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ハプニングがあるほど思い出深い旅となる

明日から韓国旅行だというのに、
まだ全然準備に取り掛かれていない……。

昨夜、寝る直前になって突如不安が襲ってきた。
とりあえずパスポートの有効期限だけ確認して、眠りにつく。
そして、朝起きて先ほどから準備を始めたというわけである。

ネットでソウルの天気をチェックしてみる。
すると、つい先日まで快晴だった予報が、雨に変わっている。
雨か……。
雨となると、傘がいる。
予定も少し変更が必要になるかもしれない。

当たり前だけど、旅行は晴れていた方がうれしい。
行動範囲も広がるし、持ち物も少なくて済む。

でも不思議なことに、
過去の思い出深い旅行はすべて、雨や雪、酷暑など
一筋縄ではいかなかった旅ばかりである。

去年、母と一緒に西国三十三ヶ所巡礼の旅をしたとき、大雨に見舞われた。
お寺の縁側で、雨が小降りになるのを空を見上げながら待っていた。
その時、猫も雨宿りにやってきて、猫と一緒にぼんやりと雨が止むのを待った。
なぜか分からないけれど、その時の印象があまりに鮮烈なのである。
雨に煙る京都の街並み、お寺の屋根を叩く雨の音、
本堂の甍を途切れることなくサラサラと滑り落ちる雨、
雨飛沫を上げながら通りを過ぎてゆく車、
境内の木々や草花に当たって滴る雨粒、
当分止みそうにない雨雲を纏った空の色、
それらの記憶は、実に鮮明に今でも胸に迫ってくる。
あの旅行の思い出は?と聞かれたら、真っ先にこの風景だと答えるだろう。

順風満帆な旅は、とてもスムーズで安心感はあるけど、
何かハプニングを伴った旅の方が、
断然思い出深いものになることはどうやら間違いないようだ。

旅の計画を開始したその瞬間から、旅は始まる。
距離や時間を計算しながら、地図を確認したり列車の時刻表を見たりする。
そうしながら自分の頭の中は、すでになんとなくその情景を作り上げている。
朧げながらもその街を歩いている自分を思い描いている。
旅のシミュレーションをすることで、思考は一足先に旅に出るのだ。

ところが、ハプニングについてはあまり事前に予測したいものではない。
想定はしないといけないけど、想像はなるべくしたくない。
悪い予感は当たったら嫌だからね、縁起でもないからね、と。
そんな中で、実際にハプニングが起こってしまった場合、
想像だにしていなかった真新しい世界が突如眼前に広がる。
つまりそれが、とても鮮烈な印象として思い出になるんじゃないだろうか。

昔、ハワイ行きの飛行機が乱気流に巻き込まれ、
隣の席の見知らぬアメリカ人の男性と、
手を取り合って恐怖を凌いだことがある。
生きた心地がしないなか、機体がようやく着陸体制に入り、
タイヤが地面についた瞬間、
隣のアメリカ人と抱き合って喜んだのも、
ワイキキの青い海よりもイルカのショーよりも、強烈な思い出のひとつだ。

一見ネガティブに思える出来事は、
後で振り返った時に、何事にも変え難い素敵な思い出となっている場合が多い。

だから、明日もし旅先で雨に見舞われたとしても、
それすらも楽しみに変える心の余裕も
忘れないように
鞄に詰めようと思っている。

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