にこ千鳥

沖縄で感じたこと、経験したこと、考えたことを書いてみたい、三線のこと、沖縄にまつわるあ…

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沖縄で感じたこと、経験したこと、考えたことを書いてみたい、三線のこと、沖縄にまつわるあれこれを書いています。時系列の時もありますが回想録の時もあります。最近は沖縄以外のことも書いています。毎週金曜日更新予定、たまに月曜日も追加します。

最近の記事

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琉球古典芸能コンクール2021・付き添い編

琉球古典芸能コンクールの歌三線新人部門の本番を間近に控えたある日のことである。 先生から私の本番の2日後の同じ新人部門に先生の門下生がエントリーしており、その日は先生が最後まで付き添えないので、お手伝い出来ますかと言われた。 私に務まるのかしらと思ったが、私の三線人生にとって良い経験になるだろうと直感し快諾した。 しかし、付き添いとは何ぞや。 これが後々、結構重要ポジションだということが分かる。 私がコンクールの出場の日、先生に付き添いについて質問した。先生は「今日の私の

    • 会津にゃん太郎交流会③

      かつおぶしが我が家にあることは非常に珍しく、お好み焼きの日でもかつおぶしは踊らない。理由は使いきれないからだ。 しかし、その日に限って我が家にかつおぶしのミニパックがあった。 数日前に作った島らっきょうの塩漬けに添えるために買ったものだ。普段なら無いモノが、今は有って、それが、かつおぶしと言う不思議な縁を感じる。 今日、古民家にあのネコが来たらあげてみるかという軽い気持ちでポケットにかつおぶしパックをねじ込んで軽トラに乗り込んだ。 古民家の庭先にある畑で背比べでもしているの

      • 会津にゃん太郎交流会②

        近所のスーパーで山菜のコゴミが1パック650円で販売されている事を知り、我が古民家のまわりにも生えていたら良いなぁと思い、目を皿のようにして夫が見つけだしたコゴミはコゴミではなく鬼ゼンマイだった。 それを知ったのは、お浸しにしてちょっと硬いなと思いながら食べた次の日のことである。 鬼ゼンマイでもコゴミでも会津には春の恵みが溢れている。 私はいつものように古民家の庭先で、せっせと空豆だのスナップエンドウの苗を植える作業をしていた。 カシャン!! という小さな音に手が止まる。

        • 会津にゃん太郎交流会①

          我が古民家で初めて黒白のネコに会ったのは古民家の片付けを始めた初秋だった。 古民家は傷みがあり住むことはできないが、築150年の歴史を背負って令和まで生きてきた。それならば有効な活用を模索しようと試行錯誤をしながらせっせと通っている。 ネコは隣の生け垣からジッとこちらを見つめて、適当に放り投げてある板の上でガリガリと爪を磨いでどこかに行ってしまった。 愛想のないネコだ。  それから数回、同じように見つめられてはどこかに去っていくという淡泊な時間が過ぎていき、あっという間にど

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        琉球古典芸能コンクール2021・付き添い編

          三線職人、銘苅春政さんの話

          握手をしたその人の手は柔らかくしなやかで、たゆまぬ情熱に満ちていた。 沖縄古典音楽の歌三線を始めて6年が経ち、歌う楽しさ、楽器を触る楽しみを知った。 歌って弾ける曲が増える一方で、少しサボるとあっという間に下手になる。先週まで出来ていた事が2、3日サボっただけで今週は全くうまくいかない。 この先、何があるわけではないのに焦る。 焦って、焦って練習してまた出来るようになるとホッとして落ち着く。その行ったり来たりを繰り返をしていると、これは果たして上達するのかと疑心暗鬼に陥る。

          三線職人、銘苅春政さんの話

          沖縄おすすめマイナースポット

          「すみません、ドラゴン見ませんでしたか?」 「見てないね。」 旅行先での悲劇がユーモアに変わった瞬間だった。 夫は、あまのじゃくな性分で旅行ひとつにしても観光客のいない場所をひたすら好む。 目的地の駐車場に、先客のレンタカーが停まっていなければいないほどワクワクが止まらないと言う。 その思考は沖縄旅行も例外ではない。 観光客ならド定番のコースに彼は真っ向から反対する。 しかし、国際通りはわりと好みだ。 それでもやはり、国際通りの細い横道をひたすら突き進み濃密な沖縄の雰囲

          沖縄おすすめマイナースポット

          大人になって歩く通学路

          私は気づいた時には徒歩が嫌いな子どもで、特に徒歩通学は修行だった。 遅刻確定の日は、それはそれは孫に甘い祖父が車を出してくれたので、あっと会う間に味をしめた私は毎日遅刻確定時刻を狙って起きるような子どもだった。 大人になって突如歩く楽しみを理解すると帰省中に元通学路を散歩する事が増えた。 なぜ通学路かと言うと歩く事が嫌いだったので、今さら地元のどこを散歩すればいいか分からないのだ。 仕方なく馴染みの通学路でも歩いてみるかという安直な選択である。 ただ、その通学路散歩がクセに

          大人になって歩く通学路

          沖縄ぜんざいの冒険

          沖縄のぜんざいは一見シロップなしのかき氷だ。しかし、氷と器の境い目をスプーンでかき分けると、ふっくら炊き上げた甘い金時豆が汁ごと何粒も顔を出す。 思いがけない白玉だんごも覗いてくる。 南の島らしく、汗をかいたこめかみを程よく冷やして、しばし暑さを忘れるには右に出るものはない。 ギーギーと聞き慣れないセミの声とムワッと容赦ない南風を感じたあとに食べる沖縄ぜんざいは「あぁ、また沖縄に来ることが出来た。良かった。」という幸福感を味覚で感じることができる。 沖縄を代表するグルメは数多

