ねがい

さよならを言うこともできないまま
引き離された過去のこと
消えない想いはつのりつづけて
透きとおるような結晶になった

誰かの涙を拭くことはできないけど
ぼくはそれを胸に染み込ませる
大切なものを失くしたかなしみは
きっとそれぞれの形で残されていく

忘れられなくていい
忘れようとしなくていい
抱いたその想いはいつの日か
きっと誰かの涙を乾かすはずだ
そう信じて言葉を散りばめてゆく

わかりあえるわけではなくても
わずかな声を小さく放つ
かなしみが触れ合うことで鳴る
音を頼りに歩けるように

この記憶はきっと誰にも届かない
だからこそ忘れないようにしたい
想いを抱いて生きていけることは
他の誰にもできないことだから

たくさんの後悔を越え
いくつもの自責をくぐる
どんな重荷も背負いながら
それでも生きていこうとするのは
きっと愛していたからこそ

前を向けなくていい
歩くことができなくていい
抱いたこの想いがいつの日か
きっと誰かの涙に寄り添うだろう
そう祈って言葉を散りばめている

(2024.5.17.11:17)


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