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おかんとコーヒーと私と夫。 後編

https://note.com/nikobye_ikedon/n/ndd8bba8590a4


「今、一番、罪悪感があることはなんですか?」


マイ・コーチイロさん(@irohakataru)
からこの問いかけを経て出た答えは

母親に自分の休職・退職を伝えていなかったことだった。


そんなこと?
私の中のジョンカビラが振り返って、親指を立てて大きく言う
「そんな!ことなんです!」 言ってすぐに消えた。
バイバイジョンカビラ。


・小さいこどもが2人いるのに、看護師を辞めたことじゃなくて?

・貯金をすっからけっちんにしたことじゃなくて?

・退職日を決めた職場に、やっぱり有休消化をお願いしたことじゃなくて?


私の場合、それよりも、おかんだった。


毒と愛のある私の母。
55歳まで母も、また看護師だった。

息を吐くようにマウントを取ることが売りの
 スーパーマウンテンゴリラの母。

我が家でご飯を作ってくれた時、我が家の包丁が切れなかったので
 爆速で料理をしながら5分くらい文句が言える母。

ビールと郷ひろみと嵐が好きな母。

GOサインを出したらすぐにでも娘のために学校に乗り込もうとした母。

笑う時間が長く、周囲を誘い笑いに引き込む母。

頼られることが好きで、しこたま周りの期待に応える母。

孫が大好きで、孫のためにでっかいカッチカチのエビフライを作れる母。

太ったせいでお気に入りの靴が入らないと怒ってる母。
(足の甲や足底に肉がつくのか?)


そんな母に、
適応障害になって休職し、
退職して看護師を辞めることが言えない


これが私の今一番罪悪感の大きいことだ。


マイコーチに問いかけてもらうことがなかったら
きっと気付かなかった。

あと、マイコーチが開催した講座にいた
素敵な参加者達の顔も浮かんだ。

人生の楽しさを増やしたいみんな達。

その人たちがいなかったら
その人たちの話しを聴いていなかったら

私はおかんに対する罪悪感を
こんもり抱えていたことに気付くことはなかった。

こんもり罪悪感を持ってる相手に会いに行く
ことを決めたのだ。


でも、退職を伝えることだけで実家に行くのは嫌だ。

何か、何かないのか。


緩衝材。
おかんにぶつかっても、私が傷つかないような
ふわふわの大きなスポンジを私にくれ。




最近コーヒー豆を買ったことを思い出した。


タンザニア産、中深煎りの挽きたてのツヤツヤな豆たち。



私はコーヒーをよく飲む。
いつもはドリップ用に挽いてある豆を大容量でネット注文している。
2kgで2000円の豆。破格である。
それなのにいつも美味しい。

私の舌がバカでそのコーヒーに慣れないのか、
コーヒーを飲む度に味が変わってるように感じる。
美味しさが毎回新鮮だからありがたい。


手元にあるタンザニアの豆を
コーヒーで飲むには
挽かないといけない。


キッチンに仕舞ってあった
手でコリコリするハンドミルがなくなった
蓋だけ出てきた。
蓋だけで、豆をどうこうすることはできないのである。





実家にはお高いミル付きのコーヒーメーカーがある


コーヒー好きの両親が挽きたての美味しいコーヒーが飲めるように
夫と割り勘でプレゼントした物だ。


調べることが上手な夫が
コーヒーを淹れる母のために
情報収集して選んだ60歳の誕生日プレゼントだ。

日頃世話になってるので、ダーン!と
4万円もするやつを買った。
高い。
高いが、母は高くていいものが好きだ。
単純で金がかかる。おかん、そういうところやぞ。

というわけで
良きコーヒーメーカーのミル機能で、この豆を粉にしようと思った。


家のミルがどこかに行ったので仕方なしに!
つやつやなタンザニアの豆を口実に!
実家に行ってやってもいいか!
なんならちょっと豆を分けてもいいし!
コーヒー好きなおかんならいけるやろ!

