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スネークオペレーター〜特別諜報捜査官〜#13

前回までのあらすじ
海上コンテナの輸送先であった茂原の倉庫をコカインの輸入先であることを突き止め奇襲作戦を決行するも逆襲されてしまうが、なんとか難を逃れ極桜組桜生会舎弟頭の花田誠ほか六名を逮捕。極桜組執行部は花田誠を薬物を扱ったということで〝破門〟にした。花田会若頭黒沢明良は花田会を継承し、黒沢会と名称を改め、極桜会の直参となった。全国の極道組織に札(お知らせ状)が発行されたと同時に神戸極桜組の木下雅也を殺害した件で警察に出頭した。黒沢会は黒沢明良が出所するまで、これまで本部長だった上田公二が黒沢会若頭に昇格して、留守を預かる事となった。コカイン密輸ルートはこれで終結では無かった。


ミミとのドライブの朝、ヤスはそわそわした。
ミミが彼女になった日以来、直接会うのが2回目だからだ。ラインでは毎日やり取りはかかせない。今日の待ち合わせ場所はなんと、湾岸スタジオ駐車場だ。
前の日から基地で泊まり、駐車場に秘密のエレベーターから出ればすぐだし、もしミミの車に写真誌とかの追跡があっても、湾岸スタジオ駐車場に入ってすぐ出てくるのだから、スタッフかマネージャーなど関係に限られているからだ。
写真撮られても誰?ってなる。そう言って2人で笑った。朝の7時に駐車場地下2階に現れた白のレンジローバー。9頭身のミミにはぴったりの筈だが、顔が小さいし、わざと椅子を下げて外からは顔がちょろっとしか見えないので無人の車が走っているみたいだ。
到着前に『私の車だから今日は私が運転するからね。安心して!』って言われていたので助手席に乗った。右ハンドル仕様を買ったらしく助手席は当然左だ。

