見出し画像

【第525回】AIとChat GPT 〜政治はどう動く?権利保護か技術革新か?〜 (2023/02/22)【#山田太郎のさんちゃんねる】文字起こし風要約

文字起こし元の動画

出演者:

  • 山田 太郎 参議院議員・全国比例 公式サイト Twitter

  • 小山 紘一 山田太郎さんの政策担当秘書・弁護士 Twitter

  • 萌生めぐみ めぐみ アシスタント・イラストレーター Twitter

本日のアジェンダ

山田さん:
 今日はChatGTPとは何なのか、いろいろ触って動かしてみながら、評価していこうと思います。AIの著作権の問題、私も知財の責任者の1人でもありますので、その辺りをしっかり皆さんにお伝えしていきたいと思います。

1.ChatGTPとは?

小山さん:
 端的に言えば、米国OpenAI社が開発したテキスト生成AIで、2022年11月30日に発表されています。上の画像の左側がChatGPTのロゴマークのようなもので、AIが扱う対象というのは大きく5つぐらいに分類されるんですけど、その中で言語を扱うのがChatGPTです。

 そしてAIの機能も大きく5つぐらいに分類されますが、ChatGPTは生成系・会話系、この2つの機能があるということです。

山田さん:
  CahtGTPはMicrosoftの反撃?最近GAFA+Mって言われちゃって、MicrosoftはGAFAMの一角から落ちてるのではないかという話もあったりするんですけれども、そのMicrosoft社がChatGPTという形で襲撃をかけてきたと。

 それで困ったのはGoogleです。いわゆる検索のあり方が一変してしまうかもしれないということで、Googleが今度はBardというものを出してきまして、その他にもSparrowとかいろいろあるんですけど、このMicrosoftに関連するChatGPTに負けじと戦いを挑んだのがBardというやつであります。

小山さん:
 ChatGPTをめぐる出来事ということで、まず2015年にOpenAIが設立、イーロン・マスクなどが10億ドルぐらい投資して作られました。

 その後2017年にGoogleがTransformerモデルというAIのモデルを論文で発表して、ChatGPTの最後の「T」はこのTransformerで、GPTの略はGenerative Pre-trained Transformaer(生成型事前学習トランスフォーマー)Transformerモデルを使っているAIです。(モデルは仕組み)

 その後2018年にOpenAIがGPTを発表、1年後にGPT2を発表、このGPT2の発表直後ぐらいに、すみませんちょっと時期がズレますが、Microsoftは2019年に10億ドルをOpenAIに投資して、2020年にOpenAIがGPT3を発表、そして2022年にOpenAIがChatGPTを発表というのが主な出来事です。

小山さん:
 元々GoogleがTransformerモデルを発表してるので、AIの中では結構Googlが先行していたはずなんですが、今はMicrosoft vs Googleの様相を呈してきてました。

 2022年12月21日にGoogleがコードレッド(深刻な脅威への警告)を発表したという報道がなされて、2023年1月23日にMicrosoftがOpenAIに追加で出資、継続的提携を行うということが発表され、同年2月6日にGoogleがBardというChatGPTに対抗する自社AIを発表、MicrosoftはAIを搭載したBingを発表という形で、AI覇権をかけて今しれつな争いをしているというのが現状かと思います。

山田さん:
 どういうことかというと、実はこのChatGPTはAmazonにとっても危機的な状態だということ。Microsoft社はこのOpenAIのChatGPTを使うにあたって、MicrosoftのクラウドサービスのAzureを原則として使っていきましょうというふうにした。

 そうするともしかしたらみんなAmazonのクラウドサービスのAWSを使わなくなっちゃうかもしれない、裏側ではAmazonのAWS対MicrosoftのAzureの戦いにもなっているということなんです。

 だからこの3社が覇権を争って戦っている強力な武器を、Microsoft社はOpenAIに対して投資をする形でChatGPTと完全に組んだ。そしてMicrosoftが検索エンジンとして持っているBingにAIを搭載して、これまで検索といえばGoogleだったんですけども、これも取っていこうといしている。

