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新レストラン予測:ニッチ!「こんにゃくレストラン」妄想繁盛記

 ニッチな飲食店を探しています。見つからない店もあります。こんにゃく専門の飲食店です。群馬県のこんにゃくメーカーさんの工場にはあるようですが専門飲食店とはいえません。
    
 でも、こんにゃくは多くの人が食べています。スーパーの棚にはたくさんのこんにゃく商品がならんでいます。だからといって、こんにゃく専門飲食店ができるかと考えるとちょっと無理かもしれません。「どうしても食べたい」という人が少ない気がします。
  
 しかしニッチな飲食店のマーケティング企画室です。どんな難題をふっかけられてもいいように準備しておかなければなりません。ということで「こんにゃくレストラン」の妄想かもしれない繁盛記を考えてみました。
  
 ここで前提です。食品の表記としてはコンニャク、漢字では蒟蒻ですが、ここではひらがなの「こんにゃく」と表記します。
(ホームページは「ニッチな飲食店」で検索してください)

1.こんにゃく概論。食べる人は減っているが親しまれている

●バブル期がピーク。消費量は減少中


 世界でもこんにゃくを食べるのは、ほぼ日本人だけのようです。なぜ食べるのか不思議です。「私の大好物はこんにゃく」とか「これは激ウマこんにゃくだ」という声を聞いたことがありません。
    
 反対に「食べたことがない」とか「こんにゃくは食わず嫌いです」という話も聞きません。およその人は食べたことがあると思います。
   
 こんにゃくの家庭内消費は減少中です。総務省の家計調査年報では1990年代以降、少しずつ減少し、いまではピーク時の約半分になっているのがわかります。
   
 でもコンビニのおでんのこんにゃくが爆発的に売れているかもしれません。ならば国内の生産量と海外からの輸入量も調べてみないとわかりません。…調べてみるとやっぱり減少していますね。
   
 ということで、これからこんにゃく専門の飲食店を始めるのはかなり難しいかもしれません。でも多くの人に食べられているのは間違いありません。まずはどうして食べるようになったのかを探ってみましょう。

●こんにゃくは遠い国からやってきた。長いつきあいの友だち


 こんにゃくの歴史です。生まれは中国のようです。「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」という古い漢和辞書があります。平安時代(承平年間931年~938年)にできたといわれています。
    
 このなかで「蒟蒻(中略)、苦酒(注:酢のこと)をもってこれをひたし食す、蜀人これを珍とす」(『新特産シリーズ コンニャク』)とあります。ということは、おなじみの三国志の時代(220年 ~ 280年)に蜀の国、いまの四川省あたりの人たちは、こんにゃくを食べていたということです。
   
 日本には仏教の伝来とともに精進料理としてやってきたようです。しかしこれについては、なにも確証がありません。その後の鎌倉、室町時代にもこんにゃくの記録が残っているとのことなので、こんにゃくは細々かもしれませんが食べられていたようです。
   
 こんにゃくに革命がおきたのは江戸時代中ごろでした。水戸藩の中島藤右衛門が1776年(安永五年)に18年の歳月をかけて新しいこんにゃくの製法を開発したことからです。
    
 こんにゃく芋を独自の技術で乾燥させて粉にし、それを使ってこんにゃくをつくる方法を開発したのです。これによって、こんにゃくを粉として流通させることができるようになりました。わずかなこんにゃく粉があれば、水と灰汁(あく)抜きの石灰で何倍もの量のこんにゃくがつくれます。
    
 こうして水戸藩のこんにゃくが全国に広まり、危機にあった藩の財政も救われたともいわれています。茨城県の北部、大子(だいご)町には中島藤右衛門を祭神とする「蒟蒻神社」までできています。
   
 江戸時代の料理本ベストセラー「豆腐百珍」の追っかけ本「蒟蒻百珍」も出版されています。こんにゃくの人気ぶりがわかります。
   
しかし1950年代以降、こんにゃくのおもな生産地は群馬県に移ってしまいました。当時、販売価格の変動が激しかったことから鉄火場気質の上州人の気質にあったようです。
    
 こんにゃくは、仏教が日本にやってきたころからのつきあい。かれこれ1500年にもなります。古い友だちなら大切にしたいものですね。

●こんにゃくの特徴は低カロリーと食物繊維


 カロリーは板こんにゃくなら100gで5キロカロリー。超低カロリーです。ダイエットには最適です。しかし低カロリーだとおいしさは感じられません。
   
 人類だけでなく、生き物であるならカロリーというエネルギーが必要だからです。カロリーがほとんどないならば、いつも食べたくなるものではありません。
   
 食物繊維は100g中に2.2gと立派な数字です。食物繊維は腸活などでも話題の大切な栄養素です。厚生労働省がすすめる一日の食物繊維の摂取量は成人男性なら21g、成人女性は18グラムです。
    
