ベヰジュ 2章「完成版」
川端は、澄ました様子で、部屋に這入ってきた。手を後ろに組んで顎を上げながら、彼は役者を貫徹したのである。柔らかくも確りと張られた彼の躰はみるみる崩れて行き、声にも内声にもしたくないのだろうけれども、『疲れたよ』というふうに聞こえた。『疲れたか』と僕。『風に吹かれれば俺は生き返るはずだ』それなら何故外から戻ってきたのだろう。『暑いから、風もないし、うん』風が無かった、か。僕は窓から半身を出し、外の様子をうかがった。僕らはまだ何も話してはいなかった。「微風が吹いてる」と僕は沈黙