統計検定2級合格体験記


はじめに

この度統計検定2級に合格することができました。本文でも述べますが、私自身、一度不合格になり資格取得を一度は諦めた身です。ですが、再度発起し、2回目で合格することができました。他の方の合格体験記みたいに、「1ヶ月で合格!」「一発合格!」みたいなスマートな合格はしていません。社会人ですので、「参考書を10周」みたいな尋常じゃない勉強時間を確保したわけでもありません。まとまった時間を思うように用意できない中苦労もしましたし、自分の数学センス(?)の無さを嘆いたりもしました。自分が苦労したからこそ、その経験が他の方の役に立てばと思いこの記事を執筆しています。どなたかの役に立てば幸いです。

こんな方に読んでほしい

私の体験記は地味ですが、正攻法ではあると思っています。だからこそ、以下のような方のお役に立てば幸いです。
・これから統計検定2級を(ある程度余裕を持って)勉強しようと思っている方。
・現在勉強中の方で、勉強方法に不安を感じている方。
・統計検定2級に一度不合格となり、再挑戦されている方。

一方で、
・とにかく最短で合格したい
という方のご要望にはお答えできないと思います💦

前提情報

以下に私の情報を記載しておきます。
【試験を受ける前の状態】
・高校、大学ともに文系出身
・社会人になって初めて統計検定の勉強を始める
・数学には極度の苦手意識はないが、得意な意識もない
・仕事では統計・数学知識は全く使わない

【試験結果と勉強期間】
<1回目>
勉強期間:6ヶ月(主に休日+平日夜に元気あれば)
試験結果:不合格(52/100  合格ライン:60/100)

<2回目>
勉強期間:2ヶ月(主に休日+平日夜に元気あれば)
※1回目の受験から半年経過
試験結果:合格(82/100 合格ライン:60/100)

勉強開始〜1回目の受験

ふとしたことでデータサイエンスに興味を持ち、その流れで統計検定を取得しようと決めました。大まかな勉強方法とスケジュールは以下の通りです。

<1~2ヶ月目>
統計WEBを読み進めて、統計検定で問われる内容を把握する。
正直、初めて聞くようなことばかりで、ちんぷんかんぷんでした。統計WEBは非常に良い学習コンテンツだと今は思いますが、初心者の私には難易度が高かったので、「完全独習 統計入門」という本をBOOK OFFで購入して併読しました。この本のおかげで、なんとなーく統計学でやりたいことや、概念が分かるようになりました。
それでも引続きよくわからないなと思いながら、統計WEBをとにかく終わらせることを目標に進めました。

<3~4ヶ月目>
過去問(2018〜2021)を購入し、実際の問題を解き始めました。当たり前ですが、撃沈しました。問題の意味も分からないし、解答・解説もちんぷんかんぷん。統計WEBにも過去問解説が載っているのですが、こちらも問題によってはちんぷんかんぷん。自分の理解の無さに嫌気がさしました・・・。

そんな時に、非常に役に立ったのが以下のYouTube動画でした。
・もっちゃんさんの統計検定2級2021年解説動画
・データサイエンスラボ

上記の2つには大変お世話になりました。
もっちゃんさんの動画は、過去最高難易度と言われる統計検定2級の2021年6月問題を丁寧に解説してくださっています。この動画で、問題文を見た時にどのようなことを発想すれば良いか、どう解き進めれば良いかという感覚を養うことができました。

また、データサイエンスLabチャンネルも非常に勉強になります。統計の概念はイメージしづらい部分があります。しかし、こちらのチャンネルではグラフを用いて、統計知識を視覚的に解説しています。合格した今では、統計検定の問題に対して「頭で図をイメージして考える」ことが多いのですが、そうした思考法の原点はこちらの動画だと思っています。

<5~6ヶ月目>
試験も近づいているため、問題量を増やすよりも、理解を深めようと思い、過去問(2018~2021)だけを3周くらいしました。正直、ここまで勉強してきても、分からない問題は多かったです。勉強初期に比べれば多少知識は増えたものの、それでもつまづくことが多かったです。同じ問題ですら、1周した頃には解けなくなる始末。この時は、過去問(一度以上解いたことある状態)を解いて良くて8割、悪くて6割くらいでした。