しかし実際には一日に14g程度しか摂れていないようです。こんにゃくには食物繊維食品という価値があるということですね。
   
 でも食物繊維を摂るならこんにゃくが一番なのでしょうか。食物繊維を含む食品はいろいろあります。ゴボウなら100gあたり5.7g。ブロッコリーなら4.4gです。こんにゃくの2.2gは悪くはないのですが、それほど素晴らしいというものでもありません。
   
 こんにゃくは地味な食べ物です。すき焼きにしらたきが入ってなくても文句を言う人は少ないと思います。おでんにこんにゃくがなくても「ちょっぴり淋しい」ぐらいです。「ではなぜ食べるのか」です。
    
 もともと野菜だからではないでしょうか。芋類ですから当然野菜の一種です。「こんにゃくは野菜」と考えると「低カロリーのダイエット食品だ」とか「食物繊維が豊富だ」などの大きな期待は荷が重いのではないでしょうか。野菜として、もっと気軽につきあってあげるべきだと思います。

2.こんにゃく専門の飲食店ビジネス。こう考えた3つの試案


 ここまでをまとめてみると「多くの人が食べている」「古い友だちのようなつきあい」「栄養価ではなく野菜として価値がある」ということでした。
    
 まとまってきましたね。ここからニッチな飲食店「こんにゃくレストラン」について考えてみます。
  

(1)こんにゃくだから「こんにゃくレストラン‘婚約’」


 こんにゃく、こんにゃく…と5回ぐらい言ってみてください。「こんやく」と言ってませんか。「あれ、ダジャレ?」。いやいや真剣です。「こんにゃくレストランで婚約する」。イケそうな気がします。
    

●ダジャレ戦略の成功事例。「キットカット」


 「ダジャレで?」というかもしれませんが成功事例があります。「キットカット(KitKat)」です。世界最大の食品メーカー、ネスレのチョコレート菓子。受験シーズンのお守り商品として定番商品になっています。
     
 はじまりは「きっと勝つ」が福岡弁では「きっと勝つとお」と言うことからです。福岡の高校生の間で「キットカット」が受験のお守りになると話題になっていました。
     
 これに気がついたネスレと広告会社が受験生を応援するキャンペーンに仕立てあげました。そして、いまや日本中でこのシーズンに欠かせない商品になっています。
    
 そいうことなら、こんにゃくレストランで「婚約する」もいけそうな気がします。日本中の恋人たちを応援するレストランです。

●結婚式をするのは半分。しかし婚約はする


 人生にとっては結婚も大事ですが、その前には婚約があります。「君を一生しあわせにするよ」。一生しあわせだった人がどのくらいいるのか知りませんが、婚約はとても大切な区切りです。
    
 結婚式は人生で重要な儀式ですが、実際に結婚式をするのは半分ほどのようです。数百万円ものお金や多くの手間がかかります。再婚同士なんてケースもあると思います。コロナ禍もあって、ここぞとばかり省略してしまう人もいるかもしれません。
     
 「こんにゃくレストラン‘婚約’」は婚約だけで結婚する人たちがターゲットです。レストランでふたりだけの婚約式もいいでしょう。両親との食事でもいいでしょう。親しい友だちとの食事会でもいいでしょう。食事だけなので、それほどの労力もお金もかかりません。婚約をしっかりと思い出にするためのレストランです。

●こんにゃくには接着と防水というストーリーがある


 ストーリー・マーケティングです。人は物語で話されると、それが強く記憶に残ります。
    
 かつてタイタニック号が沈んだときに、有名ブランドのバッグにつかまって助かった人がいたという伝説が残っています。沈んだ船からバッグを引き上げてみたら、濡れていなかったという話も伝わっています。このストーリーでブランドの製品としての確かさが記憶に残ります。
    