ビビり倒しながら保険をたくさんかけて
コーヒー豆を挽きに行くことを口実に
実家に出陣した。

刺されるかもしれない。


あのおかんなら、あり得なくはない。
激情型の一面を持っている。
一面というよりかは、5割は激情してる。

だいたい怒ってるか疲れてるか、ツムツムかポコポコしてる。



刺されるかもしれない相手に会いに行く。
つまり、戦をしに行くわけである。

戦と言えば馬に乗った将軍。
白い馬に乗った暴れん坊将軍。
暴れん坊将軍のテーマ曲が
頭の中で流れるかもと思ったが、無音である。

車で実家に向かった。
我が推しBTSの「Not Yet」が実際のBGMだった。
1人じゃない。
我が推しのジミンちゃんがいる。BTSがいる。

この前話した参加者たちの顔も浮かんだ。
したいことに向けて一歩を踏み出そうとしているメンバーだ。

既に行動を起こした人もいる。
聖なる家電を買うという行動を起こした方を思い浮かべた。

よし、いける。

思い出せてよかった。
きっかけはBTS。
BTSは世界を救う。
本当に推しの力は凄い。



実家につき、ミッションスタートだ。

実家のコーヒーメーカのミル機能を初めて使う。
母が捨てていなかった説明書に感謝し、
自動でガリガリを始めた。

100g程を2回にわけてガリガリする。

この量で、手動のガリガリはあかんとすぐわかった。
家の手動のガリガリは2杯分を粉化するのに15分かかる。

タンザニア産のコーヒーを飲むために実家に来て正解だった。


おかんは外に出て洗濯物を干している。


挽かれた粉がコーヒーフィルターに落ちていって
砂の山のように積みあがってくる。

コーヒーの香りは以外に強くならず、ふわわ~んくらい。

先日訪れた素敵なコーヒーショップの店主が、
泡盛に漬けるように選んでくれた豆の
半分が中挽きの粉になった。

半分の豆は、そのまま実家用にあげた。

家のコーヒーメーカーで
挽きたて淹れたてが飲めるっていいよな。な。



見繕ってくれた店主よ、ごめん。
今回は泡盛コーヒーに使えなかった。

でも、選んでくれた豆のおかげて勇気をもって
母と話せる機会をもてた。

もし購入時にこれをドリップ用に挽いてもらってたら、
母と娘の確執的な何かは動かなかったかもしれない。
ありがとう。


さて、4年越しの泡盛コーヒーはまた延期である。
夫もごめん。
夫にごめんね~って言ったら
「忘れてた。」って。
あんだけ、泡盛にコーヒー豆を漬けたがってたのに。
さすが最愛の夫だ。
そういうところも好きだ。


