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[ サプライズケーキ ]:毎週ショートショートnote(ルールを知らないオーナメント)

↑↑コチラの表のお題【ルールを知らないオーナメント】に参加してみました。
お題に合っているかと言われたら、合ってはいませんが、とりあえず、関係者たちが、なにか感じてくれたらいいなぁ、との思いで書きました。

※この物語はフィクションです😊♪


画像:T.H/illustAC


[ サプライズケーキ ]

 今日はクリスマス。
 大人にとっても一大イベントだけど、3歳のウチの息子にとっては、物心ついて初めてのクリスマスだ。
 しかも今回は、クリスマスケーキのサプライズがある。

「じいじとばあばが、送ってくれたケーキだよ〜」

 妻がテーブルにケーキの箱を置くと、息子は目を輝かせて、

「ケーキ! じいじ、ばあば、スゴイね」

 と、興奮気している。
 
 冷凍で送られてきたが、そのまま冷蔵庫に入れて解凍してある。
 とはいえ、ちゃんと食べられるか、一部、凍って硬くないか、少し心配だ。
 じいじ、ばあばが用意してくれたせっかくのサプライズケーキだ。
 息子には、いい思い出になるようにしたい。

「じゃぁ、開けてみるよ」

 妻が箱を開ける。
 目を輝かせて見守る息子。
 スマホで動画を撮る俺。

 妻が箱を開けて、ケーキの乗っている白いプラスチックの皿を引っ張り出す。

「えっ、」

 と、言葉を失う妻。
 俺もスマホ画面から、ケーキに直接目を向ける。

「なんだこりゃ〜」

 と呟くしかなかった。
 じいじとばあばが、息子のために送ってくれたサプライズケーキが、ものの見事に崩れている。
 例えるなら、棒を刺した砂山を崩す遊びの最後のような状態だ。
 皿に落ちてるオーナメントが、どこについていたのかも、どんなデコレーションだったのかも想像できやしない。

 肩を落とす妻を見てから、俺は、息子を見た。
 目を丸して、ケーキを見つめている。

 確か、有名デパートのケーキだったはずだが……。
 それとも配送業者か……。

 言葉を失った妻と俺。
 最初に言葉を発したのは、息子だった。

「サンタさん、食べていい?」

 息子が指差す先には、サンタのオーナメントがあった。
 奇跡的に皿の上に鎮座して、息子の方を見ている。

「食べてもいいけど、少しだけね」

 と、妻。
 怪しさ満点のケーキだけど、まぁ、オーナメントをひとかじりくらいなら大丈夫だろう。

 パクっ、と食べる息子。
 もぐもぐ、と口を動かしてから一言。

「おいし〜ぃ♪」

 と、満面の笑顔に慌ててスマホを向ける俺。

「じいじ、ばあば、おいしいケーキ、ありがとうね」

 なんでケーキがこんな状態になっているのか、訳が分かんないけど、この息子の表情を動画に収められただけで、俺はもう、満足だ。

 笑顔でサンタをかじる息子の頭を撫でる妻。
 
 じいじとばあばが送ってくれたケーキは、心苦しいけど、品質に不安があるので処分するしかない。
 でも、動画で息子の表情を見れば喜ぶだろう。

 ケーキの惨状を見た時はどうしようかと思ったが、息子のおかげで、思い出深いクリスマスになった。

 まぁ、とりあえず、よかった。


おしまい。

#毎週ショートショートnote


↓以前、パフェを題材に書いたコチラもどうぞ↓


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