熊を駆除するの可哀想!


とかいう奴、地方人のこと人間だと思ってないでしょ?
それか地方人は危険にさらされる地域に住んでて馬鹿だとでも思ってるんでしょうか?
信じられない事なんですが、地方に住む人間の事、同じ人間だと認識してないみたいですね。
認識してたら、地方における熊駆除に対して色んな否定的なこと言えないと思うので。

中には、クマスプレーを徹底すればいいとか、熊鈴付ければいいとか、山に返せばいいとか、星○リゾートでは訓練された犬を放つことで熊を追い払って共生をはかっているのだから見習え、という意見まである様子。

共生を試みるのはいい事だと思います。

でもね、いいですか、現実的に考えて頂きたいんですが、というか知らないかも知れませんが、熊って凄く危険で、更に言うと色んな性格や特徴の熊がおり、時期や季節によっても危険度が跳ね上がるんですよ。

まず、クマスプレーからいきますが、
クマスプレー、何本持ち歩くおつもりですか?
それから、すぐ取り出せますか?どこに入れますか?
手に持って歩きますか?
自転車で通学通勤する人にもそれを強いるつもりですか?
考えてみてください。
たとえばですが、
放課後に、子供たちが公園で遊んでいます。
熊が来ました。子供の誰かが咄嗟にクマスプレーで対処をする事が出来ました。熊は逃げました。
翌日、別の地域に出ます。別の地域でも同じようにクマスプレーで対処出来ました。翌日別の地域に出ました。

この繰り返しになる事を考えてみてください。
この繰り返しにそもそも本当になりますか?
クマスプレーが間に合わなかったら?
熊が逆上してきたら?
更に言うとクマスプレーの有効射程距離、そんなに離れてます?
届かない所から近づいて欲しくなくて噴射してたら、あっという間にスプレーなんて無くなります。
スプレーが無くなったあと、熊は本当に逃げてくれるんでしょうか?
熊が運良く逃げてくれたとして、ちょっと逃げた先だって人間の生活圏内なんです。
庭先を熊がウロウロしてたら?怖くないですか?
居なくなるのを待とう、って待つ選択しかないですが、仮に庭で家庭菜園をしてたら、熊はそこでピクニックと洒落込むかも知れませんね。
出勤や学校へ行く時間だったら、熊が居なくなるのを待つしかありません。遅刻です。
庭に熊がいて遅刻しましたって言ったら、地方なら許されるかも知れませんが。

ずっといる訳じゃないから良いだろうとか言うんでしょうか。
仮に3時間くらいで居なくなってくれたとしましょう。
翌朝、そこにまた現れたらどうするんですか?
熊にだって学習能力はあります。
そこに、安全にご飯を食べられる場所がある、と分かったら、熊にとって行きつけのお店になる事でしょう。
その家の家庭菜園は、熊のための素敵なレストランとなるでしょう。
もしかしたら子育て中の母熊もやってくるかも。

ではそうならないよう対策をするとしましょう。
鉄作とか。
個人費どんだけかかるか分かるんでしょうか。
国から補助が出る訳じゃないんですよ。
仮に家々に電気柵などを設置出来たとしましょう。
でも地方では、畑も田んぼもありますよね。
荒らされてしまうんじゃないですか。
電気柵とか張り巡らせておくんでしょうか。
猪や鹿避けなどで電気柵を設けてる所はあるので、実は既に実用されています。
でもそれを壊して入ってくるんですよ、猪や鹿ですら。
熊だって入って来ます。


さて、続いて熊鈴についてですが。
知らないかもしれませんが、地域によっては通学する子供たち全員に熊鈴が配られ、ランドセルなどに付けていたりします。
それでも対策は不十分だと言うのは、クマスプレーからの下りで既にお分かりかと思います。
更に言うと、熊鈴なんて全然効かない熊もいます。
個体によっては、かえって寄ってきます。
何故かご存知でしょうか?
山登りが趣味の方などはご存知かもしれませんね。
人間が食べ物を持っていると学習している個体というのが、中には居るんですよ。
するとですね、積極的に人間を襲うようになります。
ここまで来たらわかるかと思いますが、こういった個体に対して熊鈴がする役割は、餌の位置をお知らせしてくれる便利な音、となります。