          沖縄ぜんざいの冒険

          私の友達

          引っ越しをすることになり十数年働いた老人ホームを退職する。毎日のように顔を合わせていた約50人の愛するおばあちゃんたちと会わない生活を目の前に実感がなく、気持ちは湿って小さなため息が多くなった。 ハコちゃんと愛称で呼ばれる95歳のおばあちゃんは私の推しである。 私がオギャァと生まれた時にハコちゃんはすでに40半ばだった。 ハコちゃんはなんて長生きなんだろう。 おかっぱ頭のハコちゃんは元美容師だ。 目もとがどことなく自分に似ているようで、親近感を感じる。彼女は逸脱した物覚え

          東京でお酒を飲むならば

          いつものように本屋に入り浸っている時の出来事である。 レジ店員と客の会話はふきだす笑いをマスクで必死に押さえたほどであった。 会話の一部始終は私の想像力を一気にかき立て、今宵の酒のつまみが決まった。 この本屋はショッピングモールの一画にある。都心から電車で30分の便利さをアピールし、東京のベットタウンをまっしぐらに進む街の象徴と言える。事実、近年は爆発的に人口が増え、真新しい駅前には総合病院や金融機関が立ち並び、ナビゲーションでは追い付かないほどに生活道路が整備された。 衣

          東京でお酒を飲むならば

          白浜小学校前の浜

          西表島に行くと必ず行く場所はたくさんあって、その中のひとつが白浜小学校前の浜である。 小学校の目の前に世界遺産の海が広がる場所だ。 干潮になるとマングローブは足を伸ばして悩ましい足が我先にと海から現れ、湿り気を残すクリーム色の砂はあっという間に太陽の光に照らされて生成りへと変化し、サラサラと音を立てて風に乗って風下へと転がりマングローブの足にたどり着く。 泳ぎの苦手なミナミトビハゼは水を求めて小さな潮溜まりに一目散で飛び込む。1匹、2匹の話ではない。あっちもこっちも跳び跳ねて

          白浜小学校前の浜

          白石うーめんは愛だ

          そーめんと何が違うの? 白石うーめんの悲しい運命とも言える質問が今日も白石市の青い空を駆け巡っているかも知れないと思うと、私もかつてはうーめんに同じ事を抱き、無下にしていたことを悔いている。 うーめん、ごめんね。 うーめんは温麺と書いてうーめんと読む。 宮城県白石市の名物と言えば言わずもなが、白石温麺だ。 見た目は短いそーめんに見えるが、その違いは製造過程で油を使う有無である。一般的にそーめんは油を使い作るのに対して温麺は油不使用だ。 白石市にはたくさんの温麺会社がある。

          白石うーめんは愛だ

          ハムマリネ100g

          私は実家の食卓にハムマリネが並ぶとクスッと笑ってしまう。 「この惣菜屋のハムマリネって美味しいよね。」と妹が口いっぱいにハムマリネを詰め込みながらも、さらにハムマリネの皿に箸を延ばすので、私もあわてて飛びついた。 薄く扇形にスライスされたハムはオーソドックスなハムとサラミ風のピンクと白のまだら模様のハムである。3、4枚重ねて切ったハムは切られたままのカタマリの部分と撹拌されてほどけた部分がちょうど半分ほどだ。玉ねぎの千切りは羽衣の薄さと、くし切りの厚さのものが混在し食感の変

          ハムマリネ100g

          考えるこけし

          「えっーと、それはぁ…。だから…。」 瞳を斜め上を見ながら考え事をしている女の子に出会った。 ここは宮城県仙台市青葉区上下にある西方寺、通称定義さんの参道の店の中である。 漬け物や乾物が並ぶみやげ物屋の店の奥にこけしがズラリと並べられ、不思議とみんなちょっとだけ瞳が斜め上を向いている。 明らかに考えていた。 見ようによっては考えているようにも見えるし、何かをごまかしている様子にも見える。 知ったかぶりなことがバレてバツの悪い小学生の女の子にも見える。 みんながみんな斜め上に視

          考えるこけし

          めんこいこけしの今どき事情・その②

          そうやって、ボンヤリとこけしの未来を考えていたところ、ポツンとひとり、目元がゆったりとした印象の町娘風のこけしと目が合った。 他のこけしとは一線をひく古風がある。それは実家にあるこけしで見かけた胴体が輪っか模様を連想させるからかもしれない。 手のひらにおさまるほどの大きさの、その子にジッと見つめられて目が離せなかった。 今どきのかわいいがあるが伝統も感じる不思議なこけしだった。 「あなたも少しは考えなさいよ。」 その子が問いかけてきた、気がした。 こけしを通して伝統が生き

          めんこいこけしの今どき事情・その②

          めんこいこけしの今どき事情・その①

          こけしの思い出と言えば、子供会の行事でこけしの絵付け体験くらいのもので、家には茶色に日焼けした古めかしい、いつからあるのか分からない大小のこけし達がカラーボックスに上下関係なく、すし詰めに押し込められるように収納されていた。その姿に時々ホラーを感じる程だった。 言い換えれば、私の生まれ育った環境はこけしが溢れていたと言える。 何を思い立ったか、たまにこけしを引っ張り出してまじまじと見ると、ミミズが這ったような細い目元にチョンと付いたおちょぼ口のおかっぱ頭はハッキリ言ってブサ

          めんこいこけしの今どき事情・その①