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縁がつなぐ奇妙な符合

先日久しぶりに、妹と会っておしゃべりをしていた。
妹には、ヒロくんという一人息子がいる。
私にとっての甥である。
小さかった甥もあっという間に大きくなって、
来年4月には社会人となる。

「ヒロくん、就職の内定もらえたんだって!」
妹が言った。

それはよかった!
ヒロくんは、長いことサークル活動に没頭するあまり、
就職活動で同級生からかなり遅れをとっていたらしい。
そのことは妹をとても心配させていた。
この子はちゃんと就職することができるんだろうか……。
言葉にはしないけれど、家族や親戚も皆心配していた。
私は、就職することだけが人生の全てではないと思っているので、
就職できなかったとしても、面白いことはいくらでもあるよと言ったけれど、
妹は、親としてそんな無責任なことは言えないよと不貞腐れていた。

そんなのんびり屋のヒロくんが、
ちゃっかりと就職先を見つけていたことに、私はとても驚いた。
しかし、私は妹が続けて言った言葉にさらに驚く。
「ヒロくんが内定をもらった会社、◯◯(会社名)だって」
私は持っていたマグカップを危うく落としそうになった。

その会社は、私が20歳の頃つきあっていた人が就職した会社だった。

私は秘密主義なところがあって、
つきあっている人のことや恋愛事情を家族に隠しておくタイプだった。
だからもちろん、妹は私のかつてつきあっていた人のことはおろか、
その人の就職先など知る由もない。
その人とは、就職を機に遠距離になってしまって、程なくして別れた。
だから、その人が今もその会社に勤めているかどうかは分からない。

この世の中に数多ある企業の中で、同じ企業だなんて……!
私は驚きを隠すのにとても苦労した。

この世界には今、約80億の人がいる。
もう途方もない数の人だ。
でも、本当に縁のある人というのは、ごく少数の人に限られているんだと思う。
人生の中で、本当に縁があってお互いに影響を与え合う人というのは
実は数えられるほどしかいないんじゃないだろうか。

当時つきあっていたその人とは、その後は一切会っていないし連絡先も知らない。
多分、もう二度と会うことはない人だ。
でもその人は、間違いなく私に影響を与え、そして今の私が形成されている。

縁ある人というのは時に妙な符合を見せる。
それは確率論で言うと、限りなく0%に近い確率で起こる。
そして、全く予想もしていなかった、とても意外なところで起こる。

縁というと、自分対相手の1対1のことばかり思いがちだけど、
私という媒体を通して他の人どうしを繋げることもあるのかもしれない。
もしかしたら、この先何度生まれ変わってもこの縁は続いていくのかもしれない。

そう思うと、出逢いというのは奇跡であり、
出会う人のことは大切にしようと誓ったのだった。


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