「だって、左ハンドル運転できないんだもん。この車だってやっとウインカーを出すつもりがワイパーを回すことが無くなったばっかりだよ。」

って笑って見せる。何回見ても可愛いし、飽きない。美人は飽きると言うがミミは色んな顔をするので楽しいし飽きない。

「それで、今日はどこに行くの?」

とヤスが行き先を聞くと、

「高速道路使って、行きも帰りも混まないところ。」

と笑顔で頬を膨らませて言う。日曜日だから、どこへ向かっても混む日だし、当てずっぽうに

「富士山の方向かな?」

とヤスは言ってみた。ミミは、おーっ!と前置きして少し怒った素振りで

「ヤスは何も聞いてなかったの?ミミの話。海見たいって言ったよ!」

あっ、そうだった。むしろ、その為にも車を買ったとも言っていた。

「ヤスと2人で海見たいからこの車も買った理由の1つなのにぃ〜っ!!」

確かにこんな大きいと長距離も疲れない。神奈川は混むから絶対無いと思うから、あとは千葉しかないじゃん。

「んじゃ、千葉しかないじゃん。神奈川は混むから・・。」

と消去法で言うと

「バレたら仕方ないなぁ〜。でもね、千葉でも海ホタル使う方向は混んじゃうの。なので混まないと思うとこスタッフさんやロケバスの運転手さんに聞いて来た。」

と一息ついて、カーナビをセットした。あらかじめ登録していたらしい。九十九里浜って書いてあった。

「あ〜っ、なるほど。しいて言えば、人気の無いルートね。東金道っていう高速道路通って行くところ。」

再び、怒った顔して、

「人気のないところって何よ。確かにそうだけど、その方が人が少ないでしょ。顔差されるよりいい。」

業界用語を使うようになったと思った。顔差されるって俺もバラエティー番組で顔バレすることだと聞いた。
ナビ通り走って行くと、7時過ぎだにお台場を出発したにも関わらず、浦安出口はすでに出口側道に車が並んでいたけど、渋滞に巻き込まれることは無かった。
ミミの運転は上手かった。スピード違反で捕まったらニュースに出るレベルの人だから、気を付けながら走った。ずいぶん走ったけど、話をしながら走っている為、成田空港を超えた佐原サービスエリアに入るようミミに言った。ちょっと気になったのでミミにはトイレに行きたいと言って、サービスエリアのトイレに近いところに駐車してもらった。ついでにミネラルウォーターも欲しいと言ったので、買うように売店を回る。
実は千葉北インターから気になる車がいると気付いた。これは自分の勘なのだが、一定の距離を保ちながら付いて来るミニバンが居た。男女ペアに偽装しているが、確実に尾行車だ。バックミラーを動かして何回か確認したらミミが、

「気のせいよ。カップルじゃない。たまたまよ。」

といつもなら慎重なミミは都内を脱出し、車もまばらなとこに来たので気を抜いている。
ヤスが売店に行ったら、尾行車と思われる男女の女の方がトイレに入って行った。ヤスはミネラルウォーターを2本買ってコンビニ袋に入れトイレに回る。赤いミニバンだから目立つ。
男性がミミの方を見ている。女性の方は、トイレでヤスを注視していないので、そのまま男を注意しながら尾行車の後ろに回った。
〝わナンバー〟のレンタカーだったので、隣の車から隠れながら覗き込む。運転席から何度もミミの方に望遠レンズ付きのカメラを向け、シャッターを切っていた。多分俺がトイレから帰って来るチャンスを狙うつもりなのだろう。
写真週刊誌だとしても俺が一般人だから、何のネタにもならないか調べたのか、撮ってから調べるのか知らないが、どっちにしろ面倒だ。
ミミには、刺青はもちろん元ヤクザと話してあるが、写真撮られて元ヤクザが彼氏だと週刊誌に書かれたら、反社では無いにしろイメージがあるのでミミが芸能界で干されるのは、これまで何人か同じシチュエーションで見て来たので明らかである。
こんな日はいつか来ると思っていたけど、2回目のデートでマークされるとは流石は超有名女優になった証拠だ。
いずれにしろミミと一緒に写真撮れられる訳にはいかないので、ここは尾行者に正体を明かして今日撮ったデータは削除してもらって退散してもらおう。
話している間にミミが何かあったと思うので、ミミに電話して尾行者だった事と、ヤスの身分を紹介して来るから安心して、こっちに来ないでと伝えることにした。
うわ〜っ、もうミミに隠しきれない。というか、言おうと思っていたけど、言うタイミングを逃してしまったのと、嘘を言ってたことに後ろめたさがある。
せっかく楽しいドライブなのに告白の日になると思う。
仕方ないので、取り掛かるとする。
後ろから、運転手に声を掛ける。相手もびっくりする。外へ出て来てもらう。女性も駆け足で戻って来たところで驚いている。

「すいません。こっちへ来てください。」

とヤスが言うと素直に来た。運転手に

「誰の写真を撮ってるんですか?」

と普通に聞いた。すると、とぼけて、

「すいませんが、どちら様ですか?」

と切り返して来た。慣れてなるんと思ったらので少し強く

「こっちが聞いてんだよ。誰、撮ってんだよ。」

と運転席に置いたカメラを指差した。

「誰も撮ってませんよ。」

と開き直るし、隣の女子は腕組みし始めた。

「じゃー、見せてみろ。再生しろよ。」

デジカメ一眼レフの望遠レンズ付きのカメラを指さす。
押し問答になるのは分かっていたので、カメラを取り、再生モードにして見せた。やっぱりミミが写っていた。女の方が、そっとスマホを出して動画モードで撮影していた。
ヤスは自分の電話を取り、ミミに電話してやっぱ尾行されてたから、こっち来るなと言って切った。心配そうに、チラッとこっちを見た。ヤスは男に対して

