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スピードアップの時代

「タイパ」という言葉を、よく耳にするようになりました。いまさらではありますが、例の先生に聞いてみました。

「タイパ」とは、時間を効率的に使おうとする考え方。タイパを高めることで、限られた時間の中で、より多くのことを経験したり、より満足度の高いことを選んだりすることができます。タイパを重視する人は、動画を倍速で見たり、要点だけをまとめたサイトやサービスを利用したり、家事や仕事を効果的にこなすための家電やツールを活用したりします。タイパは、Z世代と呼ばれる若者たちが生み出した言葉ですが、現代社会では全世代にとって重要な考え方となっています。(ChatGPT)

なるほどね。

昔から、ある程度の速読をしていましたが、近年は動画に移っているのですね。ユーチューブを倍速で観ることができるのを知ったのは、つい最近のことでした。調べてみると、Abemaテレビも倍速で視聴できますし、Voicyも倍速対応しているようです。

全然知りませんでした。

使ってみると、たしかに便利です。よほど滑舌が悪くない限り、ほぼ聞き取れます。近年は「オーディオブック」の人気も、高まっていると聞きました。こちらも倍速で聴く人が増えているようです。

タイパなどと言うと、世知辛い印象がなくもないですが、聞き取れるのであれば、積極的に利用して何の問題もありません。

音声メディアのメリットは、2つあると思われます。

ひとつは他の作業をやりながら、並行して楽しめること。もうひとつは、速度を調節できること。便利です。そりゃ、流行るわけです。

念のため、こうした音声メディアの「タイパ」について、ChatGPTにお伺いを立てると、とても好意的な答えが返ってきました。
以下のメリットがあるそうです。

メリットについて

1.効率的な情報取得: 倍速で聴くことで、短い時間で多くの情報を得ることができます。これは特に時間が制約されている場合や、大量のコンテンツを処理する必要がある場合に役立ちます。

2.注意力の集中: 高速で聴くことは、注意力を高め、退屈や気晴らしを減少させる可能性があります。これにより、長時間の聴取が続く場合でも興味を持ち続けやすくなります。

3.聴覚処理の向上: 高速で聴くことは、聴覚処理を向上させるかもしれません。これは、通常よりも速い速度で情報を処理する必要があるためです。しかし、これには個人差があります。(ChatGPT)

もっとも、デメリットがないわけではありません。

倍速で聴くことで、理解度が下がったり、ストレスや疲労を引き起こすことがあるので、個人差はあれど、一定の注意が必要とのことでした。

要するに、過度のストレスにならないように、自分にあった速度で聴けば問題はないようです。

音声データは、いずれ倍速で聴くのが当たり前になるのかもしれません。是も非もありません。それが時代の流れです。

ただし、ひとつだけ例外があるのです。これだけは倍速にできないものがある。それは何か?

Mahler: Symphony No. 5 (Adagietto) / Rattle · Berliner Philharmoniker

上記の動画は、マーラーの交響曲第5番から「アダージェット」です。
ハープと弦楽器によって演奏される、とても美しい音楽です。大好きな曲です。作曲家は楽譜にこう書きました。

  Adagietto. Sehr langsam.
  アダージェット。 とてもゆっくりと。

18世紀以降の作曲家は、アレグロ、アンダンテ、アダージョといった、いわゆる「速度標語」を楽譜に記載します。楽曲が演奏される「スピード」が指定されるようになるのです。

こと音楽に関しては、倍速は不可能です。ゆっくり演奏するように作曲家が指定した楽曲を、演奏家がトップスピードで駆け抜けることはできません。

タイパ全盛の時代、あらゆるデータがスピード競争となり、猛烈な速度で消費されていくなかで、音楽だけは、そういった聴き方を断固拒絶します。面白いところです。

もっとも、1時間を超えるようなマーラーの交響曲を30分で聴いたところで、感動も何もありませんから、当たり前の話なんですけども。

音楽は倍速を許さない。音楽は偉大です。

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