小山さん:
 なぜGoogleが危機感を持っているかというと、先ほど言ったようにChatGPTというのは言語を扱うAIですが、テキストの生成、そしてテキストを使った会話ができます。

 まず質問の回答が出来る、そして情報の検索、検索といえばGoogleというぐらい独占的な地位にありますが、もうGoogleを使わずにChatGPTで検索をするようになるのではないかという危機感が非常にあります。

 あとは文章の添削、間違っている文章を直してくれたり、歌詞も作ってくれたり、プログラミング言語のコードを生成してくれたり、テキストで出来ることは結構出来てしまう。

山田さん:
 今回すごいなと思ったのは、このコードの生成です、実際にプログラムを作っちゃう。こういうものが欲しいんだけど、このプログラミング言語で生成してねって書いたら出来ちゃう。

 もうそこまで来ていますので、このままいくとノンプログラミングでいろんなものが、いわゆる言葉でもって使えるというのかな、それで何が起こるかというと、要はプログラマーがいらなくなっちゃうかもしれないということ。

 今はそれは極端だという人も多いんですけれども、Microsoft創設者ビル・ゲイツも、ChatGPTに対して何が革新的だったのかということについて、いくつかの論点を述べています。

 AIの認識能力から読解能力へ。これまでAIというのは画像や音声認識が非常に優れていたんです、残念ながら文章とかは苦手だったんですが、今回は読み書きができる、これが非常に大きい。

 それともう1つ、歴史上初めて自然な言語でソフトウェアを動かせるようになりました。ソフトウェアというのは元々、僕が若かりし頃はマシン語からスタートして、それが高水準言語ということで、COBOLとかC++とかベーシックとかそういうふうになってくる。

 それがもうプログラムをすっ飛ばして、自然の言葉でもってこういうのを作ってっていうと、どんどん作っていってしまう、そうするといわゆるシステムだとかデジタルが、専門家だけじゃなくて一般の人たちにも開放されると言われています。

 話すだけでいろんな例を書いたりとか、創造の世界も変わってくる、それから書類仕事がなくなったり、かなりの仕事は変わってくるだろうということを言っています。

 後で実際に動かしてみますけれども、まだ今はこの程度っていう人もいると思いますし、プロの方々でかなり酷評している人もいますが、まだ半年足らずでここまで進化していますので、今後いろいろ期待できるんではないかと思います。

2.ChatGPTの衝撃

小山さん:
 こちらは2022年12月23日のGoogleの発表だと言われていますが、やはり検索エンジンに取って代わるものであるとGoogleの経営陣が非常に警戒しているということのようです。

山田さん:
 これは本当にGooglはかなり危機感が大きいんだなって、だってコードレッドっていうのは、会社が潰れちゃうかもしれないというくらいの警告をGoogle内部で出したということでありまして、相当な危機感があるということ。

山田さん:
 そしてなんとわずか2ヶ月でユーザー1億人。

小山さん:
 無料のAIでここまでできるのかと、ビル・ゲイツさんはもうインターネットの発明と同じくらい重要だと、これは私達の世界を変えるでしょうというコメントを出しているくらい、かなりいろんな人に驚きを与えました。

山田さん:
 ただ肯定的な意見と否定的な意見がありまして、この辺りも整理して見ていきたいんですけれども、肯定的な意見では非常に自然な会話で、回答のレベルが高くてどんどん学習している、最初はあれ?って思うのもあるけど、それ違うよって会話をするとちゃんとごめんなさいって返してくる。

 そして時には回答を拒む柔軟性もある、結構専門的なものを聞くと最後は専門家に聞いてくださいとか、必ずしもこの意見が正しいとは限りませんみたいな形で譲歩してくる。

小山さん:
 例えば自分の病気について教えてと聞くと、なんらかの回答はしつつも最後は医者に相談してくださいみたいな話でしたり、天気予報はできませんって言ってくる。

山田さん:
 ただ回答にひどい誤りが含まれる等の否定的な意見がありますけど、私自身のことを聞くとなんか、今は学習しちゃってだんだん良くなってきたんですけど、国民民主党所属って言われちゃったり、当選した年数が違ったりとかそういうこともあります。

