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スーパーヒーロー、全員救わなければいけないのか問題(救済のジレンマ④仮面ライダーオーズ:やっぱり全てを救いたい)

part4です。
前回までの記事はこちらから

今回は、救済のジレンマを変わった角度で描いた名作を紹介しよう。

仮面ライダーオーズ/OOO

オエージ!これを使え。

今回の記事で唯一の日本産ヒーロー。無欲()な青年"火野映司"が、欲望が具現化した"オーメダル"を駆使して、怪人"グリード"と戦う物語だ。

本作の見どころは、主人公映司が、救済のジレンマで心が壊れた後から物語が始まる点だ。

彼はかつて、”すべての人を救いたい”という理想を持っていた。しかし、とある紛争地域の村に滞在していた際、仲良くなった少女を爆撃で失うという悲劇に遭う。目の前にいながら、少女を救えなかった映司は、それ以来自分の理想が身の丈の合わないことを自覚するようになるわけだ。

その後作中で、こんなセリフがある。

映司「人が人を助けていいのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないかって」

全く以てその通りだ。前回記事で紹介したデビットも同様だが、一人が救える範囲には限界がある。それをしっかり受け止めた上で自分が出来る事をやっていくのが、ヒーローのあるべき姿だ。火野映司も例外ではなく、等身大のヒーローであろうとするわけだが…………。

物語中盤、この男の本性が暴かれる回がある。ユニコーンヤミーという人の夢を具現化し、そして破壊する能力を持った怪人が登場した回でのワンシーン。映司はその怪人から、自身の夢を具現化させられる。そこに写ったのは………巨大な地球だった。

そう、彼はすべての人(=地球)を救いたいという理想(欲望)を捨て切れずにいたのだ。よくもまぁ「人が人を助けていいのは、自分の手が直接届くところまで」なんて大嘘をつけたものだ。

他にも、彼の本質を最も的確に描いたシーンがある。劇場版だ。

物語は、主人公一同とモブ数十人が、江戸時代にタイムスリップさせられら所から始まる。映司は、彼らと元の時代へ帰るために、事の元凶である古代の錬金術師"ガラ"と対峙する……というのがあらすじだ。

終盤映司は、ガラの使い魔"ベル"から、以下の様な取引を持ちかけられる。

ベル「YESかNOかでお答えください♪あなた(火野映司)とあなたの家族だけ、元の時代に戻ることが出来ます♪ただし、それ以外の方は全員消えていただきます♪」

仮に映司がYESと答えれば、彼とその仲間は現代に帰れるものの、共に飛ばされてきたモブ達は消滅してしまう。救済のジレンマとしてベタとも言える、王道シチュエーションだ。



この問いかけに対し悩み抜いた映司は、最終的にYESと答えてしまう。"見捨てられた"と絶望するモブ達。



………しかし、誰も消滅しないどころか、全員が元の時代に戻っているという驚きの結末だった。周囲が混乱する中、唯一人、映司は真っ直ぐな目で放った。

映司「皆、一緒にいて助け合ってる……"家族"だよ!」

そう、彼は共に飛ばされた人々全員を、"家族"と認識していたため、1人残らず元の時代に帰れたのだ。すべての人を救いたい火野映司だからこそ為せた荒業。このシーンは、救済のジレンマにおける第3の選択肢を示したと言っていいだろう。

※この作品、一本の映画としては何とも言えない出来なのだが、見所は沢山あるのでおすすめ。松ケンがヤミーを斬り裁いている所とか最高に笑える。

以上を踏まえて、火野映司における救済のジレンマを考えていきたいのだが………。そもそも彼には、救済のジレンマを抱えるという発想すら持ち合わせていない。困っている・危機に瀕している人が複数いれば、全員を救おうとする。それが火野映司というキャラクターなのだ。無論、それが実現出来ないからヒーロー達は悩み苦しむわけなのだが………。実現出来ないと分かっていも尚、救う事に執着し続ける。そういった正義を描いたのが、仮面ライダーオーズなのだ。

ちなみに、悪評高い復活のコアメダルに対してのレビューも書いているので、よかったら見てね。先に言っておくと、割と肯定派です。

─次回に続く

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