さて次。
山に返せは良い、というご意見ですが、確かに、一見すると良いように思いますが。
そもそもなぜ山を降りてくるかなんですが、山に熊にとってのご飯がなかったり、逆に豊作過ぎて繁殖が捗った結果、住むところも食べる物も無くなって、山からあぶれちゃった、とかが挙げられます。

熊の専門家の方ならもっと色んな理由を挙げられるかもしれませんが、とある地方済みの一般人である私でもこの位は知っています。
教えられて育つからです。

で、この状態で山へ返すと何が起きるかというと、結局またおりてきますね。
あと、どうやって捕獲するかですが、驚くべきことに熊は、麻酔銃3発でも倒れなかったりします。
麻酔銃3発熊に必中させられる腕前の人が必要になりますが、そんな凄腕そう簡単に育ちませんよね。
それでも撃ち込む回数足りないとかなってくるともうね。
しかも相手は動き、攻撃された事で必死なので、猟師の方は命懸けになります。
被害を最小限に抑えるために奮闘してくれる猟師の方は、なんだかよその県とかから非難される。なりたがる方も少ない。
非難される上でなろうとする方が、多くの人の為にどれだけ自分を犠牲になさっているか、想像にかたくないと思います。

山に返すことの難易度の高さが分かるかと思います。
仮にその地域に出なくなっても他の地域に出たら、また同じことの繰り返しになります。
人材も費用も足りませんね。


次に、星○リゾートみたいに訓練された犬を放つことで熊に縄張りを覚えさせて共生をはかる、ですが。

星○リゾートさん、本当に素晴らしい試みを行っていらっしゃると思います。
でもそれを、リゾート関係者でない方が引き合いに出して、地方自治体に真似をしろと言うのは現実的ではないというか、酷です。
まず守らなければならない範囲の差があります。
あと、追い払った先の心配もしなければなりません。

あと、山に返せばいい、と通じる所がありますが、縄張りを覚えたとて入ってきたりも普通にします。そのくらいの頻度で出ますし、あと、本当に山が近いです、地方は。

あとですね、犬の訓練はどこで誰が、どのくらいの時間をかけてどのくらいの費用をかけて行いますか?
公費、どのくらい出せますか。
訓練士を雇うにしても一朝一夕に出来ることではもちろんありませんし、あと、本当に範囲が広いです。
犬を訓練し放つとして、犬だって交代させてあげないと可哀想ですから、結果何十頭と育ててあげなければなりません。

あとですね、動物の命を守りたいというなら、犬の犠牲は良いんでしょうか?
犬と熊、サイズ、どっちが大きいですか?
パワーはどうですか?
熊だって学習能力があるという話は先だってしましたが、慣れてきたり、山からあぶれたら、どうやったって降りてきます。

そうなると最初に犠牲になるのは人間と犬でしょう。

犬だけ守れればいいのか!?
と言われるかもしれませんが、それは論点が違います。
犠牲を最小限にとどめる為の、現実的で実行可能な事はなんなのか?
という話なんです、これは。


様々な所で言われていますが、熊による悲惨な事件は過去に沢山あります。
地域によっては最近起きた事件もあります。


とある県の県庁へ講義をなさるような方や、ネットで上記のような例を声高に叫ぶ方に届くか、聞いてくれるかすら分からないんですが、
その発言、地方人に、お前たちは努力が足りない、だから死ね、って言ってるのと同じです。
信じられないかも知れませんが、そうです。
脅迫に等しいです。

動物園で檻の外から素人が、ライオンに餌をやろうとする飼育員に向かって、なんでそんなに遠くから餌をやるんだ!って叫ぶようなもんです。
ライオンにもテリトリーがあり、入って欲しくないとかがあり、飼育員はそれを理解しているので入らないのです。