 架空の論理をでっち上げるというのも、これがちょっと怖いのは、フェイクニュースを作っちゃう可能性がある。それから中学校の数学問題も解けないとありますが、高校の数学問題が解けたりもする。

 発想や描写力がまだまだ乏しいという意見もあれば、素晴らしいものを書いてきたという意見もあるので、私も一方的に褒めているわけじゃないですけど、表面的なだけで実は無能とか。

小山さん:
 これは山田事務所の意見ではなく、いろんな意見を参照しながらこんな辛辣な意見もありましたということです。(念のため)

山田さん:
 そして教育界・学界への影響ということで、先生に聞かずにChatGPTに質問しちゃったり、論文を書かせたり、レポートも書かせたりとか、これ結構大学生の間でも、書いてもらった論文が大学生が書くよりしっかりしてるなんて話もあるくらい。

山田さん:
 それから技術を活用した新サービスで、就職支援や主要8言語に対応した議事録作成、法律相談、顧客対応チャットボット、ヘルスケアチャットと、こんなことも出来る。

3.実演ChatGPT

小山さん:
 2日前に実際に質問してみました。こちらは山田さんが2022年3月24日に発売した『「表現の自由」の闘い方』はAmazonでこんな感じで出てますけども、ChatGPTに『「表現の自由」の闘い方』山田太郎(著)について教えてと聞きました。

小山さん:
 そしたら『「表現の自由」の闘い方』は、出版は2015年になりますと。これは何で2015年なのかさっぱりわかりませんけども、明確な誤りはここぐらいでした。

山田さん:
 そうなんだよね、結構無難に答えててちょっと驚きました。

次小山さん:
 こちらもう1つの方『「表現の自由」の守り方』についても聞きました。

小山さん:
 山田氏は、元々はジャーナリストとして活躍していましたが、現在は作家としても活動しているらしい?(笑)これもどこから出てきたのか全然わかんないんですけど、ただその後は明確に違うとは言えない無難な答えが出てきました。

山田さん:
 この文章が正しいかどうかは自分のことだから違うってわかるけど、人のこだと検証のしようがなかったりするから、そういうのはある意味で怖いというところはあると思っています。

小山さん:
 では同じ質問をもう1回してみます、さっきと一緒になるかどうか。

小山さん:
 2日前とは変わっていますが、まだ山田さんはジャーナリストと出てきますね。

山田さん:
 これはちょっと違うよって教えてあげた方がいいかなと思いますけど、他にも何か質問してみてください。

小山さん:
 では「参議院議員の山田太郎氏について教えて。」と、これでいきます。

山田さん:
 またジャーナリスト、「週刊金曜日」の記者なんだって、2016年に社会民主党公認で初当選、これはかなりひどいね…。

小山さん:
 えーと「説明が間違っています。」と。

山田さん:
 お、「おっしゃる通りで、先程の回答に誤りがありました。以下、訂正いたします。」だって…いや、山田太郎はジャーナリストとして活動したことはありません。

小山さん:
 「なお、先程の回答で述べた「2016年の参議院選挙で初当選を果たした」という情報は誤りでした。山田氏は、2019年の参議院選挙で初当選を果たしてています。」

山田さん:
 いや、2010年の選挙で、2012年に繰り上げ当選です、なかなか厳しいね…。

小山さん:
 訂正してみます。「山田太郎氏は2010年の参議院選挙で初出馬し、2012年に繰り上げ当選した人物です。この人物について教えて。」と。

小山さん:
 また社民党なんですね。

山田さん:
 比例区から立候補は合ってる、「当時は社会問題に取り組む市民団体「ひとり親の会」の代表」っていうのがよくわからない。「自身が代表を務める「NHKから国民を守る党」から出馬し、初当選を果たしました。」すごいね…。

 これだと使い物にならないってなっちゃうから、もうちょっとおお~ってなる質問なんかない?