 こんにゃくにもストーリーがあります。かつてこんにゃくは接着剤としても使われていました。江戸時代の雨がっぱ「紙子(かみこ)」には紙の接着のためにこんにゃく糊が使われていました。
    
 こんにゃくでふたりを強く接着し、明るい未来に導きます。ストーリーとしてぴったりはまっています。こんにゃくの強い接着力で「こんにゃくレストラン‘婚約’」。記憶に残るはずです。

●妄想繁盛記。いつもなかよしのキャラクター「コンニャンズ」


 コミュニケーション戦略は、こんにゃくとネコが合体したキャラクター「コンニャンズ」です。いつもピッタリとくっついています。このキャラクターがプロモーションの核となります。
    
 レストランの広い庭は「エンゲージランド」。夕方は「コンニャンズ」のエレクトリカル・パレードもあります。ぬいぐるみのコンニャンズがテーブルにやってきてふたりの門出を祝ってくれます。このっ部分はディズニーランドをお手本に書いています。
    
 ビジネスのポイントはお客さまの生涯顧客化です。毎年エンゲージ記念日のころにコンニャンズから店への招待状が届きます。お客さまの楽しい記憶が長く残るように工夫します。いつまでも支持される店になるはずです。

(2)こんにゃくは野菜の仲間「こんにゃくは野菜ですレストラン」


 めんどくさい店名かもしれません。でもイケそうです。野菜としてのこんにゃくに焦点をあてたレストランです。こんにゃくをなぜ食べるのか。はっきりと意識して食べている人は少ないと思います。そこで「食べる理由」を明確にするということです。

●食べる理由。「こんにゃくは野菜だから」


 やせるために、こんにゃくを食べるというのは難しいことだと思います。カロリーがほとんどないなら、いくらやせるためとはいえ、続けて食べたくはありません。もうひとつの機能性、食物繊維も100g中2.2gなら、それほどたくさんではありません。
    
 日本こんにゃく協会による「こんにゃくの消費に関するアンケート」では、月に数回食べるという人が58%でした。こんにゃくのセミナーに参加した人へのアンケートです。一般の人なら月に一回がいいところではないでしょうか。
    
 「健康的なかんじだから、たまに食べればいいんじゃないの」というのが多くの人の意識だと思います。これでは飲食店ビジネスにはなりません。
   
 しかし前述のように「こんにゃくは野菜」となると考えが変わりませんか。野菜なら毎日食べられます。むしろ毎日でも食べたほうがいいはずです。ダイエットのために、こんにゃくステーキやこんにゃくスパゲッテイでおなかいっぱいにする必要はありません。
    
 こんにゃくを野菜のひとつとして食べてもらうレストラン「こんにゃくは野菜ですレストラン」。なんだかイイかんじです。

●こんにゃくと野菜で「一日350g」


 野菜が人気なのは健康的だからです。厚生労働省も「一日に野菜350g」と推奨しています。しかし、なぜ350gが必要なのでしょうか。350gを食べるのは、なかなか大変です。
    
 『佐々木敏の栄養データはこう読む!』という本に答えがあります。欧米の研究によると野菜と果物を一日350g以上食べると総死亡率が減少するからです。欧米では野菜といっしょに果物もすすめているようです。
   
 こんにゃくが野菜なら毎日食べてもらえます。いろんな料理に少しずつ加えればいいわけです。これなら一日350gの野菜を食べることも少しラクになるはずです。

●新メニュー開発。こんにゃく・野菜・タンパク質の料理


 ひとつは野菜サラダです。でもこれだけではうまくいきません。食事にタンパク質が大切だからです。
タンパク質がなければ栄養価としてもレベルの低いメニューになってしまいます。またお客さまに満足感が生まれません。リピートの利用が期待できなくなります。
    
 もうひとつ、こんにゃくと野菜とタンパク質の炒め物や煮物のメニューが必要です。タンパク質は低脂肪の鶏肉や魚、豆腐、大豆タンパクなどを使います。
    
 これまでの古典的な「みそ田楽」のようなレシピでは、野菜としてのこんにゃくメニューにはなりません。どうしても新しいレシピ開発が必要です。野菜としてのこんにゃくを使った新メニュー開発がポイントになるはずです。

●妄想繁盛記。こんにゃく検定でこんにゃく大使を


 ニッチな飲食店には「ニッチ構築」が必要です。詳しくは後述します。こんにゃくに関する情報を徹底的に集めて整理してお客さまに提供することです。つまりコンテンツづくりです。
    
