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「デューン」もう一つの秘密

日本語JōZUで語るのは毎回楽しいんですが、今回の「デューン特集」はいつも以上に張り切りました。ポッドキャストのために調べ物をしていたら、気がついたら不思議の国のアリスの様に「デューン」というウサギを追って大冒険をしていました。

原作、70年代にお蔵入りになってしまったアレハンドロ・ホドロフスキーのデューン、1984年デビッド・リンチ版、そして2021年版(本当は2000年代にドラマ版もあったんですが、割愛しました)。デューンについてたくさん語ったはずが、実はポッドキャストで話すには尺が長くなりすぎるため思いっきりカットした部分がありました。それが劇中にも登場する「宇宙で最も価値のある物資=スパイス」の元ネタです。

通称スパイスと呼ばれる「メランジ」は惑星アラキス(通称デューン)でのみ採掘可能な物質です。メランジは人体に抗老化作用、意識の拡張、予知能力、他者を操る超能力(ベネ・ゲゼリットはメランジも少し使っている)などの効果があります。

2021年版には出てきませんでしたが、宇宙船が惑星間を超光速で移動できる理由は宇宙協会(宇宙旅行、星間輸送、国際間銀行業務を独占している協会)がパイロットにメランジを大量摂取させ突然変異させているからなんです。AIを否定した結果の人類と考えると、エコロジカルで面白いですね。パイロットにはなりたくないですが。

さて、この「スパイス」と呼ばれるメランジなんですが、元ネタは香辛料ではなくなんとシロシビン、通称マジックマッシュルームなんです!

原作者であるフランク・ハーバートは生態学を若い頃から学び、オレゴン州にあった砂丘の研究から菌類学を学びきのこ栽培もしていたそうです。そしてマジックマッシュルーム愛好家でもあり、実は他のキノコとともにこっそり育てていたそうです。伝説の菌類学者のポール・スタメッツ博士は当時「きのこコレクター」としても有名だったフランク・ハーバートと会う機会があったそうです。ハーバート氏のきのこ栽培の技術は博士をも驚かせるほど素晴らしいものだったとスタメッツ博士は語っています。そしてその時のハーバート氏の会話でデューンの着想のきっかけも聞くことができたそうです。

「フランクは私にデューンのほとんどの設定は彼が今まで見てきた菌類の生活環(ライフ・サイクル)から着想を得ていると教えてくれた。時空を歪ませることができるスパイスはマジックマッシュルームの胞子から来るトリップ、サンドワームはキノコを分解する蛆虫、フレメンの青い目はシロシビンの色、ベネ・ゲゼリットはメキシコに伝わるマリヤ・サビナの物語やキノコ・カルト。すべては菌類からきて、彼の想像力はマジック・マッシュルームを使って拡張されたと語っていた。」

(ポール・スタメッツ著「Mycelium Running: How Mushrooms Can Help Save the World」の一部を引用し私が訳したもの)

フランクは機械だけに頼らず、自然界と人間界が共存した世界を作り「スパイス」と呼ばれる現実世界におけるシロシビンが文化、宗教、歴史をどう動かすかを書きたかったと言われています。昨今ではこういったテーマのものが増えましたが、当時はかなり新鮮でした。

シロシビンには依存性のない、神秘体験を生じさせ、幸福感や生活の満足度を体験後も長期的に増加させるセロトニンに類似した物質があるため、イギリスやアメリカでは現在、違法化されたシロシビンに再度注目し治療抵抗性うつ病や禁煙に対する治療薬として使えるかどうかの研究が進んでいるそうです。ハーバート氏には先見の明があったのかもしれませんね。余談ですが、アレハンドロ・ホドロフスキーは原作を読んでこれにすぐ気づき「俺はデューンでLSDをやらなくてもLSD体験ができる映画を作るぞ!」とやっきになっていたそうです(笑)あとさらに余談ですが、夢を見るときに発生する物質「DMT」という幻覚剤は通称「スパイス」と呼ばれています。デューンの影響があったのかもしれないと言われています。

意外、、でもないですが、思った以上にデューンはサイケデリックな作品なのです!それを知った上で、是非DUNE2に挑んでその世界に浸ってみてくださいね!

※こちらポール・スタメッツ博士のTEDTalkです。なかなか面白いので是非♪

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