めぐめぐ:
 じゃあ「今期のアニメで一番の人気のものを教えて。」で。

小山さん:
 「鬼滅の刃」「呪術廻戦」ってだいぶ古い、今期じゃない。

山田さん:
 指定した方がいいんじゃない?

めぐめぐ:
 じゃあ「2022年の人気だったアニメを教えて。」で。

小山さん:
 「2022年はまだ始まっておらず…」

山田さん:
 だめだこりゃ(笑)

小山さん:
 ただ優秀な回答も結構あるんで、じゃあ無難なところで「ChatGPTについて何ができるか教えて。」と

小山さん:
 「ChatGPTは、多様な分野に関する質問に答えることができます。以下は得意とすることの例です。」と。(以下は上の画像を確認して下さい)

山田さん:
 じゃあ「ChatGPTについてビル・ゲイツは何と言ってますか」とか。
(結果は下の画像でご確認下さい)

山田さん:
 というところで、いろいろな評価があると思いますが、僕は文章の作りがすごい自然で綺麗、英語ならともかく日本語でここまで出来るっていうのは正直、結構驚きだと思っています。

4.ChatGPTの課題

山田さん:
 まず悪用の恐れということで、マルウェアを生成したり、偽のメール文書を書かせたり、いろんな悪用への対応が困難じゃないか、フィッシングメールとかフェイクニュースの拡散、実際にさっきのは明らかにフェイクニュースですから。

小山さん:
 一応今のところChatGPTの中で悪用を防止する機能の強化はかなりされていまして、単純な聞き方だと「不正な依頼なので答えられません」と言うんですが、研究目的で使うから偽のメール文が必要なので書いてというと、出してくれちゃったり、結構迂回できちゃう方法がたくさん見つかっている。

山田さん:
 そして今回最も課題となる著作権法上の問題なんですが、まずその前に著作権の簡単な前提を少し整理しておきたいと思います。

 AIが作成したイラストは、こういうのを描いてと人が指示しただけでは、必ずしも著作権は発生しない。人が詳しく創作意図だとか、創作に対していろいろ細かく指示して、これを道具として使った場合には著作権が生じる可能性があるということなんです。

 簡単な言葉を使ってAIに描かせたものはAIの機能でもって作られたということで、人間が創造したものじゃないから、今は著作権法上保護される対象ではない、必ずしも。ちょっとこれはいろんなケースがあるので断言はできないんですけど、ほぼそういう定義がされています。

 細かく指示したり、1つずつAIの方でも直していったりすると、それは当然それが道具という形で、主体は人間が作ったということで、著作権が発生するということになります。

 逆に権利侵害の場合もちょっと整理しておきたい。まずAIであれなんであれ、作風を真似るということだけでは、権利侵害にはならないんです。特定の作者の作品だけを学習させて、(出力結果が)その作者の作品とかなり酷似しているということであれば、著作権侵害と認められる可能性がある。

 ただ機械学習データとして、いろんな著作物を使って何かを作るということ自身は実は認められてることなんです。まずここまで整理しておきたいと思います。

 今日の課題で皆さんが注目しているのは、クリエイターの方がやっぱり不安なんですよね。勝手に自分の物が使われちゃうんじゃないかと、自分の物と似て非なるものが出来るのはどうなんじゃ、そんなもの許しておいていいのかということだと思います。

 私も自民党の中で著作権に関する責任者の1人としてやらせてもらっていますが、日本の著作権というのは基本的に今はAIの利用に関しては、どちらかというと権利者よりもユーザー寄りといいますか、そもそもそういうことを想定していなかった。

 ということで比較的自由にAIを使える方に寄っているというのは間違いなくて、今後権利者の保護をどうしていくのか、著作権とAIの関係であったり、逆にAIが作り出したものに関する権利はどうなのかというのを、急いで検討しなければならない。

 これ難しいのは、技術の革新なのか、それとも権利者の保護なのかということが非常に問われる。かつて日本はWinny(ウィニー)事件が起こりました。Winnyは優れたP2Pシステムだったんですけど、これが著作権等を含めて権利侵害に当たるのではないかということで最高裁まで争われている。