「これはどういうことだ。」

と言いながら、女の方に

「動画を止めろ!」

と言ったら、男の方は、

「今井ミミさんですよね。おたくはどちら様ですか。芸能関係の方ですか?完全に彼氏ですよね。」

女は動画を辞めず、男は矢継ぎ早に聞いて来た。

「彼氏だけど一般人だから、何のネタにもなんねーよ。」

とヤスが言うと男が、

「どう見たって一般の方とは思えませんが・・・。」

と男が意味深に言う。ヤスが

「今日のデータ全部消してもらうからな。あとあんたも動画停止して削除することになる。」

と両方に言うと、男が

「ほら出た。これはスクープになりそうだ。」

と男が笑顔になる。ヤスが

「どんなスクープだ。一般人ではネタにならないだろう?ってか、肖像権の侵害でネタにはならない。」

とヤスが言うと男が

「確かにあたなには肖像権ありますが、ミミさんは芸能人です。あなただけモザイクで何者かをスクープしますよ!」

と強気で男が来る。ヤスがもう仕方ないと女性の方に動画を止めろと言っても止めないで

「私は、こう言うものだ。動画を止め削除しないと逮捕しないといけなくなるけど大丈夫かな。あと、任務中なので公務執行妨害も付けて、お2人とも逮捕することになりますが、いいですか?」

と手帳を所属から階級まで見せる。顔と手帳を交互に見せながら、女は一旦動画を停止する。男が

「えっ、どういうことですか?任務中とは・・・。しかも、諜報捜査と言えば海外からのスパイとかそう言った感じの・・」

と言うと観念したような腑に落ちないようなスクープを逃したのか、スクープなのか分からず、データは一旦削除した。
女も鳩に豆鉄砲みたいな顔をして仕方無しにデータを削除した。ヤスは全データを確認し、先にサービスエリアを出ろと指示した。男が出て行く前にヤスに

「社にこの話を持ち帰り調べることになりますが、どうせ、トップダウンでストップ掛けるんでしょうね。」

ヤスは笑いながら

「よろしくお願いします!」

と軽く会釈した。駆け足でミミの車に帰ったら、ミミは運転席のリクライニングシートを倒して寝ていた。寝かせておきたかったが、1時間を無駄にしたのでミミに声を掛けた。

「ミミ!ミミ!」

と2回言っても起きない為、次は、

「今井ミミさん、本番です。よろしくお願いしまーす!」

と大きめな声で言うと、慌てて起きて

「えっ、何?何?夢見てた。撮影中寝てて起こされた夢リンクした。あっ、尾行の人たち、どうだった?ごめんね。ヤスいつも迷惑かけて。あの人たちしつこいからどうやって追い払ったの?」

きょろきょろして、さっき尾行者の車がいたところを見たり回りを見る。

「ミミ、ちょうど今日は会って2回目。でも、あの合宿免許から1年以上経っている。ちゃんと付き合ってるのはどの辺からかお互い分かんないと思うけど、ミミは先に隠し事はよくないと思うからって自分が芸能人になっちゃったって言ったよね。あの時、俺に隠しててごめんって言ってくれた。でも今、俺もこのままじゃミミに嘘言ってるって思って・・。」

「えっ、どういうこと?」

ってすぐミミが言う。

「ミミはさぁ、写真誌に俺と撮られたら元ヤクザって必ずバレるからと思っている筈。俺もミミが有名になったと同時にミミの為に離れないと・・と思ったけど、転機があったんだ。」

「なになに、ドキドキするんだけど、確かにヤスと撮られバレたら、どうなるか。めっちゃ考えた時期あった。でも、こうやってドライブしてるでしょ。私、開き直ったの。別にそのくらいで人気が落ちたらその程度なんだろうって。」

やっぱ、ミミは考えていたんだ。

「うわーっ、ミミって優しいな。ってか、元ヤクザと付き合っている人気女優って、あっ、それで人気下がるんかな。元ヤクザと付き合っている有名女優ってレッテル貼られちゃうの?それも嫌でしょ。そんなことやっぱ考えるよなぁ〜。でもね、ミミ。俺、なんか知らんけどミミが女優で人気を上げようと頑張ってる時に訓練受けてこんなことになっちゃったんだ。」

