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風光る空の下

両親が70歳になった時、まだまだ元気でそれなりに毎日を楽しんでいました。時々「あれ!」と思うことを言ったり、行動がおかしかったりはありましたが、それも自然の成り行き。二人にこの先の事考えているのかなあ?なんて聞いたこともありませんでした。

車で20分ぐらいのところに住んでいたのでたまに覗きに行きました。
行くとお昼時「ちょうどいい時に来た!」と私に女子高生が食べるぐらいの
量をホイホイと食卓に並べてくれます。
もういいおばちゃんなのに親にとってはいつまでも子供なんでしょう。
「おいしい、おいしい!」と食べることも親孝行と頑張って食べたのを思い出しました。

大正生まれは物のなかった時代も経ていますから、家族にお腹いっぱい食べさせることが大好き!二人の満足そうな顔が忘れられません。

孫にも同じように振る舞っていました。彼らも祖父、祖母孝行と平らげて、傍から見ていても微笑ましい光景でした。
ある時から母がしきりと「通帳はあの引き出し、印鑑はココだからね。」とか「葬儀は焼くだけ⁈の簡単なのにしてね!」とあまり楽しくない内容の事ばかり言うようになりました。そんな縁起の悪いこと!と生半可な返事でやり過ごしていましたが、今から思うと印鑑の場所云々よりも母が話すときの気持ちをもっと汲んであげたらよかったと思う年齢になりました。

元気であっても明日何が起こるかわからないという覚悟。ノー天気に見えるシニアも心の片隅に最後の事がもう根付いています。それを憂いても仕方がないことなので、その日その時間を楽しんでいるだけ…。みんな一抹の不安や寂しさは抱えていると思います。

そんなセンチメンタルなこと、この人も考えているんだろうか?と思うほど明るいシニアはたくさんいますが、朝の散歩、「おはようございます。」「今日はなんか暖かいですね!」と軽く会話を交わすだけでも元気が出るようです。人とおしゃべりすることは心のビタミンです。

ご自身も腰が痛くて病院通いなのに、私が杖を突いていると自分の事のように心配してくださいます。
しばらく顔を見ないと会う人ごとに「○○さん見かけた?」と気にかけます。
みんな優しい!ニケも遠くから声が聞こえると嬉しそうに走っていきます。
毎日の事なのに何年振りかであったような双方の様子。之もまた元気になる一つかもしれません。

朝に笑顔に会えるとこちら迄嬉しくなる今日この頃です。山も海も
街も風薫る五月に向かって景色を変えています。

両親が好きだった藤棚の紫の房は数を増して何ともかわいくて見上げる二人が浮かびました。

大きくなったメダカはしきりはあるものの先輩メダカの仲間入り!先住者の方が興味津々で網籠に群れて中の様子を覗いているみたいに寄ってきています。

その籠が外れるのはもう少し!この季節を堪能したいものです。

今日もいい日にしましょう!


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