美しい人とは

近ごろ、私の周りでは顔のシミ取りやボトックスが流行っている。
いろいろと老化が気になる年齢に差し掛かってきたということと、
最近は美容を取り扱う病院が増えてきたこともあるんだろう。
近所の寂れていた内科も、
美容を扱うことによって患者数が激増しているのを見た。

え？　あなたもやっているの？
と驚くほど、高い確率でシミ取りをしている友人・知人に遭遇する。
一番高額を払っている人は、100万円だと言っていて本当にびっくりした。

私から見れば、
そんなに気になる？　私は全然気にならないけど……
と思う人がほとんどだ。
要は、自分が思っているほど人は気にしていないということだ。

中には確かにシミが濃い人もいる。
そんな人はシミ取りをすることで
人生が明るくなったり前向きになったりするんだったら、
それはそれでありだとは思う。

でも、私は最近、重大な事実を発見してしまった。

人の見た目年齢は、姿勢と歩き方に表れるのだ！

綺麗でいたい、若く見られたいと思うあまり、
人は細部ばかりについ気を取られがちである。
けれども、シミやシワを気にして
たとえそれを最新技術で取り除くことができたとしても、
姿勢が猫背であったり、足がガニ股になっていたり、
ズルズルと足を引きづるように歩いていたのでは、
本来、本人が希望している「若返り」には
到底辿り着くことはできないのである。

ミクロ（小さい）の視点で捉えてはいけない。
マクロ（大きい）の視点で全体像を捉えなければ、
実は大きなものを見落としてしまうということだ。

細部を気にするあまり、俯瞰ができていないと、
自分の全体像を目にする他人に、
チグハグな印象を与えてしまいかねない。
歩き方は老婆なのに、
近くで顔を見るとシワとシミを伸ばして精一杯若作りをしている人。
そんな人を見て、ギョッとすることがある。

そしてもうひとつ、とても重大なことは、
その全体的な美しさというのは、
お金では解決することはできないということである。

美しい姿勢や歩き方は、病院の施術や高額な美容商品では
決して手に入れることができない。
毎日の、体を鍛えるトレーニングと、健康的な食事、良質な睡眠によってしか
手に入れることはできない。
自身の日頃の努力と継続がカギとなる。
要するに、手軽にお金で解決することは許されないのである。

俯瞰する視点を失ってしまうと、
美に対する執着心ばかりが残ってしまう。
そうなると、もはや地獄である。
綺麗でいたいという気持ちはとても大事だとは思うが、
あまり行きすぎると、良くない。

本当に美しい人。
それは、ありのままの自分を知り、
適度に老いを受け入れつつ健康的な心身に努める、
自身の全体像を俯瞰できる人のことではないだろうか。