挽いてサラサラになった豆を、豆が入っていた保存袋に移す。
実家のシンクに少しこぼす。

私は何かを移すとき、よくこぼしていた。
こどもの頃は、だいたいこぼしていた。

繰り返したくないのでよくする洗剤の詰め替えの時だけは気を付けた。
丁寧にゆっくりした。
知らんうちに、こぼさなくなったな。

こうなったら、あんだけこぼしていた私も
えらいもんで
液体に勝ちつつあるなと思ってた。

しかし、粉は担当外だ。負けた。
おとなしく粉を集める。


挽き終わって
コーヒーを一杯分、ハンドドリップで淹れた。

ハンドドリップなんていう技術は、私にはない。

どこかの動画で見た方法をうろ覚えでお湯を注ぐ。
神妙な面持ちで。お茶をたてる千利休のように。

このコーヒーが、美味しかったら
きっとこの戦もうまくいくと信じて。
願いをこめて。

これから、娘の仕事を辞める話を聞くおかんに
渾身の一杯ができあがった。

ぺっと味見したらめちゃくちゃ濃い。
さすが挽きたてのタンザニア産だ。素人には手ごわい。

お湯を足す。
アメリカ―ノのようにエスプレッソに湯ではない。
ドリップコーヒーに湯。

いいじゃないか、いいじゃないか。
もう味見はしない。こんなもんでええやろ、ええのだ。


いざ出陣。

テレビを見てソファに座ってる母
テーブルにコーヒーを置いて
「どうぞ。濃いかもしれんわ。」

母:「そんなことない。美味しいで。」

整った。
よし、言おう。


「お母さん、ずっと言ってなかったけど
  私適応障害になって~ん。」

母:「賢い人がなるやつやん。」である。
速攻で思ってもいない答えが帰ってきた。

母:「カシコ(賢い人の関西弁)の○○ちゃんの旦那さんが適応障害で、仕事辞めて、今度公務員の試験を受けるって。」

「へえ、あそこ、こども産まれたばっかりやのに大変やな。試験いつなん?」

母:「7月に受けたらしいわ。」

「へ~すごいな、」

母:「適応障害って、カシコがなるやつやで。」

あかん。この適応障害=カシコループを止めなければ。

「それやったら、私はカシコやな。ありがとう。」
引くなおかん。
おかんの言うたカシコループに
乗りにいった娘に引かんといて~。

「その適応障害の診断をもろて
 心療内科の先生に働いたらあかんね、休もうってなって休職してん。」

母:「働けへんってことは、もうそういうことやん。」

話しが早い。

ああ、親子だなって感じがした。
この人に育てられたからそらそうだ。

「そうそうそう、もう退職を決めた。」

母:「職場に言ったん?」
「もう言った。」

母:「決めたんやったらしゃーないな。」

おやおやおや。
話しが早いどころか、引き止められない…?

看護師として大プライドを持って働いてきた母が?
こどもが将来困らないように、
収入が安定した国家資格をとるように
レールを敷いた母が?
望み通り、私も看護師になり、姉も看護師になった。

チームで働くことが苦手な私が看護師になって
職場でもまれるのを、実は心配していた母が?


母:「夫くんは、ええって言ったんやろ。」
「言った。」

母:「金銭的援助はできんぞ。」
「もちろん。」

母:「保健師で働いたらいいやん。人の話聞けるやん。」

大学に編入をしてわざわざゲットした保健師の資格。
しかし未経験である。

ごめんなさい。正直に言います。
看護師があかんかった時用に保健師をキープをしていた。

看護師が今お付き合いしている本命で、
保健師は私にとってはキープ君なのだ。


キープしといて、今の自分は2人とも嫌になってしまった。

今は、こんな気持ちじゃ保健師君とは付き合えないのだ。


「保健師は考えてない。」

母:「1年はしっかり休んだ方がいいわ。そのうちなんかあるやろ。」

「1年。休んだ方がいいって言ってくれてあ、あ、あ、ありがとう。」

「1年たっても、保健師はないと思う。看護師はもっとないかな。離れたい。」

母:「看護師はもうあかんもんな。あんたは戻れへんわ。やめとけ。」

「おかあさんに話せてよかった。聴いてくれてありがとう。」

母:「ほん。(うん。と、おん。の間のほん。母は多用する。)」


そんな感じで母との30分の会話が終わった。
いつかの本で見た、長いようで短いような
逆も然りの、そんな時間の経ちかただった。

時間に対して、そうやって感じたことって実は少ない。


私はソファからお尻をはがして、帰り支度をした。

おかんが
テレビのチャンネルを持ち、
録画の【突然ですが占ってもいいですか】を再生しだした。

おもろいよな、その番組。
おかんも見てたのか。いや~おやこ~。

言いたくなかった、けどやっぱり似るんだな。




うそーーーーんと思うほど
波風がたたない会話だった。

たぶん、おかんが波風をたてないことを選択した感じだ。
しらんけど。そんな感じだ。

あの人は、
知ってるしわかってるけど
娘の為に言わないことも多い。

言ってみてよかった。


「今は波風がたたなかったが、相手はおかんだ。
 今後はどうなるかわからんぞ。」
と思うことにSTOPをかけた。

【ごちになります】のご飯を食べた後に掲げるSTOPと書いた手の形のアレ

私が私にSTOP札を出した。すっと。優しく。

母への報告後は
マイ・コーチのコーチングが入っていた。

母へ退職の報告うまくいったらその後のコーチングで成果として報告できる
報告がうまくいかなかったら、コーチングで落ち込む時間を最小限にできる

計画的犯行である。

ビビり倒して
コーヒー豆をきっかけに、と考えていたら
今日はコーチングの日だ!
と気付いた。実は順番が逆だったとしてもいいじゃないか。


日和ってるから、コーヒー豆とコーチングに頼った。

頼るのが苦手だった私が、物にも人にも頼れてる。
天才か。天才だ。
スポットライトを浴びた。
[2023年下半期~できなかったことができた私選手権~]
で審査員特別賞をもらった。

頼り方はちょっとあれかもしれないが
頼れるようになってきてよかった。

マイ・コーチにすぐさま報告した
コーチングのいい使い方ができているんだと思う。

できないと思ってた母への報告ができた結果
想像よりもいいところにいた。


後日、薄めに入れてもちょっと濃いタンザニア産のコーヒーを飲み

謎の昼ラーメン、夜焼き鳥屋さんの
正体をちょっと考えてはやっぱりその店に行きたくなり



前向きに退職に向けて動き出す。

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