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【感想】★★★「ずっとお城で暮らしている」シャーリイ・ジャクソン(市田泉 訳)

評価 ★★★

内容紹介

■あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉の子ニート暮らしている‥‥‥。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。"魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。

感想

洋書特有の演劇にも似た語り口が不気味さを際立たせている。
美しいお屋敷に住むブラックウッド姉妹は、足の不自由な伯父と3人で暮らしていた。以前にその屋敷で姉妹の両親、弟、叔母が毒を盛られ、死亡する事件があった。その事もあってか、街の人々は姉妹を不気味がり、悪意に満ちた目で見てくる。それでも、姉妹は幸せは暮らしてはいた。
しかし、そこへ突如現れ、住みついた従兄チャールズの存在により、ギリギリに保たれていた姉妹の幸せな生活が破滅に向かって進んでいく。

全編、妹のメアリ目線で語られていくのだが、メアリは精神的に普通ではなく、狂っているといっても良いキャラクターであり、語られている内容が真実なのか、妄想なのかが分からない。
ホラー小説として括られている事が多い本書だが、ホラーではないと思う。
狂ってはいるけど、イノセントすぎるメアリから見た世間は、やはり邪悪なのだろう。
屋敷が火事となり、より一層世間と距離を置く姉妹。まるで「火垂るの墓」を思わせる焦燥感のような悲しみが少し湧いてくる。
メアリから見た世間の邪悪さというのは歪んではいいるものの、あながち真実なのかも知れない。

すごく面白い作品ではないが、すごくつまらないわけでもない。
「悪童日記」のような独特な雰囲気を楽しみたい人や少し変わった小説を読みたい人にはいいかも知れない。

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