 もしかしたら日本がその辺りの先端技術を担えたかもしれないのに、裁判等の争いによって結局萎縮して遅れてしまったんじゃないかということがありました。

 この権利保護とイノベーションや創作といった関係をどう考えればいいか、ちょっとそこをChatGPTの場合どうなのか。

小山さん:
 まずChatGPTの生成物、これが著作物として保護されるのか、小説の文章とかエッセイぐらい書けますし、詩も書けます。しかし出てきたものが著作物なんですかというと非常に難しい。

 山田さんがさっき言った通り、すごい細かく指示を出して、その指示の意図に沿う形で出てきたものだったら著作物として保護される余地も、今の著作権でもあるかもしれない。

 ただ、簡単な1行ぐらいで誰でも出来るような内容の指示で出てきたものが、果たして著作物なのかということで、「思想または感情を創作的に表現したもの」というのが著作物の定義ですが、そもそもAIは創作的に表現できない、それ自体は。でもAIを使って人間が創作的に表現をしたんだと言える場合は著作物として認められる等、いろいろな議論がされています。

 なかなか私としても難しいとは思うんですけれども、保護される余地はありますし、これを全く保護しないというのも、それはそれで弊害が出てくる可能性があると思っています。

 仮にChatGPTの生成物が著作物として保護されますとなった場合、著作者は誰ですかと、AI自身なのか、もしくはAI開発者を著作者と認める余地があるのか、今の法律だとほぼ難しい、特にAI自身は難しいです。

 ただ生成AIが出たときに、AIが著作者ですみたいな規約を書いてる人がいたので、そういうものも含めて、このあたり法律改正が必要かどうかという議論になってくると思いますけれども、一般的には現行法だとChatGPTを使って創作した、その指示を出した人が、基本的には著作者となりうる人なんだろうなと思います。

 この辺りどうなるのか、例えば利用規約で、このAIを使って作った著作物の著作権は発生と同時に開発者に帰属しますって書かれた場合、契約によって著作権が発生と同時に移転するという構成とも取れますので、そういうのを認めていいのかどうか。

山田さん:
 それは怖いよね。どんどんみんなの出力結果を吸い上げていって、大きな権利を持ってしまうのかどうか、これはプラットフォーマーの規律どころの話じゃない気がしますね。

 そしてAIが作ったものに著作権があるのだということを認めてしまうと、逆にかえって人間の方が創作意欲を失っていく可能性もあるわけなんですよね。

小山さん:
 非常に今日本国内で、これは私の知人から聞いたお話ですけども、JASRACにここ1・2年ぐらい、大量に著作物登録する人が出てきたと。これまでどんなに作曲が得意な人でも、そんなペースじゃ無理だっていうぐらいの楽曲をどんどん登録申請してくる人がいるらしい。

 それはおそらくAIを使ってると、そういうものをJASRACの管理曲として登録して、著作権料を支払う対象に含めていいのか、勝手に使った場合に罰則付きの著作権侵害が成立するものとして認めていいのか、そういう問題も実際に出てきていると聞いています。

 (AIによって)創作行為にかかる時間が圧倒的に短くなりましたので、粗製濫造というわけではないんですけれども、それなりのクオリティで手当たりしだいに作りまくって発表して登録してを繰り返して、著作権料を得ようというような人がもう既に出始めているような話を聞いています。

山田さん:
 だからまず分けなきゃいけないのは、AIが作ったものに著作物性があるのかどうかという話は、認めても認めなくても不具合があるということで、実際に何を軸として整理するのかということを真剣にやらなきゃいけない。

小山さん:
 例えばChatGPTの生成物によって、既存の著作物と超そっくりなものが出てきました、これは著作権侵害なんですかというのは非常に難しい問題です。

 今の日本の著作権法では著作権侵害が成立する要件というのが大きく3つあります。1つ目は、他人の保護された著作物を、という要件、保護期間が切れてるものとかを除いて、他人の著作物を勝手に使っちゃダメということ。

