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湖岸道路を駆け抜けろ!湖東から湖南を行く

滋賀県内における主要な国道の中でも、最もその印象が強いのは国道8号だろう。
大津から栗東までは天下の国道1号と重複し、その後は一部区間で国道303号や国道365号と重複しながら福井県境へ到る滋賀県の大動脈といって差し支えない幹線道路だ。
しかし、滋賀県内におけるその整備状況はお世辞にも万全とは言えないのが実情である。

その理由は、車線数に対して交通量が過大であり、交通容量を大幅に超過しているためである。
幹線国道としてこれほどの重要性を持ちながら、なんと一部区間しか四車線化がされていないのだ。
中でも渋滞が酷いのが大津市内の一部区間と栗東から彦根までの区間であり、この区間は交通量に加えて交差点も多いことから、慢性的に渋滞が発生している。

それでは、この区間をどのようにして切り抜けるか。
まず1つ目は、名神高速道路を使う方法だ。
通行料金を要するものの道に迷う恐れがなく、なおかつ最速で到着出来る点からして、総合的にはこのルート選択が最善だろう。
そして2つ目が並行する一般道の迂回ルートを使う方法であり、今回はそのルートを使って大津まで走行したというわけだ。
その迂回ルートこそが湖岸道路で、琵琶湖の周囲を走る複数の県道の通称となっている。

より景色を楽しむなら、大中バイパスを通らないという選択肢もあるぞ

琵琶湖に沿って曲がってはいるものの右左折はなく、一旦入ってしまえば特に迷うこともない。
また、市街地から離れた位置にあり交差点も少ないため流れも良く、琵琶湖を横目に走る事が出来るので眺望も良い。
現状では実質的に国道8号のバイパスとして機能していると言っていいだろう。

今回はそんな湖岸道路を走って大津方面へ向かったのだが、実は前日どころか当日すら行き先が決まっていなかった。
とりあえず鞍掛峠を走り多賀大社へ行きたいという目的しかなく、そこから先はノープランだったのだ。

養老スマートICを下りて、いざ鞍掛峠へ

一応、比叡山ドライブウェイを走って比叡山延暦寺へ行こうかとも思っていたが、結局途中で中断して瀬田の唐橋へ向かうことになった。
そのバカすぎる理由は寝不足で、前日夜更かしをし過ぎたという実にしょうもない理由だった
そもそも比叡山ドライブウェイと奥比叡ドライブウェイを全て走行すると2200円の通行料金を要することもあり、一人で行くのは勿体ないという判断もあったが。


多賀大社

鞍掛峠を抜けて国道306号を走り抜けると、なんとそのまま多賀大社に行けるようになっている。
何度も側を通っていながら一度も参拝したことが無かったので、一度行ってみたいと思っていた神社だ。

昭和4年竣工
反橋が通行禁止になっていないのは珍しい
かなり広い
タッチパネル式ディスプレイを用いた神社は初めて…羽振りの良さが窺える
本殿

多賀大社の前には商店が立ち並び、名物「糸切餅」などが売られている。
餅などのお土産といえば8個や10個などの数が多い箱売りのものが大半で、その場で少しだけ食べるという事がなかなか出来ない。
しかし、ここの糸切餅はその場で食べられる2個入りパックが売られているため、それが出来るのだ。

4人か5人程度ならその場で箱買いしてもいいだろうが、一人か二人の観光客には多すぎる。
ちょっとした所ではあるが、一人旅行や極少人数での旅行が主流になってきた昨今の時流をよく見ており、適切にその需要を捉えているものだと感心してしまった。

爪楊枝もセット
近江牛コロッケなどもある
多賀橋というそうだ。

湖岸道路

多賀大社から瀬田の唐橋までは湖岸道路を走っていたが、天気に恵まれたこの日の琵琶湖はとても綺麗だった。
しかし、悲しいかな。
悲しきロンリードライバーである私は、走行中の写真など撮れるわけもないのだ。

