「人の誕生日にかこつけてみんな自分の食べたいケーキを食べるだけだよ」
すれ違いざま、若い男の人が電話相手にそう話すのが聞こえた。にこやかな表情からして、誕生日パーティーを開いてあげる、と主役を説得してるところだろうか。家族なのか友人なのか分からないけれど、きっと相手に気を遣わせまいと「優しい嘘」をつける人なんだろうと思った。
「優しい嘘」といえば、絶賛就職活動を始めたところなんだけれども、「面接」は多少なりとも嘘が必要とされる場だなとつくづく思う。数ある企業の中から御社を選び、数ある応募者の中からあなたを選ぶ。特に本命でない場合、お互い本音だけでそのプロセスが完結することはまれだろう。
でも、倫理的にアウトな嘘は論外として、その場に適した、相手を尊重した「優しい嘘」をつくこと自体、それはそれで悪くないんじゃないかと思っている。
あらかじめ資料を読み込んで、自分の経験と絡めながら「ただの嘘つき」にならないようになんとかストーリーを構築し、言葉と身振りで相手にアピールする。選別する側も、相手を傷つけないよう、企業イメージを損なわないよう最大限の注意を払って応対する。
秩序を保ちながら、お互いマッチングしているかどうか探り合う。無駄に傷つけあうことを避けるための、まっとうな大人の振る舞い。
こう考えると、「面接」ってすごくクリエイティブな作業だ。頭も心もフル回転。アラフォーかつブランクあり、間違いなく戦況は非常に厳しい私だけれども、根気強く就職活動がんばります。こんな私でも必要としてくれるようなお仕事に出合えることを切に願います。
と、ここまで書いてきたところで、冒頭のお兄さん、本当はただ単に自分の好きなケーキを食べたいだけの人だった可能性もあるなとふと思った。というのも、昨日読んだ柚木麻子さんの本で様々な「無意識の思い込み」を指摘されたから。思い込みだけで人を判断するってほんとあるあるですね。
ケーキのお兄さんの真実はもう確かめようもないしどうでもいいのだけれど、そんなことを考えてたら甘いものが欲しくなってきた。来週の面接に備えるため、マカロンでも買って帰ります。
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