 それに対して類似性というのも必要です。似ていないものは著作権侵害にはなりません。単に似てるだけでも著作権侵害が生じないというのが重要なポイントで、特許とか意匠とか商標と違って、著作権というのは自然発生主義と言われていて、どこに登録することもなく、創作行為で出来た瞬間に権利が発生します。

 なので、たまたま似てしまったということもありうる。特許とかはたまたま似ていてもダメ、先に登録をした方が権利を取ります。でも著作権の場合は、たまたま似ていたら、お互いが権利を持っているということになります。

 なので、意図したかどうか、既に存在している他人の著作物を真似したんですかというところが非常に重要になります。

山田さん:
 真似も難しいのは、ChatGPTに限らずですが、人間でも全てをゼロから創造物なんかできない、何かに影響を受けて作っていく。だからその微調整、どこまでを何%ぐらいなのかとかということも問われてしまう。

小山さん:
 おそらく科学的な議論を積み重ねると、依拠性なしという判断も十分にありうるんですが、何かの操作をすれば、誰かの作品と似たものがたくさん作られてしまう、元の著作者も嫌な思いをするでしょうし、それを自由に勝手に使ってる人を野放しにしたくないという気持ちもわかります。

山田さん:
 だからすごく責任が重いんですよ、もう既にこの話は自民党の中でも私が口火を切って、デジタル時代に合った著作権法の見直しが必要だということで議論を始めたんですが、結局日本はフェアユースという形じゃないので、新しい仕組みに裁判所が対応できないだろうと言われいます。

 そういう状況の中で、海外はどうなってるのかということも含めて見ていく必要があります。

小山さん:
 EU・米国・カナダ・中国・日本、それぞれAIの規律をしています、きついものから緩いものまで。

小山さん:
 EUでAI規制法案というのが今出されています、こちらは結構厳しいと言われていて、各事業者が勘弁してくれという話をしているんですが、最大の特徴は、AIをリスクごとに分類して4段階に分けて、それぞれに規制をかけますという形で、今いろいろと検討されているところです。

山田さん:
 でもこれ何をもってリスクなのかわからないよね。EUはAIに関しては厳しく規制していこうという方向性で、どちらかというと権利者を守る側に近いかもしれません。

山田さん:
 アメリカは基本的に見ると、プラットフォーマーに関して、節度を持って対応しようという話なんだよね。だから出てきた著作物等に対してということではなくて、やっぱり独占禁止をやりたい、アメリカの自由経済を守っていきたい、その観点で自由というのが方向感としてあると思います。

小山さん:
 カナダはデジタル憲章実施法案というのが発表されていまして、その法案は3つの法律からなります。1つ目、消費者プライバシー保護法案、2つ目、個人情報・データ保護裁判所法案、3つ目、AI・データ法案で、その中身は上の画像の内容ですが、結構カナダは厳しめにいくという方針です。

小山さん:
 中国はAIに関していろんなルールがあるんですけども、これだけ見ると素晴らしい。

山田さん:
 いやぁ中国がプライバシーの尊重って、悪いけど、以前金盾の話もしましたが、あまり参考になりません。

山田さん:
 日本にもAI原則実践のためのガバナンス・ガイドラインというのがあるにはあるんですが、これは全然ガイドラインになっていなくて、中身を何か特段示しているわけじゃないので、ちょっとこれでは…と思います。

5.どうするChatGPT

小山さん:
 それを受けた上で、権利の保護をどうしていって、規制を強めるのか、技術革新を前提とした対応を考えるのか、対立軸としてはその2つがあると思うんですが、どうですか山田さん。

山田さん:
 これまでは技術促進ということで、どちらかというとAIを促進させようというところに舵は切りましたが、実際にこのChatGPTが出てきて、ずいぶん事態は変わってきたというふうに思っています。

 いろんな問題があって、権利侵害の問題以外にもフェイクニュースの問題があったり、知財だけにとどまらないんですが、豊かな文化が形成されるというのがゴールですので、そこに立ち戻って、何がまず豊かなのか、知財の観点からしっかり見ていかなきゃいけない。

