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Relaxin' WITH THE HIGH-LOWS

ヒロトとマーシー全キャリアで一番好きです。
マーシーの曲は焦燥感、寂寥感にあふれ
ヒロトはナンセンスだったり、ロマンティックだったり

歌詞のテーマは青春、ニックネーム、恋愛、友の死、テロリスト、戦場の花、下ネタなど多岐にわたります。

ヒリヒリしてるのに、どこか緩い
夏の夕方に聴きたくなるアルバムです。

1. 青春

マーシー作詞作曲
ブルーハーツ的な曲を避けていたマーシーがふっ切れたように放ったエイトビートの青春ソング

とにかくマーシーの歌詞が最高

「冬に覚えた歌を忘れた
 ストーブの中 残った石油
 ツララのように 尖って光る
 やがて溶けてく 激情のカス」

音楽室でジェリー・リー・ルイスの真似をする。
先輩に歯向かい、打ちのめされる。
自分と違い、高く跳んでいるあの娘。

「夏の匂いと君の匂いが
 まじりあったらドキドキするぜ」

2. No.1

ヒロト作詞作曲
モータウン調のシャッフルビートが軽快なロックンロール

「人間らしくありたいだなんて
 それは人間のセリフじゃないだろ」
という歌詞が印象的

間奏のキーボードソロ、
終盤、キーが上がってからヒロトの歌とバンドの演奏が一体となって盛り上がるところなど、聴きどころが多いです。

3. 岡本君

マーシー作詞作曲
「青春」「No.1」とキャッチーな曲が続いた後、いい意味で予想を裏切られる曲

マーシーがソロアルバム「夏のぬけがら」の頃に作った曲のようです。
岡本君とはマーシーが子供の頃、死んでしまった友達

「岡本君 君がいない
 夏はまるで ぬけがらのようだ」

SEが効果的に使われていて、うだるような暑さの中、哀しみに打ちひしがれている心情が描写されています。

4. パンチョリーナ

ヒロト作詞作曲
この曲はある意味、最重要曲と言ってもいいと思います。
マジな感じの歌詞が3曲続いたあと、「おーいパンチョリーナ」とか言われて、すっ転ぶ感じ。これぞハイロウズ。

この曲が無いと、特にアルバム前半がシリアスになりすぎて
ハイロウズらしさが薄くなるような気がします。
曲順も絶妙ですね。

ニックネーム次第で何にでもなれるぜ。
ブルースの偉人にすら。って曲
レゲエ調から、サビで横ノリのエイトビートになるのがカッコいい。

5. 夕凪

マーシー作詞作曲
「R作戦B2号 コードネームはヘルハウンド」という歌詞から
1974年のテロ未遂事件の実行犯の心境を歌ったと思われる問題作

少ない音数の中での、ヒロトの歌は圧巻
「恥を確認すれば ちょっとは前へ行ける」など
やっぱり言葉のセンスが凄い。

SEが効果的に使われたアレンジも良いです。
最後の薄ら怖い女の子の笑い声から、次曲「不死身の花」への流れがカッコいい。

6. 不死身の花

ヒロト作詞作曲
このアルバムのヒロトの曲で、最もシリアスな歌詞だと思います。

前曲「夕凪」を受け継ぐような世界観だけど、ビートは対照的
「夕凪」の静謐な感じから、イントロが始まる瞬間、たまらなくカッコいい。

望まないのに戦場に咲いてしまった不死身の花
愛されない花の歌

7.  ボート

ヒロト作詞作曲
前曲までの、哀しくヒリヒリした感じが一気に緩む、これぞヒロトという感じのロマンティックで暖かいラブソング

「そうか八月には最後の夜が
 あと一つだけ夜がある
 夏が残した最後の夜が
 あと一つだけ夜がある」

「あぁ夏だけが使う魔法で」

トゥトゥルルってコーラスも素敵

8. ミーのカー

ヒロト作詞作曲
ここで、ナンセンスの極みのような歌詞の「ミーのカー」が来るのがいい。

この曲もアルバム全体がシリアスになり過ぎない役割を果たしていると思います。

ハイロウズらしい、バンドサウンドがカッコいい曲
ヒロトのブルースハープいいですね。

ライブではBPMが速くなり、一段とカッコよくなります。
イントロでやられます。
(貼っているYouTubeのライブを聴いてみてください)

