印象に残らなくとも
アンサング・ヒーローという言葉があります。
ヒーローとは「英雄」のことですね。(英雄として)称賛されない英雄、という意味です。日本語としては「縁の下の力持ち」がピッタリかもしれません。
先日、ゴールデン・グラブ賞の表彰式が開催されました。阪神タイガースからは坂本誠志郎捕手、大山悠輔内野手、中野拓夢内野手、木浪聖也内野手、近本光司外野手が表彰を受けました。5選手の表彰は、球団史上最多だとか。
つい最近まで、失策数ワーストを更新してきた球団とは思えません。立派なものです。ユーチューブに動画が上がっていたので、さっそく見てみました。
坂本選手のインタビューが素晴らしいものでした。感銘を受けました。
「シーズンで印象に残っている、ご自身のプレイを教えてください」という質問に坂本選手は、こう答えました。
坂本選手は、名門「履正社」から「明治大学」に進み、阪神に入団しました。キャリアから見ると、野球エリートです。高校でも大学でも「主将」を務めたそうです。キャプテンシーの塊のような選手でもあります。
外部からは、なかなかその素顔やキャプテンシーは見えにくいのですが、こうしたインタビューを聞くとやはり「ただものじゃないな」というのは分かります。
浮ついたところが全然ありません。
印象に残るプレイはいらない、そう言い切ってしまう潔さ。素敵です。印象に残るプレイと大事なプレイは違う。いや、まったく仰る通りです。
以前、阪神OBの赤星さんが亜細亜大学の先輩でもある、元中日の井端選手の守備について、こう語っていました。
「跳んだら凄い、みたいな風潮あるじゃないですか。ファインプレーと言うと。でも、井端さんは飛ばないで追いつくんですよ。事前にポジションを変えるんです。予測して。だから飛ばないんです」
本当の名手は、飛びついたりしないんだそうです。
普通に正面で取る。だから、素人には凄さが分からなかったりする。本当に凄い人は、凄く見えない。逆説的ですが、そういうことだそうです。
「印象に残らないプレイを正確に積み重ねることが大事だ」と「それがプロだ」と坂本選手は言います。心に刻みたい言葉です。
坂本選手、じつは阪神でもキャプテンになっています。2021年のシーズン終了後、選手間投票でキャプテンに選ばれました。しかし、そのシーズンの成績は、打率.185、1本塁打、6打点というものでした。
この選手、尋常じゃないです。キャプテンシーが服着て歩いてる。
アンサング・ヒーローにも程があります。
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