一応信号待ちの際に数枚撮影したが、琵琶湖といっても既に南湖の湖岸まで来てしまっていた。
南湖というのは琵琶湖大橋以南の琵琶湖の事を指す呼び名で、誰もがイメージする広くて大きな琵琶湖は北湖にあたる。
そのため、湖と言いながらも橋の架橋が出来る程度に対岸が近いため、海をも思わせる巨大さを誇る琵琶湖のイメージは薄い。

写真を撮影したのは近江大橋を過ぎたあたりで、ちょうど地図で示した赤線の南端部分のあたりだ。
ちょうど湖の幅が更に狭まるポイントで、対岸が一層近く感じるようになる。
いかに広いとは言え、対岸が見える程度の距離感では湖というよりも川という印象になってくるというわけである。
実は琵琶湖が「川」という表現も、見方によればあながち間違いとも言えない所があるので面白い。

そもそも、湖というものは河川法により「河川」として扱われる
琵琶湖そのものは一級水系たる淀川水系に分類されることから、法律上では淀川水系に属する一級河川となるのだ。

一級河川琵琶湖

さて、そうこう(走行)しているうちに、奥の方に瀬田の唐橋が見えてきた。


瀬田の唐橋

日本三古橋の一つで、淀川の山崎橋、宇治川の宇治橋と並ぶ歴史ある橋だ。
古橋とは言っても何度も架け替えられており、この瀬田の唐橋も木橋などではなく自動車交通に対応した鉄筋コンクリート造の桁橋である

重要な事は交通の要衝たるこの地に橋が架けられ続けてきたという事実であり、また現代においてもこれが受け継がれていることだろう。
むしろ、現代の交通の王様である自動車交通に対応した現役の橋として活躍しているからこそ、現代にも瀬田の唐橋が生きているのだと言えるのではないだろうか。

なお、宇治橋は本橋と同様に自動車交通に対応した鉄筋コンクリート造の道路橋であるが、山崎橋については現存していない。
幾度となく淀川によって流され、近世では渡船により渡していたそうである。

瀬田川
大小あるうちの小橋の方
遊覧船も運行している
瀬田川東岸方面
中島と呼ばれる中洲によりを挟んで西側が小橋、東側が大橋に分かれる
常夜燈
判読できず
唐橋東詰より
中洲にある施設は工事中のようだ
「国土交通省」とある修正箇所は、かつては「建設省」だったと思われる

瀬田川洗堰(旧南郷洗堰)

南郷洗堰の遺構

大津市を流れる瀬田川に設けられた堰が瀬田川洗堰で、明治時代に作られた先代の洗堰は南郷洗堰と呼ばれる。
現在も南郷洗堰の一部が遺構として残されており、往時の姿を偲ぶ事が出来る。

この地に洗堰が設けられた理由は、瀬田川の浚渫しゅんせつに伴う流量の増加を調整するためだ。
江戸時代以前の瀬田川は河床が浅く流量が少なかったため、琵琶湖が増水した際に短時間で大量に排水することが出来なかった。
その結果、琵琶湖及びその周辺の河川は氾濫し、水害をもたらしてきたのだという。

明治になると、このような水害を防ぐために瀬田川を浚渫して河床を下げて流れを良くし、瀬田川の流量を増加させる工事が行われた。
その結果、琵琶湖周辺における水害対策としては効果を上げたものの、流量増加により下流である淀川への洪水リスクを高めてしまったのだ。
また、琵琶湖の水位が必要以上に低下すると渇水を招くほか、漁業等にも影響が生じることから、堰を設けて水位調整をする策をとるに至ったと言うわけである。

南郷洗堰

瀬田川洗堰を琵琶湖側から望む
旧南郷洗堰の一部が遺構として保存されている
かつては角材を人力で投下して堰き止めたのだという
洗堰看守場

アクア琵琶

「Aqours」ではない

南郷洗堰の側に「アクア琵琶」という広報施設がある。
国土交通省琵琶湖河川事務所が運営する施設で、琵琶湖及び淀川水系を中心とした地域の治水や利水の歴史について紹介している。
国の広報施設なので、入館料は無料だ。
子供にも分かりやすく平仮名や振り仮名付きの説明が随所でされており、小学生の校外学習で利用されていそうな施設だと感じた。