ミミに手帳を渡す。開けて隅々まで見るミミ。途中でえーっ!って大きな声を出す。

「何これ!トレーラーの運転手じゃないの?しかも、これ警視って。確か署長クラスの階級だと何かで聞いた。えーっ!まじで、すごいすごい!私も隠し事していたけど、これもそうね。これって嘘でも偽物でもないよね?」

ミミは、はしゃいでるのか何だか分かんないが、驚いていた。

「今まで嘘言ってて黙っててごめん。」

続けて、

「さっきの写真誌、肖像権の侵害、もしくは公務執行妨害で逮捕できると言ったら逃げて行った。」

ミミは

「きゃー!かっこいい!」

って言いながら、抱きついて来る。ヤスが言う。

「ミミに関しては、マスコミにリークしとく。俺とのツーショットは外に出さないようにしとくから。一応、俺政府の機関の捜査官だから公にできないから。」

ミミが、

「喜んで良いんだか何だか分かんない・・。」

ヤスが

「公にはならないと言うことは、例えば、その辺でデートしてて誰かに写メ撮られても誰?それで、ストップ。SNSでも圧力掛けるから俺との写真をアップして内藤靖って元ヤクザじゃんとか記事出てもすぐ削除されるし、無かったことになる。」

ミミが

「それは助かるけど、いつか例えば結婚んとかしたら?」

「その時はちゃんと公人としてミミが恥ずかしくない地位を公表する。」

ヤスが続けて

「あれ、逆プロポーズですか今の?」

ミミが目を見て

「うーん、私はヤスにプロポーズしてほしいよ。」

そうか、もうそんなことまで考えて良いのかと自分で思った。
元ヤクザの障害がなければ親にだって堂々と紹介できるもんな。とりあえず、

「考えておく。」

「えーっ、そうなんだ。でも、こんな田舎で車の中で指輪もないし。あの跪いて指輪をパカッとかベタだけど憧れる。」

と両手を握りながら天を仰ぐ。

「でも、マスコミ騒がないか心配。もしそういうのあっても答えられませんって言っとくね。だって、彼氏がいることは言ったって芸能人じゃなきゃニュースにもなんない。一般人ですって言う。」

とミミが言う。それで大丈夫と思う。警察官とか公人とかニュースになると思うけど、世間が興味ないのでネタにもならないから大丈夫だろう。ミミが少し心配な声で

「ヤスに今日最初会った時に気が付いたけど、顔怪我してるし無理しているのかなって思ちゃう。心配だよ。」

「あっ、これ?確かに戦いはあったけど、こんな元気だし、これからも無理しないで頑張る。」

「何かあったらミミも車で飛んで行くからね。あっ!ねぇねぇ、やすのトレーラーが見たい!だって、それに乗るために2人は会ったから・・・。」

「うーん、分かった。日曜日だから誰もいないと思うから寄ってみよう。」

とヤスが言うとミミは社長さんに会ってみたいな。
えっ?とヤスは思った。多分、ヤスに何かあったときに連絡するとこ全くないから・・・ってか、俺もミミに何かあったらどうすればいいか・・。そう考えているとミミが