 このコンテンツを使ってプロモーションをします。たとえば、こんにゃくの科学と歴史と文化に関する検定「こんにゃくマイスター制度」の創設。1000ポイント満点の検定試験があります。学問的な知識だけでなくこんにゃく料理の実習までが試験範囲です。

 野菜ソムリエの次に欲しい資格は「こんにゃくマイスター」と言われるようになりたいものです。
    
 毎年検定試験の成績上位者3名がこんにゃく大使として認められます。野菜としてのこんにゃくを全国に広めていく仕事をしてもらいます。特に幼稚園や小学校の子どもたちにも野菜としてのこんにゃくを広めていきたいですね。
 
 こんにゃくに関するコンテンツを集めること、それを広めていくこと。これによって、ほかの店にはマネできない独自の地位を築くことができます。

(3)アメリカ市場で勝負。「健康こんにゃくラーメンレストラン」


 アニメに次ぐ日本が誇るビジネス、ラーメンで勝負しましょう。「こんにゃくで健康を」テーマにしてアメリカ市場に殴りこみです。

●お客さまは健康に真剣なアメリカ人


 中・高所得者のアメリカ人は健康に神経質です。アメリカは先進国でありながら平均寿命がOECD諸国でも下位です。それでいて一人あたりの医療費はとびぬけて高く、OECD諸国平均の2.5倍という驚くべき状態です。
    
 盲腸で手術なら最低で200万円ぐらいが必要のようです(堤未果『沈みゆく大国 アメリカ』)。中間層でも重病で病院にいくなら破産も覚悟しなければなりません。
   
 国民全員が健康保険をもつ皆保険制度で安心して病院に行ける日本とは違います。健康保険制度がまったく違うからです。アメリカ人にとって大切なのは健康です。健康のためには食生活が重要です。
    
 アメリカ人の成人の約40%、2歳から19歳の18.5%は肥満といわれています。日本では関心の薄いベジタリアン、ビーガン、オーガニックにも熱心な人たちが多いのも納得できます。
   
 ということで健康に深い関心をもつ中・高所得者層がターゲットとなります。

●ビジネスモデルは得意の「ラーメン」


 世界で成功した日本の飲食店ビジネスといえば「寿司」です。アメリカの寿司店はすでに2万店以上。市場規模は200億ドル。日本円で2.5兆円にもなります。
   
 アメリカならラーメンも有望です。アメリカをはじめ海外に進出するラーメンチェーン店も増えています。日本にやってくる外国人観光客もラーメンはお目当てのひとつです。
   
 観光庁の調査では、来日の際にもっとも期待するのが「日本の食事」という結果がでています。また、次に来日するときに期待することも「日本の食事」が第1位となっています。
    
 さらに、日本で食べた食事のなかで「最も満足した飲食」という質問には、ラーメンが第2位で入っています。寿司よりも上位です。アメリカでラーメンビジネスならば成功への期待が持てます。

●妄想繁盛記。戦略はキャズム理論から


 広大なアメリカの市場で、アメリカ人がほとんど知らない未知なる物質「こんにゃく」。ラーメンでチャレンジは大変なはずです。しかしテキストがあります。
    
 ジェフェリー・ムーアのキャズム理論です。もともとハイテク市場では、そこそこ売れてお客さま(初期採用者)がいるのに、それ以上のお客さま(前期追随者)には売れなくなってしまう現象があることから生まれた理論です。
   
超えられない大きな溝(キャズム)があったのです。それを超えるための戦略がキャズム理論です。ニッチな飲食店ビジネスでも、この考え方が使えそうです。
   
 ポイントは「橋頭保(きょうとうほ)を築け」です。ムーアはノルマンディー上陸作戦になぞらえています。一か所に戦力を集中して拠点を確保する。そこから目的地のパリ、ベルリンを目指すのです。
    
 まずはターゲットです。店のお客さまのことです。これを明確にしておく必要があります。前述のように健康に深い関心層なら確実にターゲットにできます。
    
 もうひとつは、お客さまが食べやすい商品にすることです。マーケティングでは「ホールプロダクト(完全な製品)」としています。飲食店ビジネスならば、お客さまに「これが気にいった」と言ってもらうためのメニューです。
    
