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【読書記録】さかなクンの一魚一会

おすすめ度 ★★★☆☆

中1息子はオタク気質である。
物心ついた頃から、何かにハマるとそれに脳内を支配される傾向にある。

例えば、ウルトラマン図鑑は暗記するほど読んで、第何話に何が出たか、身長、体重、飛行速度、をクイズにしてくる。
新幹線などの乗り物系も、収容人数、就航年、全長、ノーズの長さまで全部暗記してクイズにしてくる。
今は野球ブームで、プロ野球選手の名鑑を読み込んで、誰が何年にゴールデングラブ賞をとったか、球速や変化球の割合をクイズにしてくる。

何かにハマるとそれしか見えなくなる。
脳のキャパシティがそれで埋められる。
ゆえに、勉強その他がおそろかになる。

すごいと思いつつも、親として非常にヤキモキするのだが、はたから見ると「そんなにハマれるってすごい!」「すごい集中力だよ」「ほら、さかなクンとかもそういう子だったっていうじゃん」と励まされる。

そう、オタクの星、さかなクンである。

好きなことを突き詰めて、親もそれを肯定したという逸話は聞いていた。
それが美談になるのもわかる。

しかし、実際にその態度を取るのがいかに難しいか、想像していただきたい。

私の母も、さかなクンの美談を「素敵ねぇ」と話した直後に、「ちゃんと何々をさせないと子供に舐められる」だの、「時には厳しいことも言うのが親」だの、「私は心を鬼にして躾けた」だの言ってくる。
自分で矛盾に気づかないのかと思うが、多分私も第三者なら気づかないだろうな。オタクの子を持たない親なら。

一体、さかなクンの親はなんなのか。
超人なのか、超変人なのか、メンタル最強なのか。
オタクの子を持つ親として、共感できるところはあるのだろうかと思い、さかなクンの自伝を読むことにした。

長い前置きになって申し訳ないが、結論は早い。

さかなクンのオカンは、超人で、超変人で、メンタル最強だった。

さかなクンの半生は、予想通りぶっ飛んでいた。
度合いで言うと、息子の100倍くらいすごかった。
そしてお母さんもすごかった。

自伝なので、親御さんの視点はないのだけど、ちょいちょい出てくる「息子全肯定」姿勢が全く崩れない。
よく聞く美談は、小学校の先生に「勉強もさせてください」と言われた時に笑顔で突っぱねる話だと思うのだけど

小学校ならいい。まだわかる。
それが中学、高校ときて、大学に落ちて、アルバイト生活してても、その全肯定を続けられるだろうか?
さかなクンの場合、いろんな幸運も重なってああいう夢を掴めたけれど、そうじゃなかったら?と思ってしまう。

実際に、親族や周りの人には相当言われてたらしい。
25歳にもなって、魚の絵を描き続けて、アルバイトで生活して。
甘やかすな、将来どうするつもりだ、時には厳しいことも言わないと、いつまでやりたいことだけさせてどうする…

ドラマや物語では、悪人として描かれるであろう彼らの心情が、わかってしまう。だって、それがさかなクンじゃなくて、自分の孫だったら、私も多分口出ししちゃう。

そして、そう言われた時にブレないオカンが強すぎて、もうちょっと意味がわからない。全く共感できない。

うちの子はこれでいいんです!
と言えるほど、私は自分の子育てに自信がない。

息子が野球の試合ばっかり見てると不安になるし、素振りもいいけど学校のプリントまず出せヤァ!!ってなる。
子供を信頼して、尊重して…と思っていても、日常のイライラに心は容易に流される。

正直!正直なところどうなんですかね、さかなクンのお母さん。
本当に迷うことなかったんでしょうか?
悩むことなかったんでしょうか?
悩んだり迷ったりしてたけど、息子の前では全肯定してたんでしょうか?
だとしたら超絶かっこいい。超人だ。

そのへん美談じゃないリアルな話が知りたいけど、ネットにはなかなか見つからない。
オタクの子を持たない親に「素敵ね」と言われるような理想的ストーリーしか見当たらない。
それ、超人の話ですよ。
誰か、共感できるレベルのオタクの親はいないものか。

映画が結構よさそうなので、見てみようかな。


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