9. 完璧な一日

今度はマーシーのラブソング
名曲です。

ヒロト作のラブソング「ボート」は、2人で月面の渚に行くのに対して、
この曲は

「じいさんの連れた犬が
 植え込みにしょんべんかける
 それで君がそばにいれば
 完璧な一日なのに」

という日常的な描写と、君の不在が
「ボート」とは対照的

10. ジャングルジム

マーシー作詞作曲
名曲が多い このアルバムの中でも特に大好きな曲

「優雅な月より
 輝けオレの背骨
 夕べの夢より
 輝けオレの力」

のところで、いつも涙腺が緩む。
キーボードのイントロがカッコいい。

11. ヤダ

マーシー作詞作曲
30秒足らず
ただ、メンバーが「ヤダ」と言うだけの曲

悪ふざけが過ぎるぞと思うところですが、
ハイロウズのおふざけは何故か嬉しくなります。

その反面、彼らがやると、ただの悪ふざけでも無く、
「ヤダ」という言葉に何かメッセージが込められて
いるようにも思えてくる。

12. タンポポ

マーシー作詞作曲
これもマーシーの歌詞がいいですね。

「静けさに迷子になった 蟻のような気持ち
 不確かに揺れているんだ 落ち着かないまま
 ふらふらふらふらふらふらふらふらふら」

EP「Flower」のバージョンはエイトビートですが、このアルバムには
三連を感じるリズムのアレンジが合っていますね。
ライブは「Flower」に収録されていたバージョンで演奏されていました。

13. 摩羅(シンボル)'77

ヒロト作 下ネタ(?)ソング
摩羅とは男性器のこと。
男のシンボルって曲ですね。

「負けるなシンボル」
「バカとシンボルは使いよう」

なに言っとんねん、こいつ(笑)

アホな歌詞に気を取られがちですが、バンドサウンドはカッコいいです。
ハイロウズでは珍しい曲調ですね。

14. バカ(男の怒りをブチまけろ)

マーシ作のアルバム最終曲
これまでのアレコレを吹き飛ばすような、イントロのギター
ジャージャジャジャッジャッジャジャー

アルバム通して文学的な歌詞が多かったマーシーが、
飲み屋でクダ巻いてるオッサンみたいに
「どこにでもバカがいる」っていうのが痛快

と思っていたら
「銃をくれ うつむいたヒマワリ
 銃をくれ はにかんだナデシコ」
なんて歌詞が出てきて、ドキッとする。

最後に

シングルの「青春」がテレビドラマの主題歌になり、ヒットした後のアルバムでした。
また、パンク色が強い「バームクーヘン」の次のアルバムだった事もあり、本作もパンクやロックンロールの色が強い内容を期待されていたように思います。

蓋を開けてみれば、「青春」のような曲は他にはなく、ハイロウズ史上、一番まったりとした内容でした。
僕も当初は「地味なアルバムだなぁ」と思っていた記憶があります。
(当時、大学一年生、性急なビートで、ストレートなロックやパンクのほうに惹かれる気持ちが強かったです)

しかし、何度も聴いているうちに、
シリアスさ、悪ふざけ、センチメンタルだったりロマンティックな感じが同居していて、夏の夕方を思い起こさせられる雰囲気が好きになりました。
音楽面でも、モータウン、レゲエ、フォーク、パンク、ロックンロールという幅広いアレンジの曲が並び、SEやコーラスワークで工夫を凝らした作風にどんどん惹かれて行きました。

毎度のことですが、本作もヒロトとマーシーに「名盤をつくってやる」という意気込みや野心は感じられず、どこか力が抜けていて、本人たちが楽しむことに重きを置いて作られたのだと思います。
偽悪的なまでに、無邪気に、露骨なオマージュ(パクリ?)をして、意図的に「ブルーハーツ的なもの」を忌避していた時期を終えて、ブルーハーツの呪縛のようなものから解き放たれた解放感が有るようにも思えます。

そのせいか、どちらかと言うとシリアスな歌詞でヒリヒリとした印象を受ける曲が多いにも関わらず、アルバムタイトルどおり、ほっと心が緩むような感じがするアルバムになっています。

「後世に残る名盤」を作ることに全く興味が無さそうな二人の天才的なソングライター、ヒロトとマーシーだからこそ作ることができた名盤。
なんとなく、そう思います。

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