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金閣寺:三島由紀夫

今回貪った本→https://amzn.asia/d/9d0jVPb

1950年7月1日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世人の耳目を驚かせた。この事件の陰に潜められた若い学僧の悩み――ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇……。31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。

久しぶりの三島由紀夫。

本作は昭和25年7月1日に実際に起こった金閣寺の放火事件に取材し、その犯人が金閣寺放火に至るまでをふり返って告白している体で書かれた小説。

平野啓一郎の「本の読み方 スロー・リーディングの実践」を再読していたときのこと。本作の一部が紹介されているんですが、読みたいと思っていた矢先、たまたま立ち寄った古本屋で発見し200円で購入しました(久しぶりの紙の本)。

まず、31歳で書かれたこの作品(31歳でこれ??!!)、文章が重層的でありながらも洗練され、読み手に時間や場所を選ばせるような魅惑的な作品に仕上がっています。ゆえに、

「この本は読み飛ばせない」。。

加えて、主人公や脇役としてでてくる柏木といった主要人物がこれまた頭でっかちで、セリフも長い長い。

全体的にこんなかんじだから、これから何回も再読して少しづつ咀嚼していくような本。

さて、物語で中心に添えられるのは「美」というテーマです。主人公にとっての美とはコンプレックスであり、生きる希望である。その象徴として「金閣」がそびえたつが、人のように死があるものは逆に永遠性を伴い、金閣のように物質的なものは永続的でいて実は儚い存在である。

主人公の美への憧れ、抱く憎悪、そして破壊へと繋がる思想転換には、美がもたらす危険性がありありと映し出されます。

また、クライマックスの手前に、突如として現れる謎の僧侶「禅海和尚」がこれまた魅力的な人物。

本当に「いきなり??」と思うタイミングですが、この禅海和尚とのやりとりがなぜこの場所に無理矢理にでもねじ込まれたのか。そのこと考えるだけでクライマックスの迎え方が全く違ったものになります。それぐらい重要なシーンなんです。


金閣放火を決意した主人公は、禅海和尚にこう問います。

「わたしはどうみえますか?」

すると禅海和尚は、

「善い青年に見える」

自らの内に企てる禍々しい計画を見抜いてくれるかと期待?した主人公。
拍子抜け&ムキになり、ついついギリギリの質問をしてしまうのです。

「わたしを見抜いてください」と詰め寄ります。

ここからが深い。

禅海和尚は、、、、

続きは是非読んでほしいところなのですが、法華経でいう「諸法実相」とはまさにこのことかと唸る描写が展開されます。

そもそも「見抜く」という発想自体が二元論的(表裏、右左、0か100かのように)であり、禅海和尚はその物差しで物事をみません。まさに仏の知見。


再読後、あらたな気づきがいくつも生まれそうな1冊。おすすめです。

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