「似たようなこと考えてなかった?ミミと連絡取れなくなったらどうこに連絡すればいいかとか。」

ヤスが

「当たり!トレーラー見せるけど社長いなかったらごめん。名刺パクってくるから渡す。あっ、そういえば俺の捜査官の名刺あるよ。」

ミミがすでに佐原のパーキング出て出発してだいぶしてから言った。
あとで渡すことにした。相方のアルフレッドのことも話す。もう何でも出来るし、何でも知ってるからアルフレッドに聞けば言えるものは教えてくれると話した。
もうこれでミミと隠し事は全て無くなった。ミミは部屋の鍵のスペアとマネージャー紹介するって言った。多分びっくりするだろうなぁ〜と言っていた。
高速道路の最終インター〝潮来(いたこ)〟まで来たので、なんとなく左に折れて、海が見える方向へ向かう。
鉾田(ほこた)まで来たとこで、ものすごい風で海は見えたけど飛ばされそうな暴風だった。食堂があった。2人で食事を摂ろうと言うことになったので、貝汁定食と書いてある看板の店に入った。
お客さんが2組ぐらい家族連れがいた。さっきの顔バレしてもいいよねって話から変装もしないで堂々と2人で入って行った。おばちゃんがメニューと水を持って来て注文を聞いて来た。
あさり定食とはまぐり定食にした。普通のとんかつやからあげとかもあったが、せっかく鉾田まで来たのでと海を味わいたかった。2人で海を歩いて散歩しようと思ったけど、目に砂が入るぐらいの風だったので断念。
大きいはまぐりの入った大ぶりの丼にみそ系のスープ、あさり汁は新鮮なあさり汁だった。付け足しの漬物と小魚も凄く美味しかった。
2人とも満足で満腹になった。満足感いっぱいで穏やかな時間を過ごしていたところに、子供が近づいて来ていた。子供って正直なんだと思った。

「マーマ!このお姉ちゃんテレビに出てる人〜!」

って言って指をミミに向けていた。お母さんも多分皆んな知ってて黙っててくれたのか

「こうちゃん、お姉ちゃんたちの邪魔しちゃダメだよ。」

と言い加えて

「すみません。」

と丁寧にお辞儀する。ミミは

「こうちゃんって言うんだ。何歳?」

と聞く。

「4才!」

とだけ言ってミミが

「大きいんだね。」

って言って、頭をなでなでする。男の子はめっちゃ喜んでママに報告する。ママが

「ありがとうございます。すみません。今井ミミさんですよね。よろしければ家族で写真ってだめですか?」

って俺の方も見ながら言う。ミミはすぐ

「全然、良いですよー。じゃあ皆んなで写真撮ろうか。こうちゃん。」

とめちゃくちゃサービスしてあげる。
予想通りもう1組とも写真を撮ることになり店にまでサインと写真を撮った。2組で良かったと思った。
ミミは終始ニコニコして全然嫌がらずに受けていた。帰りにお店の人はお代は要りませんと言ったが、そこはちゃんと商売なんで甘えずに払って出た。ミミに聞いた

「いつもこんな感じになるけど、嫌ではないんだ?」

するとミミは

「急いでる時とか、同じ人が何回もとか、ほら空気読めない人みたいなのは嫌だね。今日はヤスが嫌じゃないか気になった。」

「えっ、俺は大丈夫だよ。マネージャーかなんかスタッフさんと思っているのかな。彼氏ですって言ったって、そうなんですかぁ〜って言われるだろうね。むしろミミが有名なんで嬉しいよ。国民的女優とか言われてて鼻が高いし。」

ミミは

「やったー!そう言ってほしかった。鼻が高いって。自慢の彼女だって!嬉しい!」

と言いながら、ナビは晴海運送にセットしてあった。
海は残念でもトレーラーが楽しみって言って少しスピードが上がっていた。ミミが

「そう言えば、さっき最近の事件を検索したの。何日か前にあった千葉の茂原の事件、もしかしヤスじゃない?一時捜査員は監禁されたが、その後自ら脱出し犯人を制圧したって書いてあったよ。そうじゃないの?」

ヤスは別に隠すことでもないと思い、

「ああ、ボルボ君が助けてくれたんだよ。」

とヤスは事件の経緯を話した。するとミミは、

「ボルボ君凄いんだね。ヤスの相棒なんだね。」

と興味津々に言う。意外と早く帰って来たので渋滞にハマらなかった。

「晴海」のインター降りたら左折してすぐだ。助手席から会社見たら社長が会社の前で自慢の旧車いすずベレットを洗車していた。
たまたま社長がいたので、先に降りて「手招きしたら来てね!」って言った。ミミの車を降り、社長に