<試験当日>
正直、受かる自信は50%くらいでした。勉強を重ねたからこそ、基本的な公式は覚えていましたし、ワンチャン受かるんじゃないかとも思っていました。しかし結果は不合格。反省点は以下の通りです。

・中央値、四分位範囲の問題でつまづいた
 正直基礎問題の部類なので、勉強ほぼしなくても解けると鷹を括ってました。しかし本番で、「中央値で2分割した後、第1四分位範囲を考える時に中央値は含めるか?」という超初歩的な部分で瞑想をしてしまい、時間を取られました。簡単な問題でも足を掬われることがあると反省しました。

・覚えてはいるけど、理解していなかった
 1番の敗因はまさにこれで、公式などを覚えてはいるものの、なぜその公式になるのかなどの理解が不足していました。だからこそ、公式を覚えたつもりでいても、本番で「あれ、σで割るんだっけ?σ2乗で割るんだっけ?」という記憶に対する不安も出てきますし、すこし捻ったような問題に太刀打ちすることができませんでした。

勉強再開〜2回目の受験

1回目の不合格から、しばらく統計検定取得を諦めていました。資格取得よりも知識を得られたことが学びと、言い訳がましく資格から目を背けていました。
しかし半年ほど経ち、もう一度チャレンジしようと発起し勉強を始めました。

<1ヶ月目>
いわゆる赤本と呼ばれている、「統計学入門」と、過去問(2014~2016)を購入しました。赤本の内容は難しく、100%の理解は不可でしたが、それでも通勤時間に読み進める中で「なるほど、こういう仕組みだったのか」と気付かされることが多く、とても勉強になりました。
土日は過去問(2014〜2016)を進め、以前学習した内容を思い出していきました。

この時に1回目の反省を生かして、「時間をかけても理解する」ことを意識しました。その問題を他の人にも説明できるか?と自分に問いながら、分かったつもりを無くしていきました。
また、問題の範囲を超えてでも、関連する知識と知識を結びつけるようにしました。例えば、
・分散分析の穴埋め問題が出てきた際には、自分で全部表を埋めてみる
・公式の選択問題が出てきたら、選ぶだけでなく確率まで計算してみる
・二項分布の正規近似が出てきたら、そもそも二項分布とは?ベルヌーイ分布との関係は?なぜ正規近似できるんだっけ?など、深掘ってみる
など、知識を体系化していくことを意識しました。

<2ヶ月目>
過去問(2014~2016、2018〜2021)を1周し、できなかった問題をピックアップして再度取り組むことを繰り返しました。
この際にも、
・問題文から、どういう思考経路を辿ったから間違えたのか
・正しくは、どういう思考経路を辿れば良かったのか。
と、なぜ間違えてしまったのかを考え、修正することを意識しました。

<試験当日>
1度落ちていたトラウマもあり、非常に緊張しながら臨みました。しかし、勉強の甲斐もあって、やや悩みつつも、自信を持った回答が1回目の受験よりも多くなったことを実感しました。
試験結果で合格の文字が表示された時には、本当に安心しました。

合格する上で大事だと思うポイント

これまでの経験を通して、私が大事だと思うポイントは以下の通りです。

  1. 統計の概念を理解する

  2. 時間をかけてでも、納得するまで理解する

  3. 知識をつなげる

  4. 思考経路を意識する

1.統計の概念を理解する
専門家ではないので偉そうに語れませんが、統計検定2級の範囲では「母集団」と「サンプル」の関係性が基礎になってきます。
母集団が正規分布N(μ,σ^2)に従うとき、そこからサンプルをn個抽出したら、そのサンプルの平均は正規分布N(μ、σ^2/n)に従う。といったように、母集団の情報が分からないから、サンプル情報に母集団情報を推定しようとする営みが統計学の根底にあると思っています。この基礎部分をきちんと押さえることが重要だと思います。(1回目の受験では、公式の暗記を優先しており、なんだかんだこうした基礎部分がおざなりになっていました)