 このままAIを放置すれば、かなり多くの領域で権利侵害になってしまうのではないか、そういう不安を持つ人が多いというのは間違いがないので、知財はちょっと強く規律を強化する必要はあると思っていますが、もう一方で技術振興という観点と、情報流通による新たな文化形成というところも殺しちゃいけないわけなんですよね。

 権利の保護と技術の促進、バランスを取らなきゃいけないんだけど、今若干無法地帯状態になっている、プラットフォーマーの規律も一緒に検討していかなければいけないと思ってます。

小山さん:
 非常に難しいところで、権利侵害の問題も実際に生成系AIを巡って、アメリカなどで(日本でも)訴訟が起こってます。

 訴訟の内容としては大きく2つの問題があります。AIが学習する段階で、無断で自分の画像とかを使われたのが許せないという学習段階と、学習後の段階、生成したものが自分の絵に似ているのが許せないという2つがあります。

 日本では学習段階については、平成30年の著作権法改正で学習をしてよろしいという方向で法律を改正しています。日本は機械学習天国と言われていて、学習段階で違法になるというのは、大規模AIに関しては、なかなかないと思います。

 例えば特定の作者の絵だけを読み込ませて、それに似たものを作るAIというのは、学習段階から権利者に不当な不利益を及ぼすものとして、例外規定の方で違法になるんですけれども、大規模なAIはいろんな人のものを機械学習するので、日本ではなかなか今は違法になりにくいと思います。

 その後の生成物が似ていたというところも、法律ではおそらく明確な手当てがされていませんので、裁判になってからなのか、今後政府与党内とかで議論が始まるのか、学会などでジャーナリストを含めて、国民の間とかでいろんな議論が沸き起こるのか、そういう段階に来てると思います。

山田さん:
 今はChatGPTを始めとして、AIの凄さということが強調されるんだけど、一段落すると著作権侵害行為だったり、不愉快な思いをしているという声も出てくると思う。

 そのときに政治に対して規制するべきだという声が広がっていく、そういったことも踏まえた上で、バランスを持ってやっていきますが、僕自身はデジタル著作権をずっと作るべきだということを、数年間前から言い続けています。著作権がわかる国会議員もほぼいないので、しっかりやりたいと思ってますが、このあたりめぐめぐさんどう思いましたか。

めぐめぐ:
 私自身もクリエイターですけど、去年からAIのアプリに対して騒がれていて、私はイラストの依頼をいただいたときに著作権についての約束とかは必ずしてるんですけど、AIに読み込ませるのはいいけど、その抽出したものを発表したりはしないでねっていう約束をしています。

 ただそれは単に自分がやられたら嫌だなって思うことを約束してるだけなので、それが著作権法上正しいのかどうかは全然わかっていません。

 私自身は今後AIが進化していくことにすごく賛成で、私もイラストを描いていく中で、私は背景が得意ではないので、背景を描いてくれるようなAIが登場してくれれば、何か右腕的な存在になってくれたらいいなとは思っています。

 そういうところで何か、正しい利用方法が世間で一般的に広まって、ダメなものはダメっていうふうになってくれたらいいなって思いました。

山田さん:
 ということで今日はどちらかというと入門編みたいな、実際に動かしてみたり、AIと著作権の問題についても軽く触れましたが、これは今後もシリーズとしてやっていく必要がありますし、皆さんにも問いかけをしながら探っていきたいと思っています。



虹杜コメント:
 今回の文字起こしは以上です。今回もある程度要約・カットした部分がそこそこありますし、ラストの今週のトピックスは丸々カットしていますので、しっかり内容を確認したい方は是非動画の方をご確認下さい。

 こちらの文字起こしテキストは自由に切り抜いてTwitter等で利用して頂いてかまいません。ここまで読んで頂きありがとうございました、もしよろしければスキを押していただけると幸い(お礼文はランダム表示)です。

 山田太郎さんを応援したい方は、山田太郎公式ホームページの『山田太郎をSNSで応援する』や『山田太郎をもっと応援する』からどうぞよろしくお願いします。