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【読書記録】いま、翔び立つとき

おすすめ度 ★★★★☆

ビルゲイツの元妻であり、女性への国際支援を長年行ってきたメリンダ・ゲイツの著書。

国際共生や貧困問題、根底にあるジェンダーバイアスなど、私の好みにブッ刺さる内容だったし、具体的なエピソードが満載で学びが多かった。


アメリカならではの事情

前半は家族計画、つまり避妊の話だ。
途上国の女性にとって最も根本的で重要な支援なのだという。

・児童婚で10代から何人も子供を産まされて命を落とす少女たち
・収入がないから産んでもまともに育てられないなのに、避妊できない
・世界における10代の少女の死因1位は、妊娠

など、ショッキングな話が続く。

驚いたのは避妊や家族計画について、アメリカでも未だに反対派が多いということだ。なんとなく、アメリカは日本よりもジェンダー平等が進んでいるイメージがあった。
だけど、アメリカの場合絡んでくるのは宗教だ。カトリックは伝統的に避妊や中絶に反対している。
宗教的思想は、日本にいるとピンとこないけど、政治とも絡む根深い問題なのだと知る。

どの国も大変

アメリカだけでなく、海外の差別(今回は男女差別)について学んで感じるのは、どの国も道は全く平坦ではないということだ。

日本と同じように、うんざりするような批判や誹謗中傷があった。
ヒステリーだとか女は感情的すぎるとか。
むしろ女尊男卑だとか、逆差別だとか。

制度や法律、文化、価値観、いろんな障壁があって、変えていくことは簡単じゃない。闘ってきた女性(数少ないけど味方になる男性)も、超人的に強いわけじゃなく、葛藤して傷ついて、挫折している。

メリンダも、超優秀で超大金持ちだけど、葛藤や人間らしさを隠さない。
傷つきながらも活動している姿には心を動かされる。

日本は触れられていないけど

就学率や雇用率、経済成長の上昇。若年性出産率や家庭内暴力の発生率。どれをとっても、女性の社会参加と権利向上が健全な社会を実現させるとわかります。女性の権利が向上すれば、健全で豊かな社会になるのです。
男性支配の国が衰退する原因は、女性の能力を活用しないことだけではなく、輪から弾き出そうとする男性が中心にいることです。国のあり方が変わるか、トップ層が考えを改めるまで繁栄は訪れないでしょう。

日本は、就学率や若年性出産率は、世界の水準よりきっと高い。
メリンダさんもきっと日本を想定して書いてはいないだろう。だけど、太字の部分は日本のことだ、と思ってしまった。

価値観の押し付けと、支援の難しさ

私が支援する活動は、現地の他の人々の意向に反するものかもしれません。どの活動を支援するか、私は次々に選んでいく側です。それは西洋の教育を受けた裕福な部外者の「最善の方法は私が知っている」という驕りではないのでしょうか?ほとんど知らない社会に対し、権力を使って価値観を押し付けていることにならないでしょうか?

この葛藤を持ちながら、支援にあたる著者の姿勢を見習いたい。
信念を持って支援をしているからこそ「なぜわからないの?」と思ってしまいそう。それを驕りではないか?と立ち止まるのが素敵だ。

自分の信念と、相手を尊重する気持ちを共存させるのは難しいけれど、メリンダは真摯に向き合っている。

当事者の現状を知ること

フェミニズムや男女差別の話は、日本の視点で見ることが多い。自分も当事者で、同意しやすいからだ。

でも、一見進んでいそうな欧米でも、遅れていそうな途上国でも、根本的な課題は繋がっていたりするんだと最近思うようになった。
いい部分だけをみて、海外はいいな、羨ましいと言っていても仕方ない。

どの時代のどの場所でも、虐げられていた人たちは立ち上がって闘って権利を獲得してきた。
最近、どハマりしている朝ドラの「虎に翼」にも超リンクする。

自分は、、と考えるとまだ立ち止まってしまう。
なんで私が頑張らないかんねん、誰かやってくれよ、という学級委員決める時みたいな気持ちになってしまう。あかんな。

私ができることはなんだろう?


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