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蘇る若葉21(小説)(エッセイ)とんぼ

コラム  
   「 いまはむかし、たけとりの翁といふものありけり。
     野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかひけり。 」

   竹取物語、暗記した記憶がある方も多いと思います。
   日本最古の物語文として平安時代から受け継がれ
   「かぐや姫」としても馴染み深いお話です。
   私は、竹を見かけると未だにかぐや姫を思い出します。
   (写真は先日散歩した神社で撮影した一枚です)
   日本人であれば、同じように連想される方も多いのではないかと
   思います。
   竹=かぐや姫です。
   お爺さん、お婆さんに大事に大事に育てられている
   かぐや姫が目に浮かびます。
   登場人物の5人の貴公子が結果ズルをしているものの
   なんとか姫と結婚したいという一心で悪戦苦闘する描写も
   面白くて好きです。
   作者不明の物語ですが、身近にあった竹や夜空にひかる月へ
   思いを馳せて筆を走らせてあったのでしょうか。
   
   では、想像してみませんか。
   平安時代よりもう少し、いえ、少しではありませんね。
   紀元前300年の豊浦宮での登場人物達と共に。
   若木神の詔(みことのり)が蘇る描写を思い浮かべてみてください。
 
🌿秋津先生の著書で、難しい漢字や言葉、興味を持った事などは
 辞書やネットなどで調べながらゆっくり読んでみて下さい。
 きっと新しい気づきがあり、より面白く読み進められると思います。

蘇る若葉 21
原作 秋津 廣行
  「 倭人王 」より

 阿津耳之命(あつみみのみこと)は、満足気に、その若芽が伸びた
一枚の若葉を、かしこねの姫神に差し上げた。
姫神は、水分をたっぷりと含んだ水苔(みずごけ)のごとき若葉を両の掌で受け止めると、その一枚の若葉からは、沢山の小さな若葉が芽生えていた。

 すると、そのひとつひとつが、天空に伸び、また、指と指に絡みついた細く白い根は大地に向かって伸びた。
あたりには、逞(たくましい)生命の香りが漂って
みなみなの心をとらえた。

 かしこね姫神は驚きもせず、満面に笑みを浮かべて、手にした若葉を
磐座(いわくら)に戻し、さらに、残り二枚の若葉をそえた。
すると、三枚の若葉は一体となりて、さらに多くの新芽が天空に向かい
幾筋もの根は大地に深く沈んだ。

阿津耳(あつみみ)は喜びのあまり

「おおっ、これは、まさに高天原は、若木神の詔(みことのり)なるぞ。
豊浦宮の行く末に、大いなる命の力を賜うた。
まさしく大儀のお許しを得ましたぞ。ありがたきかな。
早く、八潮男之神(やしおおのかみ)にもお見せしたいものよ。
潮(うしお)よ、お勤めご苦労でありました。」
                          
                             つづく 22



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