「社長!お疲れ様です。おっ、ベレット久々見ます。」

と言った。社長は驚いてきょろきょろ。何で来たんだ?と、

「あー、彼女と車で来ました。」

とレンジローバーに指差して手招きした。

「お前いつの間に彼女作ったんだ。知らなかったなぁ〜。」

と洗車を続けているとミミが

「初めまして、今井ミミです、よろしくお願いします。」

と言ったら、

「わはは、今井ミミって冗談言える女なんだなぁ〜!」

と振り返ってみたら本物が居て、わーっと声を出す。ミミが

「社長、私お化けじゃありません。」

って笑った。ヤスが成り行きをちゃんと説明する。すると社長も真剣な顔をして

「マスコミが元ヤクザってことで騒ぎ出すから捜査隊の方で何とかするよ様に言っとくから、その代わり別れるなんてできないよ。いいの?」

ヤスが

「もう全部話してミミも納得済みです。よろしくお願いします。」

ミミも一緒に

「よろしくお願いします。」

矢崎は

「危険もあるし、心配な時は俺に連絡すれば良い!」

と言った、

「今日はミミちゃん会わせにきたのか?」

と矢崎が言うのでヤスが

「ミミが俺のボルボトレーラー見たいんだって。」

矢﨑は、

「おーっ、そうか。これだこれだ!今、キー持って来るから。」

すぐヤスが

「あーっ、スペアありますよー。自分のだもんあるわ。」

「あっ、そうか。それより、先にミミちゃんと写真撮っていいかなー?ヤス?」

ヤスが

「ミミが良ければどうぞ!」

「やったー!嫁に自慢できるわぁー。」

と矢﨑はミミと並んでヤスにiphoneを渡した。ベレットも入れて撮ったりした。機嫌が良くなり矢﨑は、

「一号車、40フィートのコンテナ繋いであるけど、引っ張っても空だから2人で乗ってこいよ。」

ヤスは空コン繋いであるんだ。有明埠頭にでも回って来るか。とミミを助手席に案内して乗せてシートベルトさせた。スターターを入れエンジンを掛け、暖気の間に色々車内を説明した。武装してるのも言ったらミミは

「何これ?もう家じゃん。ロフト付きの家みたい。テレビはあるし、リクライニングベットや大型テレビ、コーヒーメーカーとか凄い。」

暖気運転中にミミはシートベルトを外し、後ろのベットに寝転がったり、天井高ーい!って立ってみたりした。急に大型テレビが点いて、前回写したユーチューバーのナンシーの画像が出た。
芸能人なら皆んな嫌いな筈。ミミは

「ヤス、ナンシー見てるんだぁ〜!芸能界興味あるじゃん。私のことだって嘘ばっかだけど、共演の男優とデートしてたとか、ありもしない事言ってるんだからー。」

ヤスは、実は捜査対象者に入っていて、何か鍵を握ってるんだ。ミミは、助手席に座ってシートベルトをした。

「ナンシー、早く捕まえてね。特に私はヤスのこと暴露されても本当だから耐えるけど。でも、捜査官なのが分かったら止めると思う。」

まぁ、いずれにしろ近いうちに関係者には接触する。
ボルボをスタートさせた。蛇みたいに動くところや大きい事、上からの眺めが最高なこと、コンテナ繋がってると内輪差で大回りしないといけないことなど、興味ありげにモニターなど見てた。バックで車庫入れをして見せた。ミミが

「ハンドル逆に切るんだね。」

ミミは凄い凄いとボルボが気に入ったのか目が輝いていた。

「まるでスネークオペレーターね!」

ほう、蛇を操る人って感じか・・・。
会社の車庫に着いた。ミミが

「あんな狭いとこしかも、こんな長いの入れるの?凄いよね。あれ、何か人が増えてるよ。」

社長がすぐ会社のラインで今井ミミが来てるって言ったんだろ・・・。
バックで1回で入れるつもりが2回切り返してしまったが、それでも前より上手くなった。
助手席からミミを降ろすと、運転手仲間の春山(3号車)や竹田(4号車)、沖田(2号車)までも来てた。
中でも竹田はアイドル好きだけど、今井ミミは好きと言っていた。
面倒だけど、ミミにお願いした。気持ち良く