だからといって完全に子供向けの施設かと言われるとそうではなく、大人向けの資料も多く展示されている。
国交省が作成した一般向けのPDFの広報資料に似たパネルが多数あり、一般向けなだけあって非常に分かりやすく作られていた。
これを読むだけでも楽しめると思う。

また、あれこれ解説をしてくれるボランティアスタッフがおり、展示物を見ていると声をかけられた。
実はこのボランティアスタッフは国交省(もしくは水資源機構)のOBだそうで、パネルには書いていないような当時の経緯や出来事も聞く事が出来るのは興味深い点だったと言えよう。

南郷洗堰の模型
ボタンを押下すると音声解説は流れたが、模型は動かなかった

瀬田川洗堰

左端に見える茶色の施設は瀬田川洗堰のバイパス水路で、放水量の微調整をするために設置されたのだそうだ。

瀬田川洗堰の堰堤上には県道が通る
国土交通省琵琶湖河川事務所

長命寺温泉

西国三十三所が一つ、長命寺の近くにあるのが長命寺温泉だ。
その泉質はラジウムを含有する放射能泉とのことで、自律神経を整えたりする効能があるのだという。

長命寺山を始めとする小高い山が琵琶湖にせり出したこの地域は、おそらく湖南湖東地域では最も眺望がよい場所だろう。
この地域で湖岸道路を形成する滋賀県道25号は山々を避ける形で内陸部に大中バイパスを建設して通り抜けられるようになっているのであるが、琵琶湖が山に隠れる形となるので眺望は全く良くない。
しかし、県道25号には非バイパス区間(現道)が存在しており、こちら側を通ることでその絶景を観ることが出来るのだ。

今回は長命寺温泉までの短い距離しか走っていないので絶景は観ることが出来なかったが、景色の良さを重視するなら現道を通行することをおすすめする。
ただし、場所によっては1.5車線程度の隘路もあるので、その点だけは覚悟しておいたほうがいいだろう。

大中バイパスの由来は、かつてこの地にあった琵琶湖最大の内湖である大中湖から来ている

琵琶湖周辺の干拓や内湖については過去の記事で語っているので、参考としてリンクを貼っておこう。

ここが県道25号の現道だ

おわりに

ごちそうさまでした

出先で何かを食べる時は、ご当地の料理か、あるいは個人店で食べるようにしている。
しかし、今回は近場に手頃な店がなかったため、瀬田の唐橋近くのココスで済ませることになった。
カリブチキンステーキ、なかなか美味しかった。

今回は長命寺温泉で疲れを落として帰宅するだけだったのだが、まさかの最後の最後でちょっとしたミスをしてしまった。
簡単に言ってしまえば道を間違えたのだ
より正確に言えば米原ICから名神に入った際にランプウェイを本線と勘違いし、右車線を走行していたら彦根方面に出てしまったのだった。

このように高速道路で道を間違えた場合、次のICの料金所の有人レーンにおいて申出することにより特別転回と呼ばれるUターンをすることが出来る
間違えて走行してしまった区間の通行料金は請求されず、そのまま目的地のICに行ったことにしてくれる取り扱いだ。
私はこれまでも二回ほど特別転回をした事があるので慣れており、腹は立ったが焦ることはなかった。

こんなバカなエピソードではあるが、高速道路で道を間違えた際は是非参考にして欲しい。
ランプウェイなどで焦って無茶な車線変更などをすると、本当に命に関わることになる。

ちなみに降りる際のICにおいても有人レーンに進む必要があり、ETCカードを手渡すとレシートを手渡してくれる。
久しぶりに高速で紙の領収書を貰って、少し懐かしい気分になった所で今回の旅は終了だ。

300キロ弱のドライブは軽いうちだが、寝不足が祟り帰宅後は随分眠かった

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