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沈黙は癌のように

「声上げる大事さを痛感」と村上春樹さん
作家の村上春樹さん(74)は26日放送のラジオ番組「村上RADIO」で、「最近のジャニーズ問題の報道を見ていて、勇気を出して声を上げることの大事さを改めて痛感させられた」と旧ジャニーズ事務所の性加害問題に言及した。 (共同通信)

『愚か者よ、沈黙は癌のように広がるのだ』

そう歌ったのは、サイモン&ガーファンクルでした。『サウンド・オブ・サイレンス』という楽曲です。

この楽曲は、彼らのデビュー・アルバム『水曜の朝、午前3時』に、ひっそりと収録されました。1964年10月に発売されたこのデビュー・アルバムは当初、ほとんど売れなかったそうです。

ところが、ボストンのとある深夜番組のDJが、この楽曲をいたく気に入ります。自分の番組で流したところ、リクエストが押し寄せました。

ボストン近郊には、多くの大学があります。ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、タフツ大学、名門校ばかり。大学生が火をつけたのです。

これを見たレコード会社は、エレキギターなどを加えてシングル・カットします。これが爆発的に売れて、全米1位の大ヒットとなるのは、2年後の1966年でした。

The Sound of Silence

上記の動画の1分45秒あたり、こういう一節があります。

  "Fools", said I, "You do not know
  Silence like a cancer grows

  「愚か者よ」と私は言いました
  「あなたたちは知らないのです。
   沈黙は癌のように広がる事を」

先日、プロ野球チーム、楽天イーグルスで「パワハラ」が報道されました。

その前は宝塚歌劇団でも報道がありました。さらにはジャニーズで性加害が報じられ、世界的なニュースになりました。自衛隊の女性隊員への性被害もありました。

数え上げれば、きりがありません。

わたしたちは「正しいことをする」と「やり過ごす」、この2つの選択肢で迷い、悩みます。そして多くの場合、勝つのは後者でした。みんな黙ってような。我慢しような。やり過ごそうな。

そして、沈黙は癌のように増殖するのです。

この楽曲は、映画でも効果的に使われていました。

映画『卒業』ラストカット 

思いを寄せる女性が、別の男性と結婚することを知った主人公は、結婚式を襲撃します。教会を聞きだして、大声を上げます。「エレーン、エレーン」。

女性はそれに応えて、2人して式場を逃亡。バスに乗り込みます。
映画史に残る名シーンです。

動画を見ると分かるのですが、満面の笑みを浮かべた2人の顔は、表情が刻々と変化します。強奪された花嫁は、不安そうな表情で、となりを見るのです。そこには、笑顔が消えて、放心した表情の主人公がいる。
行先も分からないまま、バスは走り続けます。

声をあげることで、人生は変わります。逆に、声を上げなければ、人生は何も変わらない。しかし、声をあげることには、鋭い「痛み」が伴います。

「正しいこと」をした喜びは一瞬で、それに続くのは別の苦しみです。しかし、それでも声をあげねばなりません。

勇気を出そう。そして声を上げよう。

  「愚か者よ」と私は言いました
  「あなたたちは知らないのです。
   沈黙は癌のように広がる事を」

沈黙は破られる必要があります。

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