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「あかりの燈るハロー」第一話

《あらすじ》
 六年生になるあかねは、五歳で母を亡くし吃音となった。思い出の早口言葉を歌い今日もひとり図書室へ向かう。特別な目で見られ、友達なんていない――吃音を母への愛の証と捉える茜は治療にも前向きになれないでいた。
 ある日『ハローワールド』という件名のメールがパソコンに届く。差出人は朱里あかり。件名は謎のままだが二人はすぐに仲良くなった。話すことへの抵抗、思いを伝える怖さ――友だちとの付き合い方に悩みながらも、「もしあたしが朱里だったら」と、少しずつ自分を見つめなおし、朱里に対する信頼を深めていく。
 そんななか、茜は父の部屋で一冊の絵本を見つける。

「あかりの燈るハロー」

プロローグ

 ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギ。
 ゴウン…ガロン…ギ…ギギ…ギィィ……。

 やがて、観覧車は完全にその動きをとめ、遊園地にともされたはなやかな電飾も消えると、あたりを静けさが包みこんでいく。

 耳をすませば、かすかに聞こえる波の音だけ。
 あたしは歌う。

 ♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャック・イファウッドチャック・クッドチャックウッド?
 ♪ ハウマッチウッド・ウッドアチャック・イファウッドチャック・クッドチャックウッド?

 お母さん……。

 もしあたしのことを見ているなら、あたしの声をきいているなら、どうかあたしの気持ちに答えて……。


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