私の地域では、熊の出没情報は一斉メールで自治体などからお知らせが来たり、会社で情報共有がなされます。
それだけ危険な存在だからです。
でもだからといって、執拗に追いかけ回したり、わざわざ殺そうとしたりしている訳ではありません。
熊を銃殺するに至るには、それに足るだけの理由があるんです。
私たちは、地方では、きちんと既にできる限り共生しようとしています。
でも、限界というものはあるんです。
殲滅しようとしているわけでもなければ、積極的にどんどん殺そう!という訳ではないんです。

山に入って猟を行う猟師の方たちだって、ルールもなく無秩序に、バンバン動物を撃って殺している訳ではありません。
可哀想だと思っている、けれども、人間と、動物たちが、無闇矢鱈に傷つけあっていく事がないよう、汚れ仕事な部分を飲み込んで行ってくれているんです。

猟師の方たちが山に生きる動物たちに対してどれほど敬意を持って接しているか、少し猟師という仕事を調べたら分かると思います。

何を思って生きるかは自由ですし、表現の自由もあります。
ですが、攻撃は別です。
抗議をしているのだ、というのなら、まず実態を少しでもお調べになってください。
抗議と攻撃は違います。


それから、イメージが付きにくいかもしれませんが、都会の人のイメージする山への距離と、地方人が直面している実際の山の距離、多分違います。

関東平野って広いですよ。本当に。
山遠いです。
でも地方、東北とか見てください。
もう山ばっか。平野、めっちゃ狭い。
下手すると普通に、コンビニ行くより山の方が近いとかザラにあります。
山がある程度遠かったとして、広がる田園風景、熊が田園風景を数キロ歩くのと、都会のコンクリートジャングルと人混みを行くの、明らかに彼らにとって難易度が違うと思いませんか?


地方における熊の危険度が、少しでも伝わったら良いなと思います。

これで、だったら都会に住めって論点持ってこられたら、それはそれでまた別の問題として取り上げたいと思います。
少しだけ言うと、みんな都会に住もう!ってなると今以上に格差社会になって物価跳ね上がって人口の6割以上が生活立ち行かなくなると思います。
6割が基準の理由ですか?
現時点で年収300万円程度の人口が6割で、それらは低所得層とされているからです。
年収300万円くらいの人が都会にいない訳では無いですが、現在地方に散らばっている人口を局所集中すると物価跳ね上がって300万円程度じゃ都会に住めないどころかその日のご飯にも困ると思います。

野菜や米などの食料も地方だから広く土地を使えてるだけなので、地方に人が居なくなったらどうなるか想像にかたくないはずです。
ロボットに任せるとして、ロボットの導入費、維持費、燃料費、台数……。
人間がやるより安かったとしても数は少ないのでは。
ロボットのメンテナンスなどが出来る人材が必要ですが、全員がそうなれるわけではなく、ごく一部のみになりますよね。
それだけの知識を得られる環境も必要で、教育費にどれだけかけられるかになってくる、となると親の年収が高い人の方が有利になります。

こんな事が続くと、子供なんて育てられない、育てても生きていけるだけの教育を受けさせられない、等など……人口減少になるかも。今以上に。
人口が減ると、優秀な人材そのものが減って行って、進歩する技術に追い付けなくなってくる。
海外とも技術で渡り会えなくなりやがて……。


なんて事になりかねないと思いますが悲観的過ぎますでしょうか。

まあそう簡単に都会のみに人がいる事にはならないとは思います。


こんなに長い記事をnoteで書いたの初めてです。
くどくど説教臭く書きましたが、地方住みの人間として思う所ありすぎて我慢できませんでした。

ここまでお付き合いくださった方、本当にありがとうございます。


どうか猟師の方や自治体など、尽力された方々が少しでも報われれば良いなと思います。


終わり

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