね。そんなんワザワザ言う必要ないやろと。「この時代にこんな言葉遣いしてるワケ無いだろ!」みたいな頭オカシイ批判を避けるためか知らんが、あぁいう観客を子供扱いするかのような説明は冷める。

キャラクターの心理描写についても同様だ。姫と博雅の恋模様なんか、散々互いの思いに気づかぬフリをしていたクセに、物語終盤で懇切丁寧に心情を吐露しだすので、「今までのすれ違いは何だったんや」とスカした視点で見てしまった。………まぁ帝に嫁ぐ前にやっと本音で話せたー的なオチを意図しているのは分かる。ただ"観客全員に分かりやすく説明しなければ"という制作陣の余計なお世話感が全面に出てしまっていたのでマイナスポイント。

この2人に限らず、留年生としての苦労が垣間見える安藤政信や、清明の噂だけを聞いて偏見を垂れ流す帝の侍女達など、どいつもこいつも説明説明説明説明。全編通して単調に感じた。正直途中眠くなったね。

せっかく映像がキレイなんだから、心理描写は役者の演技に委ねて、説明台詞は最小限にすれば良かったのに。



総括、「期待していたのとなんか違うけど、見に行って良かったな」とは思える佳作でした。説明台詞が控えめだったら、もうちょい評価高かっただけに惜しい。映画の作り的に、続編の余地が残されていたので、新作が出たらまた見に行こうとは思います。次は是非、晴明vs帝の領域展開バトルを期待したい。絶対サイコキラーだろ帝。

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