Will You Dance?
脚本家の山田太一さんがお亡くなりになりました。
山田太一さんのドラマが、大好きでした。
最も脂が乗りきっていたのは、80年代までだったでしょうか。後年は、小説に軸足を移されて、ドラマの本数は減りました。小説でも素晴らしい実績を残されました。
しかし、山田さんと言えば、やはりドラマです。
代表作「ふぞろいの林檎たち」をリアルタイムで観れたのは、幸せでした。金曜の夜が本当に楽しかった。
ドラマで描かれる就職活動や社会人生活は、非常にリアルで、大人の世界を垣間見るようでした。いずれ自分にも起こりうることなので、他人事とも思えません。食い入るように見てました。
残念ながら、手塚理美や石原真理子のような女性には、ご縁がありませんでしたけども。
山田さんの脚本は、問いかけるんです。
「ふぞろいの林檎たち」の全話のタイトルを、書きだしてみます。
タイトルがすべて「問いかけ」なんです。
「ふぞろいの林檎たち」はパート4まで製作されます。全47話、すべてのタイトルが「問いかけ」です。こんなドラマを書いた方を、ほかに知りません。
山田さんの「問いかけ」を自分なりに考えるのは、楽しくもあり、難しくもあり、ドラマは人生や哲学を教えてもらう学校のようでした。問いかけることの大切さ、考えることの重要さを教えてもらいました。
私と違って、本当にガチな山田太一ファンは『早春スケッチブック』という作品に衝撃を受けたと、口を揃えます。特に有名なのは、山崎努のセリフです。これが凄い。
「ありきたりなことをいうな。お前ら、骨の髄まで、ありきたりだ」
ひところ、脚本家のインタビューを見ると、もっとも印象に残るセリフとして、これを挙げる方がとても多かった。たしかに、神がかっています。
ユーチューブに映像がありました。
いや、凄いの一言です。
もうこんな脚本を書く人はいないです。そもそも、テレビ局がこういう骨太のドラマを求めてもいないですしね。脚本も凄いし、役者も凄い。なにか、とんでもないものを視聴者は見せられている。
この4分程度の動画は、山田太一の精髄です。
ユーチューブには「ふぞろいの林檎たち」のオープニングがありました。
こちらも貼っておきましょう。ご存じ、サザンです。
主題歌の「いとしのエリー」、言わずと知れた名曲です。
このドラマのために作曲されたわけではないのですが、リアルタイムで視聴した世代には、もはや楽曲とドラマが不可分の関係になってしまっています。この曲を聴くと、今でも気分は、金曜日の夜10時です。胸を躍らせてテレビにかじりついた、あの日にタイムスリップします。
こうしてみると、山田さんのドラマは、音楽も印象的でしたね。
代表作のひとつとされる『岸辺のアルバム』では、ジャニス・イアンが使われていました。『Will You Dance?』 これも素敵な曲です。最後、多摩川の堤防が決壊して家が流されるというシリアスなドラマなんですが、あえてこういう楽曲を使用した、当時の製作者のセンスが光ります。
実はジャニス・イアンには一度、会ったことがあるんです。
あまり知られていませんが、彼女は日本人の歌手に楽曲を提供することも多く、ソングライターとして来日しています。たまたま、ご縁があって、1メートルほどの至近距離でお目にかかることができました。
「あ、あの、ジャニス・イアンが目の前にいる…」と思うと、感激で倒れそうでした。この楽曲のイメージそのままでした。
ジャニスは、とてもとても小柄な女性でした。
小鳥のような方でした。
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