 製品の現地化とかローカライズのことです。たとえば日本の海苔巻きは海苔を内側に巻いたカリフォルニアロールになりました。いまやカリフォルニアでは郷土料理として扱われているようです。
    
 こんにゃくという未知なる物質でもラーメンならホールプロダクトとして、アメリカ人に食べやすいものになると思います。あとは盛りつけ、皿の上のデザインです。見た目の美しさは料理の価値を高めます。
   
 また価格戦略も大切です。ラーメンだからといってファストフードチェーン店のような低価格戦略にならないようにする必要があります。ターゲットが中・高所得層ですから。

3.まとめ。ニッチな飲食店「こんにゃくレストラン」の成功戦略


 飲食店ビジネスでは食材の仕入れやお金の管理など、やるべきことはたくさんあります。ここでは、それ以外にということで、ニッチな飲食店の「こんにゃくレストラン」が成功するために重要なことをまとめてみます。
   

●中心の「こんにゃく」からブレない


 婚約、野菜、ラーメンの話をしました。しかし基本はこんにゃくです。ここを見失ってはいけません。ブレないためには店の名前が大切です。「こんにゃく」という言葉をどうしても埋め込まなければいけません。
    
 オシャレな店名にしたい。欧米のレストランのようなイメージにしたい。昔の彼女の名前を使いたい。いろいろ誘惑にかられるかもしれません。しかし、こんにゃく専門の飲食店とはっきりわかってもらえなければ、外食産業の深い海のなかに引き込ずりこまれて二度と浮き上がってこられません。
     
 コンセプトからブレないためにも、お客さまに一回で覚えてもらえ、いつでも思い出してもらえる「こんにゃく」の名前をつけましょう。

●「こんにゃく」情報を集めてお客さまに提供する


 こんにゃくに関する情報を徹底して集めて、わかりやすくお客さまに提供しましょう。ネットでの情報発信がメインになります。コンテンツ・マーケティングともいいます。
    
 情報を集めて編集するためには手間も時間もかかります。しかしこれがハードパンチャーのボディブローのように効いてきます。
   
 お客さまとの会話のきっかけにもなります。新規のお客さまを呼び込む大事な口コミのネタにもなります。興味のわく情報ならメディアでも取り上げてもらえます。社会にとって役にたつ情報ならば、グーグルは検索で上位に表示してくれます。

●工夫を積みあげてニッチを構築する


 ニッチはすき間ではありません。空いている小さな場所に入り込むことでもありません。ニッチは生態学では「生態的地位」。「ある生物種が生息する範囲の環境」のことです。つまり住む場所を確保することです。
    
 アメリカにいるビーバーという動物は、自分の歯で木を切り倒し、川をせき止め、池をつくって天敵コヨーテから身を守る巣をつくります。生き物は生きていくためにニッチを構築しています。
   
 ニッチな飲食店ならば、独自の地位(ポジション)を自らつくりだすことです。だれにもマネできないポジションです。つくりだすためには創意と工夫が必要です。かなり大変な仕事です。
   
 サラダもラーメンも同じような店がたくさんあります。ここに近づくと競争になってしまいます。競争はやがて価格競争になってしまいます。クーポン、ポイントカード、値引き…。これでは利益がでません。
    
 ニッチな飲食店は、小さな工夫を続けて、だれもマネできないニッチを構築する必要があります。
  
  
  
 ここまで書いてきたら「こんにゃくレストラン」、冗談ではなく、なんだかイケそうな気がしてきました。新しいタイプのこんにゃくレストランの出現を期待したいものです。
     
 ということで、今夜はこんにゃく食ってお祝いだな。お…、こんにゃくを、こんや食う…、こんにゃくをこんにゃく…。またダジャレか。

<参考文献>
武内孝夫『こんにゃくの中の日本史』講談社現代新書 2006
群馬県特作技術研究会『コンニャク: 栽培から加工・販売まで (新特産シリーズ)』農文協 2006
馬淵和夫『和名類聚抄古写本・声点本本文および索引』風間書房 1973
香川明夫監修『七訂日本食品標準成分表2017』女子栄養大学出版部 2017
関橋英作『チーム・キットカットのきっと勝つマーケティング』ダイヤモンド社 2007
一般社団法人日本こんにゃく協会 https://www.konnyaku.or.jp/
ジェフェリー・ムーア『キャズム Ver2』翔泳社  2020

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