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感想『レプリカたちの夜』一條太郎

一條太郎『レプリカたちの夜』の感想です。
読み進めるほど不思議で不可解な世界観に迷い込み、
つい一気に読んでしまうほど面白い一冊です。

こんな人に薦めたい・・・
▼ミステリーやファンタジー、SFが好き
▼不条理文学が好き
▼ちょっと変わった本が読みたい


『レプリカたちの夜』あらすじ

動物レプリカ工場に勤める往本は、夜中の十二時過ぎに動くシロクマを目撃します。シロクマは絶滅したはずの本物なのか、それとも産業スパイなのか。工場長は往本に「シロクマを殺せ」と命じますが、何かがおかしい。不可解な出来事、曖昧な記憶。そして行方不明の部長。往本は混沌と不条理の世界に迷い込んでいく…。

『レプリカたちの夜』感想・レビュー

1. 「ミステリーかどうかはどうでもいい」

この作品は、第二回新潮ミステリー大賞の受賞作です。
審査員だった伊坂幸太郎さん曰く「ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなぁ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています(引用)」とのこと。「ミステリーかどうかはどうでもいい」という言葉に惹かれて読んでみると、たしかにミステリーのような、SFのような、ファンタジーのような、ホラーのような…。
え?どういうこと?と思わず笑ってしまう、全く予期せぬ展開。ミステリーの枠を超えた独特の世界観に、ぐっと引き寄せられていきます。

2. 奇妙な登場人物

まるで「世にも奇妙な物語」のような、奇妙で不気味な世界。そしてそんな世界観を作っている一つが、登場人物です。一見普通に思われる登場人物ですが、読み進めるにつれてじわり、じわりと不気味さが滲みでてきます。

3. 「自我」と「記憶」

作品を通して何度も「自我」という言葉が登場します。人間の自我とは何か。人間の意識は、魂は、本体はどこにあるのか…。「それまで生きていた記憶。その積み重ねがあるから、その人がその人として存在していられるんじゃないかな(引用)」と言う主人公。そして人間の「記憶」の不確かさ。もし、記憶が無い、ということすら記憶に無かったとしたら。終盤では、そんなことを考えさせられます。

『レプリカたちの夜』感想まとめ

「ミステリーかどうかはどうでもいい」と言われた、新潮ミステリー大賞衝撃の受賞作。冒頭の一文「シロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった」が特に素敵です。まさに、不思議の国の入り口。人の魂はどこにあるのか、動物に自我はあるのか、人の記憶の曖昧さ…様々な思想や文化が語られながら、物語は複雑怪奇に進んでいきます。
不思議な世界に迷い込みたい時に、ぜひ読んでみてください。


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