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小須戸ARTプロジェクト 小さな町のアーティストインレジデンスのお話

小須戸ARTプロジェクトは、新潟市秋葉区小須戸地域で開催しているアートプロジェクトです。年に数名の作家が地域を訪れ、地域資源を活かした現代アート作品の制作・展示を行う取り組みです。

プロジェクトを始めたきっかけ

2012年、新潟市で「水と土の芸術祭」が開催されました。
プロジェクトを始めたきっかけは、この時にアーティストが地域を訪れ、作品展示を行ったことです。

当時、小須戸地域では空き家となっていた町屋「薩摩屋」を公開し、町屋の見学ができるイベントスペースとして活用する取り組みが始まっていました。そこに、水と土の芸術祭事務局からのアーティストの紹介と、作品展示の打診があったのです。

町屋ギャラリー薩摩屋外観

2012年の水と土の芸術祭の際に薩摩屋で展示を行った南条嘉毅さんは、展示直前まで薩摩屋に寝泊まりをしながら作品の制作・設営を行っていきました。

薩摩屋に滞在しながら作品の制作・展示を行った南条さん
水と土の芸術祭2012で薩摩屋に展示された南条嘉毅「砂利船」 撮影:風間源一郎

当時、地域では「町屋ギャラリー薩摩屋」の活用方法を模索していました。その中で、下記のような条件が揃っていたことから、小須戸地域でAIR事業ができるのではないかと考え、プロジェクトの立ち上げに至りました。

  • アーティストが滞在して作品の制作や展示ができる場所・環境がある

  • 小須戸地域やその周辺に町屋を含む様々な地域資源がある

  • 同じ区内の新津美術館等の文化施設との連携を検討していた

翌年の2013年には、薩摩屋を活用するためのプロジェクトとして開始、2014年以降は「小須戸ARTプロジェクト」として、薩摩屋だけでなく周辺の町屋や店舗、空き家なども会場として活用してきました。

小須戸ARTプロジェクト2014フライヤー

参加アーティストは毎年公募で決定し、アーティストは地域に滞在しながら作品の制作・展示を行います。このような取り組みはアーティスト・イン・レジデンス(Artist in residence)と呼ばれます。

2013年これまでに20名以上のアーティストが地域を訪れ、それぞれの視点で地域資源を活かした多様な現代アート作品を展示してきました。

どのような作品が制作・展示されたのか、ご興味ありましたら、こちらの動画をご覧ください。


アーティスト・イン・レジデンス(Artist in residence)

アーティスト・イン・レジデンス(以下、AIR)とは、招聘されたアーティストがある土地に滞在し、作品の制作やリサーチ活動を行うことや、それを支援する制度のことを言います。

アーティストにとってはより良い環境での創作、異なる国や地域の文化に触れて創作への刺激を得る、活動実績の獲得などのメリットが、地域にとっては、アーティストとの交流を通した地域資源の再発見や創造的プロセスの体験、それらを含めた地域文化振興などのメリットが期待されて実施されます。

AIRに期待される成果・効果のイメージ

世界各国はもちろん、日本でも全国各地で様々な手法・目的でAIR事業が実施されています。興味のある方は下記webサイトなどをご覧ください。


小須戸ARTプロジェクトと町屋ラボ

町屋ラボは、2018年に小須戸ARTプロジェクトのアーティストの滞在拠点兼制作スペースとして整備、公開しました。

2013年から2018年のプロジェクトでは「町屋ギャラリー薩摩屋」をアーティストの滞在拠点としていました。しかし、週末の開館日の制作環境に制限が出てしまうことや、古くて使えない設備(風呂など)といった課題もあり、その後のプロジェクトの継続に向けて、アーティストがより制作に専念できる環境の構築が望まれていました。同時に、空き家が増え続ける地域の状況に対して、新たな空き家の活用という一手を打ちたいという考えもありました。

町屋ギャラリー薩摩屋でのAIRの様子(2015年)

こうした経緯もあり、2018年のプロジェクトの一環で、新たに空き家となっていた建物をアーティストと協働でリノベーションし、町屋ラボとして公開・活用することになりました。2019年からは、町屋ラボを滞在拠点として、小須戸ARTプロジェクトを実施しています。

町屋ラボでのAIRの様子、アーティストの制作スペースとして(2019年)
町屋ラボでのAIRの様子 制作だけでなく展示の場としても活用します(2019年)

町屋ラボのリノベーションに至った経緯やその過程についてはこちらから。

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