2.時間をかけてでも、納得するまで理解する
分からない部分を、なんとなくで乗り切ると、応用問題に歯が立たなくなります。逆に、分からない部分を理解すると、その問題以外の範囲にも応用が効くようになります。問題数をこなす方が大事というのは一理あると思いますが、一方で、1問に質高く取り組むことも大切だと思います。

3.知識をつなげる
問題を1つ解いた時に、問題の答え以外にも意識を向け、自分の中の知識を総動員させることも良い勉強だったと思います。例えば、
・母平均の推定問題だったけど、母比率の推定との違いはどこだったっけ?
・回帰分析表の読み取り問題だったけど、表中のt値やp値、標準誤差って何を意味しているんだっけ?
・ラスパイレス指数を求める問題だったけど、パーシェ指数の求め方はどうだったっけ?
のように、問題+αで勉強することも有用だったと感じています。覚える知識や公式が多いので、知識を個別単体で記憶するのではなく、少しでも他の知識と紐づけておくと忘れにくいと思います。

4.思考経路を意識する
2回目の試験に向けて特に意識した部分の1つです。問題の振り返りをする際に、「自分は問題文を読んで、どの文言から何を考えて、どのように答えを導いたのだろうか(もしくは、どの過程でつまづいたのだろうか)」というように、自分が問題を解いた際の思考経路を思い出し、それが正しかったか否かを確認しました。解けなかった問題については、どこでつまづいたのか確認しました。そうすることで、「問題の解き方」が段々と分かるようになりました。

勉強方法とアドバイス

ここまで偉そうに話してきましたが、最後に私自身の反省をもとに、これから統計検定を受験される方へ、僭越ながらアドバイスを書かせていただきます。

〜これから勉強を始める方へ〜

初めて統計を勉強される方は、まず統計の概念、世界観を理解することから始めるのが良いと思います。前述した通り、「母集団とサンプル」「全体と部分」を行き来することが統計検定2級のベースにあるため、その概念・世界観を理解することが重要だと思います。
私はこの理解に時間がかかり、それを何となくやり過ごしたから1回目の試験に落ちたと思っています。基礎となる部分だからこそ、丁寧に把握されることをおすすめします。

流れとしては、
①「完全独習 統計入門」のような、統計初心者向けの本を読んで、統計の世界観を何となく知る。(1ヶ月)
②統計WEBを読む。過去問を2年分くらいやり、問題の雰囲気を掴む。(1ヶ月)
③解いた2年分の過去問で、不明点を洗い出して納得いくまで調べる。(←多分一番時間がかかります)。この時、データサイエンスLabのような、視覚的に理解できるコンテンツがおすすめです。(2ヶ月)
④その他の過去問を行い、③と同様の勉強を行う。(2ヶ月)
のような流れで勉強されるのが良いかと思います。
※期間は目安です。

〜絶賛勉強中の方へ〜

絶賛勉強中の方で、もし壁に当たっている方がいらっしゃれば、次のことを少し考えてみてください。
・今解いた問題について、他の人に説明できますか?
・今解いて間違えた問題について、なぜ間違えたのか説明できますか?
これによって、自分が「分かった」のか「分かったつもり」なのか見極められると思います。もし分かったつもりであった場合、それを「分かった」の状態まで持っていくと最高にスッキリすると思います。

また、以下のようなことも考えてみてください。
・問題文によく、「ただし〜は正規分布に従うと仮定する」「ただし〜は独立であると仮定する」とありますが、なぜその仮定が必要か分かりますか?
・問題文で「μ」と「x̄」、「σ^2」と「s^2」の記載があるとき、それぞれの違いが分かりますか?
※考えるべき対象が母集団か標本かが変わってくるということです。
上記のように、「問題に直接関係ないからあまり意識していないけど、言われると分からない」みたいなことがあった場合は、こうしたちょっとしたことへの理解を深めることで、一気にその他の問題への理解が深まったり、変な引っ掛け問題に引っかかることを防げると思います。