「ヤスの会社の人なら、喜んで!」

って言って写メやサインに応じた。
春山は葛西臨海公園の動画をXで見つけて俺が発見されたとミミに教えた。ミミは春山に

「すごい!」

と言った。ほんの一瞬だったのに発見されるなんて。
ヤスとミミは皆んなに挨拶して車に乗り込み一旦車を出した。

「会社の人たち、皆んな良い人ばっかりだね。ヤスが羨ましいな。」

とミミは言った。

芸能界は足の引っ張り合いだし、新人は挨拶回りしなきゃいけないし、なんせ大変というような事を聞いた。
ミミが今日は時間があると言ってたので、この際、基地にも行こうと考えた。自分の部屋もあるし、ミミに聞いたら是非行ってみたいと言った。
エリー様が居るかどうか分からないがアルは居るだろう。
予め連絡はしないで行こうと追跡があるかも知れないので、湾岸警察署の入り口から入った。ミミは

「警察署の中にあるの?」

と怪訝な顔をしたが、地下に入ると

「わぁ〜!」

と高級車両が並んだ様子に驚いていた。
空いてる駐車場に停めて車を降りてついて来た。
指紋認証のドアを開けて中に入って行くと、ミミも

「本当、基地ね。」

とほとんど人とすれ違ったことなかった。いつもの打ち合わせ室に行ってみる。アルが自分の車、ベンツのゲレンデを何か改造していた。アルが気付いて、女性を連れて来ているので、回りをきょろきょろした。特に女人禁制ではないが、誰だろう?とこっちへ来た。

「おっおおーっ!こんにちは。アルフレッド中渡瀬と言います。ヤスの同僚です。」

と挨拶した。めちゃくちゃ喜んでいる。ヤスが

「1番信頼している仲間で、何でも機械のことなら任せられるし、安心できる仲間だよ、ミミ。」

するとミミも

「今井ミミです。よろしくお願いします。」

と挨拶した。

「この前、ヤスにファンだから連れて来てよって言ったことあるんだけど、本当に連れて来るとは思っていませんでした。本物ですよね?」

と笑って言う。ミミは

「本物です。よろしくお願いします。」

と笑って言った。続けて

「 アルフレットさん、日本語上手いですね。」

って言ったので、ヤスが笑った。

「今日は、エリー様来ないよ。明日まで海外とか言ってた。ほら、今週あたり忙しくなると思うから。」

「そうなんだ、ありがとう。アル、今度また改めて一緒にエリー様に挨拶に来る。今日は部屋寄って帰る。」

「了解。ミミちゃんまた改めてだね。よろしく!」

とアルが言うと、ヤスが手を引いて部屋を出た。ミミは、会釈して一緒に出た。

「大きくて優しそうな人だねヤス。アルさん仲良いんだね。」

と言った。まぁ、仲良いよなー。
アル居ないと死んでたこと何回もあった。ヤスは自分の部屋を紹介した。
豊洲の部屋の3倍ぐらいの広さがある。ホテル並みに清掃も入るし、アメニティもある。ミミが

「何よこれー!今日一びっくりした。あっ、今日は正体バラしたから、それを数えれば2番目か。」

ミミがはしゃいで走り回る。ベットもキングサイズだ、いつものやつやる。バタンと倒れ込む。仰向けに転がり、ヤス!って前にならえみたいに抱っこを求む。

「やっと、2人になれたと言うか、ゆっくりできるね。運転してたし・・。」

とヤスが言うと、ミミは何も言わずに口づけをしてきた。
超長く続いた。焦らないよう、今日はゆっくり話しながら、また前進しようと思う・・・。何回もキスは続く。

(つづく)

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