リアルゲーム

「やっとこの日が来た。この日をどれだけ待ち侘びたことか」

11月23日、午前8時頃。今日はゲームの日ということもあり、東京ではゲームショーが行われる。9時からの入場にも関わらず、1時間前にはたくさんの行列ができていた。

その列の最前列に並ぶは、自分の好きなゲームキャラのシールやバッジが大量に貼ったリュックを背に立ち並ぶ男がいた。男は、新作のゲームを試遊できるとワクワクしていた。

「おーーい! ニトさん!」
遠方から大きな声が聞こえてきた。それは大学のサークル仲間であった。親しくなった理由もゲームもあって、勿論この会場に来ていた。

サークル仲間は、ダッシュで向かってきた。そして列に並んだ。ピロリン誰かからのLINEだ。
スマホをポケットから出し、見るとさっきのサークル仲間である。

『ニトさん早すぎですよ。いつから並んでんすか』

「3時間ぐらい前かな。でもオタくんもギリギリ整理券取れるといいよね」

オタくんを元気付けるよう返した。

『ここで逃しちゃおしまいですよ。この日をどれだけ待ち望んだか。前日24時間YouTubeやTwitterで出回る情報全て目に入れ、そして気づけば朝の7時、入場2時間前というギリギリ』

ニトくんはオタくんの長文は見るたび疲れた表情だ。なのでそっと一言「疲れたね😓」と返した。

そして時間は、ゲームショーが開催される9時。ニトくんは整理券を手に取りとうとう大門が開く。ニトくんは胸を踊らせた。

アナウンスで『お客様、走らずゆっくりご入場ください』の言葉を無視し、一目散に自分の試遊したいゲームブースへ向かった。

ニトくんはワクワク気分で、ゲームをプレイし回った。その後を遅れてやってきたは、ギリギリ整理券を手に入れたオタくんであった。

「はぁっはぁっ……ニトくん……どこ行ってたの。LINEしても全然繋がらないし。一緒に回るって言ったじゃん」

オタくんはニトくん探しに30分も使ってしまったのである。

「ごめんです。つい夢中になっちゃってオタくんのこと忘れてたです」

「タラちゃんはいいから、今から回りましょう」

オタくんは軽いツッコミを入れ、ニトくんを許した。

「オタくんはどこに行きたいの?」

「僕はね……あそこが気になるんですよ」

そう言い、オタくんが指を刺した方向は暗闇の部屋だった。あそこのブースは、ネット情報でも全く出回っておらず気になるブースであった。

オタくんは、走るように中に入りその後ろをニトくんは追いかけた。中に入ると真っ暗闇で何も見えない。しばらく歩くと光が見えてきた。

そこにはデカデカとモニターが貼ってあり、そこに映し出された少女が喋り出した。

『あなたはこの国を救ってくれる救世主様ですか? 我々の国は、悪の組織によって壊滅状態。どうか救世主様お助けください』

そこで映像がフェードアウトしていった。オタニトコンビは、ワクワクして見ていた。すると目の前に光が当てられた。そこにはゲーミングチェアとコントローラー、PCとゲームができますよの準備万端だ。

ニトオタくんはこれを見て、ありきたりのゲームだけど、女の子に頼まれちゃあしょうがない。そう思い、ゲーミングチェアに座り、ゲームをプレイした。

ゲーム内容は、ロボットを操作し母国を守り他国を制圧するというシンプルな内容である。

最新のゲームだけあって、操作感もよく映像も綺麗。何より攻撃が迫力があり、シンプルな内容とは思えないものだった。

2人は、完全にそのゲームに夢中になり気づけば試遊時間は終わっていた。満足した顔でそのブースを出ようとすると、突然アラームが鳴り、緊急事態発生の音がブース内に響き渡った。

「どっ……どうなってるんだ」

2人困惑気味にうろたえた。

するとモニターの映像が写し出され、また少女が喋り出した。

『また悪の組織が攻撃を仕掛けてきました。救世主様の力が必要です。どうか私の世界に入り、国を助けてください」

「助けるって……どうやって」

戸惑う2人の前に、突然光が照らされた。2人はある世界に飛ばされたのである。目をそっと開け、周囲を見渡すも何もない更地である。

「どうしよう〜〜、帰れなくなっちゃいましたよ〜〜。ニトくんと

オタくんは、泣きながらニトくんに抱きついた。それをニトくんは、振り払い遠くを指差した。

指の方向には山があり、そこには今とは少し違う古臭い村が見えるように感じた。

「多分この世界に入ったんだ。そして少女の言ってたことを成し遂げなければここから出れない」

「そういう事よ」

声が聞こえた、横にはさっきの少女が立っていた

「さあ、ゲームの幕開けよ」

始まってしまったのである。リアルゲームが。








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