私の反省ですが、「分かったつもり」がやっぱり良くないです。時間がかかっても、面倒でも、「分かった。説明できる。」まで自分の理解を持っていくことが、遠回りのようで最短の勉強だと思っています。
「分かったつもり」は、後で足元掬われる可能性が高いので、是非面倒臭がらずに勉強されることをお勧めします。

〜再挑戦される方へ〜

基本的には絶賛勉強中の方へのアドバイス同様、「分かったつもり」をいかに減らすかが大切だと思います。一度不合格を経験されたからこそ、ここは敢えて基礎に立ち戻り、再度理解を深める勉強が良いと思います。
例えば、統計WEBを改めて一から読み直してみると、初めて読んだ時よりも多くのことが分かるようになり、自分の知識が深まっていることを実感します。その一方で、「あ、こういうことだったのか」と、改めて納得することも多くあると思います。基礎への立ち戻りが何よりも肝心だと思います。

参考にした学習教材

最後に、私が勉強する中で参考にした学習教材を共有させていただきます。
ここまでお読み頂きありがとうございました。私も満点合格では無いので、決して偉そうに統計検定について語れる立場ではないことは承知しつつも、少しでも私の経験が皆様のお役に立てれば幸いです。

<本>
・小島寛之『完全独習 統計学入門』
私が初めて統計学に触れた本です。統計知識が0で読んだので、この書籍の内容でも理解するのに時間がかかりました。なので、もしこれから統計学を勉強する方が、この本を読んで難しいと感じても、それは普通だと思います。安心してください。それでも、統計学のエッセンスを分かりやすく説明してくれる良書だと思いますので、辛抱して読み進めることをお勧めします。
※データサイエンス企業である「サイカ」の社長が、本気でデータサイエンスや統計を学びたいと思う際、この本を読み切れるかが最初の篩(ふるい)だとおっしゃっていましたが、確かにその通りだと思います。

・Newton『ゼロから分かる統計・確率』
直接勉強に使ってはいませんが、統計と仲良くなるために読みました。以外にも統計検定で出てくるような公式も記載されています。統計に対して抵抗感を減らすのに役立ちました。

・『統計検定2級 過去問題集』
過去数年分の過去問が出版されておりますが、私はBOOK OFFで手に入った「2014~2016」と「2018〜2021」をやりました。過去問はなるべく新しいものをやった方が良いと思っているのですが、統計検定に関しては、2014年の問題でも十分勉強になりました。
※難点として、解説が不親切です。分からない問題は、統計WEBの過去問解説やYouTubeなども利用しました。

・東京大学出版会『統計学入門』
いわゆる赤本です。こちらは読まなくても合格はできると思います。ですが、読むと学びは多いと思います。最初は読みにくいなと思ったのですが、少し辛抱すると読める部分が増えてきました。統計検定2級の範囲外のこともありますが、7割くらいは2級範囲内だと思っているので、時間に余裕ある方は一読をおすすめします。

<YouTube>
・データサイエンスLab
このチャンネルには本当にお世話になりました。視覚的に統計学を理解できるため、大変重宝しました。これから勉強を始める方や、勉強中で壁に当たっている方は、是非一度試聴をお勧めします。

・3Blue1BrownJapan
統計検定では頻出の概念である「中心極限定理」を視覚的に理解するのにおすすめです。中心極限定理は、参考書では当たり前のように語られますが、ぶっちゃけ「本当に?」と思っていました。そんな疑問を解消してくれたのがこのチャンネルです。おすすめです。

・もっちゃんさん「統計検定2級2021年6月解説」
統計検定2級で最高難易度と言われる2021年6月問題を解説してくれるありがたい動画です。解説のわかりやすさもさることながら、考え方の道筋も話してくれるのでお勧めです。初めて2021年6月問題を解いた時、過去問の解説では理解できませんでした(公式過去問題集の解説はかなり不親切だと思ってます)。そんな状態の私を、「そこそこ分かるかも」レベルまで引き上げてくれたのがこちらの動画です。

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