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ザ・ドキュメント・オブ・共通テスト国語第1回(評論)~大学受験生応援コラム1月

今回は問2と問5を少し


’** 0 はじめに ***

当コラムに目を留めていただき、ありがとうございます。大学受験国語の勉強に役立ててもらうことを目的にしたためている記事です(不定期更新なのが玉にキズです)。

世間では共通テストも終わり、私立や国公立二次試験に向けての勉強が本格化するタイミングです。一方、講師業にある者は今回の共通テストを自分でも解いたり分析したりする時期でもあります。私も例外なくそうしています。

共通テストは各講師にとって、必ずしも直ちに分析しなくてはならない類のものではありません。なぜなら、分析を必要とするのは今の受験生ではないからです。今の高校2年生、あるいは残念ながら再チャレンジが確定してしまった現受験生が必要とするのであって、目下の受験生の関心はもはやテストの内容にはありません(興味があるのは点数だけです。もちろんこれは当然のことです)。それにおおまかな分析は、大手予備校さんが既に終えています。現代文は昨年並み、古典はやや難化、らしいですよ。知らんけど。

さて、講師の端くれである私ですが、予備校さんと同じことをやってもしょうがない。でも、問題は解きます。従来は「受験生はどこで引っかかるか」とか「設問ごとの難易度の予測」とか、そういったことを考えながら解いていました。しかし今回は、一応講師である自分が、どんな過程を経て問題を解くか、文章化してみようと思い立ちました。「アタマの中、大解剖」みたいな感じです。

通常のブログ記事は、読解解答したうえで、決めているテーマに沿って書き進めます。当然編集が入るし、解いた過程をそのまま文章にするわけではありません。テーマに関係ない話は割愛するし、考えた順番通りに情報を提示するわけでもありません。しかし今回の「ドキュメント」シリーズでは、ほぼ考えた順番、目を通した順番に忠実に文章化しています。

ただこれが結構エライことで…実はこれを書いている時点で、今日の本編は執筆が終わっているのですが、解くのに要した時間は数分なのに文章にするとやっぱり随分長くなるんですよね。現時点で長文化・大シリーズ化確定です。もしかしたら、現代文だけ全部やっておしまい、とか、そういう事態もあり得るなと今は思っています。

まあでも、やってみます。未来の受験生の方には、講師ってのはこんなことをやっているのねという、一つのサンプルとして読んでもらえればと思っています。前書きが長くなりましたが、始めていきます。

’**1 大問1問2を解く ***

まずは本文を眺めると、1〜3段落、4〜6段落、7〜8段落、9〜10段落と4つに分割されている。そして傍線部Aは5段落、2つめのかたまりの中にある。

傍線部Aは「これが典礼なのか、音楽なのか」で始まる。「これ」が何を指すかがとりあえず問題だ。シュッと視線を前に戻すと、冒頭の一文が目についた。モーツァルトの命日に大聖堂で彼の「レクイエム」という曲が演奏されたとある。さらに第二文には、この行事は追悼ミサだったと書いてある。「これ」の指示内容は「モーツァルトの命日に『レクイエム』を演奏した追悼ミサ」で確定でよかろう。

ここで問2の問題を確認しよう。A「ミサなのか演奏会なのかは微妙」について、何故ですかと問うている理由説明の問題か。選択肢はどれも途中に「が」という逆接の接続助詞が入っている。気になるのは「典礼」という語が、①だけ「が」の前だが後は「が」の後ろ。選択肢の検討は①を先にするか後にするか。でもこれで①が正解だったら簡単すぎるわな。①は後回しかな。

ついでなので、他の問題も眺めておく。問6が共通テストお得意の「真面目な生徒が本文を踏まえて自主勉強しました」系のやつ。設問を見る限り、「作品鑑賞のあり方」がテーマらしい。これは頭に置いて文章を読んでおいた方がいいな。

で、眼が滑って飛ばしていたが、問5。文章構成の問題か。選択肢①で第1〜3段落が問題になっている。あ~、読み飛ばせないか。しかしこれは問2を片づけた後で、選択肢を先に見てから、書かれている通りの展開になっているかを確認すればいい。

さて、問2をやりますか。4〜6段落はちゃんと読みましょう。まずは4段落。全体的に音楽か典礼かという二項対立で済む話ではないと言っているが、「何よりも重要なのは」と断ってから書かれているこの部分。

「音楽vs.典礼といった図式的な二項関係の説明にはおさまりきれない複合的な性格をもった、…現代的問題」

何やら本文のテーマに触れていそうな書き方ではないですか。

しかもこれ、「複合的な性格」ってのは、音楽でもあるし典礼でもある。音楽=娯楽と、典礼=真面目な宗教儀式という、矛盾する性格を両方持っているという意味でしょうかね。取り敢えずそう考えておこう。

もしそうなら傍線部Aの「微妙」である理由は、両方の性格を併せ持つからだ、で決まりよね。

さて、Aの後は…おや、評論のお決まりの形「たしかに~が(逆接)」の形か。詳しい解説に入っている。この後の部分がどうやらAの理由説明と見てよさそう。

5段落を読んでいくと…Aの後は4文あるのだが、内容は

「宗教行事だが音楽イベントでもある」×3回繰り返し。先ほどの予測、どうやら当たりだな。

続く6段落は「そして」で始まり、

★ 音楽はもちろんのこと、典礼も含めた全てが作品化されている(そして映像パッケージとして発売された)。

という内容。

ここらで答えを出してみよう。取り敢えず①以外かな。クセでどうしても「が」の後を先に見てしまう。。。⑤が怪しい。「レクイエムは…典礼…である、…音楽として鑑賞することもでき」「さらには典礼全体を一つのイヴェントとして鑑賞する…」

今二か所引用したが、後ろの方が私は先に引っかかった。「さらには」という添加の表現はおそらく6段落冒頭の添加の接続詞「そして」の言い換え。だから「典礼全体~」は6段の内容(上で★をつけているところ)。ここまでくれば言うまでもないが、「さらには」の前は5段の内容。

これで答えは⑤ですね。

’** 2 おまけで問5の選択肢① ***

さて、今日の記事の最後に、さっき書いておいた問5の①を見ましょうか。1~3段落の説明をしているが、1が事例の提示、2と3が事例に対する対照的な見方の紹介とある。

さっと読んでみると、確かにそうなっている。3段落の冒頭が「それに対して」と対比を予告する接続表現になっているのも助かる。というわけで、この①は「適切」。なので、本問の答えではありません(本問は間違い探しなので注意)。

…と文章にすると結構長いですが、ここまでで数分です。

暫く問題を解きながら、その過程をこんなふうに綴ってみようと思います。何かの参考になればと願います。

あ、勿論、この土曜日から始めた過去問の原稿も目下ちゃんと書いていますよ(汗)。


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