「カノンの子守唄」第一話
はじまり
まだ幼木ばかりが目立つ林にも満たないその場所で、一体のロボットが調査をしていた。
四角い頭に円柱形の体、顔には白く光るボタンのような目と、取ってつけたような鼻に、横一文字に大きく開かれた音声の出る口。体部分はおなかの辺りに取っ手がついており、ふたになっているのだろうか?
連結部は金属のホースのようになっている。蛇腹の腕にCの字の両手。足は三カ所の関節を持つ棒のようなアームに、下駄のような四角い足が取りつけられていた。
そのロボットの背中には、頭の大きさほどのねじこみ式の蝶型ぜんまい回しがあり、ゆっくりと右回転を続けている。
ロボットはその場で頭の部分をクルクルと回したり、その場にしゃがみこんではそこに生える草や土などを採取していた。おなかにつけられている取っ手を開くと、中にあった機械に、先ほど採取した草や土をほうりこんでふたを閉める。
見渡すかぎり建造物のない荒れ果てた大地の中、わずかに息づきはじめていた植物と、目に見えないほどの小さい有機物に囲まれた一体のロボットが、そこで延々と地質調査とサンプル採取・解析をくり返していた。
記録は随時送信しているものの、そろそろ自分の時間が残り少なくなっているのをロボットはわかっていた。
「大気中ニハ酸素アリ。窒素濃度問題ナシ。微生物確認。放射能汚染レベルクリア。以上、ノア出発後、延ベ二六五四時間二八分一五秒ノ調査ノ結果、コノ星ノ環境ハ、地球ノ環境ニ酷似シテイマス。型式CWDTT#12報告終了。送信……」
ひとりごとのようにブツブツとつぶやき終え、ロボットは上空を見あげた。
「回収願イマス、システムキノ…ウ…テイ、シ……」
上空には、どこまでも真っ青な空が続いている。やがて、彼の背中でゆっくりと回っていたネジが動かなくなると、白く光っていた目の光は消え、彼も動かなくなってしまった。
それから五〇〇年の月日が流れた……。
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