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ママはロケットに乗って、宇宙へ行ってみたお話

気づいたのは、日曜日の昼のこと。
バイト先のスタッフさんと話している時、
呂律が回らない。

たまにそういうことがあったけれど、
今日はいつにもまして言いたい言葉がうまくでてこない。
そうか、私、緊張でもしているのかなぁ。
そんな風に思っていた。

けれど、翌日の月曜日の朝、義母に電話することがあり
話しているのに、言葉がうまく回らない。
伝えたいのに、口と舌がうまく動かない感じ。
これは、困った…。

けれど他の症状もでていないので、とりあえず
心療的なものかもしれないけれど、
小さな町医者に行ってみてもらおうと電話をかける。

「先に大きな病院で診てもらってください。」
え…大きな病院?!

コロナ渦が心の中にひっかかっている私としては
できれば避けたいけれど、小さな病院で
診てもらえないならしょうがないなぁと
電話を入れてみる。

「今日はどうされましたか?」
「あのー、昨日気づいたんですが、ろれつがうまく回らなくて・・・
水曜日の日、脳神経科に診てもらいたいんですが。」
「水曜日と言わず、今すぐ来てください。」
え…今すぐ?それは無理。

こどもが家にいた。
とても連れて行っていける状態じゃない。

「今日は無理です。」
「いえ、今すぐ来てもらった方がいいです。」
「あの、こどもがいるんで…明日行きます。」
喋っている自分の言葉がまるでカタコトの外国人のようになっている。
「わかりました、ちょっとお待ちください、看護婦に代わります。」

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いろいろとお話をして
「今話されている方がそうですか?」
「はいそうです。」
「ろれつがまわらないようには感じないのですが、どなたかが指摘されましたか?」
「いえ、自分がしゃべってて、中国人みたいな(すみません、例えです)発音で、なんか変だなぁーという感じなんです。」

文章に書くと普通に感じますが、
この時は
「ジブン が しゃべてて ちゅうごくじん みたいなーーー はつ おんで なんか へん だな というかんじ なんです」
という風に話していました。
「とにかく事情はわかりました。何かおかしいと思ったらすぐ救急車を呼んでください。いいですね?それで少しでも早く病院にいらしてくださいね。」
「ありがとうございます。」

・・・救急車・・・
こどもに「ママが何かおかしかったら、1 1 9を押して、
ママが倒れてます、来てください って言うんだよ。」
紙に絵とひらがなを交えて手順を書く

救急車

電話をかける練習。
本当に押したら困るので
「1 1 9ね」と何度も練習。

「もしね、救急車が呼べなかったり、ママに何かあったとしても
あなたのせいじゃないからね。
それは、そういうのがママの運命だったの。
だから自分を絶対に責めたらだめだからね、それだけは覚えておいてね。」
伝わるかわからないけれど、伝えていく。

火曜日の朝。
ろれつは、すっかり治り、いつもの私になっていた。
でも、病院に行かないといけない。

その大きな病院では、
以前お世話になった【脳神経外科】で予約をする。

丁寧に症状をきいてくれる看護婦さんの温かさと笑顔に
胸が熱くなる私がいた。
コロナ渦で大変なさ中でも、がんばっている人たちがいる。
あなたたちのおかげで、私たちは安心して暮らせています、
そんな感謝の想いでいっぱいになっていた。

看護婦さんの話では
私は神経内科が該当だったらしく…
「あの、以前、ここの脳神経外科の先生にMR診てもらったんです。
だから脳神経外科にしたんです。わからなくてごめんなさい。」

先生の名前も忘れてしまったけど、若くて、ハンサムで優しい先生でしたと。

その日診てくれた先生は60代前後の白髭の優しそうな先生だった。

ゆっくり丁寧に話をきいてくれて、
CTを撮ることに。

・・・CT・・・
以前受けた時、造影剤を打って、ちょっと具合悪くなりかけたやつだ。
怖いなぁ~
うーん、どうしよう。
「あのーご飯とか食べてきてはいけないやつですよね?」
「スキャンするだけですので、造影剤はありませんよ。」と教えてもらえた。

そっか、それならだいじょうぶなのかなぁー。
でもそのタイプのは逆にやったことがない…。
「すみません、トイレに行ってきてもいいですか…」
「どうぞ。」

水道

気持ちが落ち着かない時
私はトイレに何度も行く。

だいじょうぶ
だいじょうぶ。

自分の中でイメージをする。

これから私は宇宙に行くため、ロケットに乗るのだ。
ほんの少しの宇宙旅行。無事生還できる。
そんな風に鼓舞した

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CTの機械がロケットのコックピットに見えてきた。
ベッドに横になり、目をつむる。
これから発射準備。

しっかりとベルトをして(ただのイメージです)
宇宙へ旅立つんだ。

うぃーーーーーん。ベッドが動き機械に入る。
いよいよ大気圏突入~宇宙に出る。
そんな風にイメージしていたら、なんだか閉じている目がちかちか星が瞬いているようにも感じて、宇宙にいるような気分に。

ベッドが機械の外に出ていく感覚。
ついに地球へ戻ってきた!

「おつかれさまでした~」
「ありがとうございました。」(宇宙旅行無事生還できたのもあなたのおかげです。と心の中で思いながら…)
放射線技師は私がそんな風に考えていることは、思いもしないだろうなぁ
なんて思いながら。

CTの結果、とりあえず異状なし。
おそらく心療的な原因が強いかもしれないとの見解。
MRはとっていないので、血管に異常があった場合はわからないから、
しびれや呂律が回らなくなったら、救急車かMR検査が必要になるけど。

その日あったことを、夜寝る前に、こどもにおかしく、楽しく語る私。ついつい熱が入る。
こどもたちも大爆笑で笑い転げる。話が弾み、みんなで夜更かし。
げらげら親子で笑いながら、楽しい、いい時間が過ごせたかなと思う。
 
いつも心に思うことがあります。

こどもが小さいうちはあっという間。
たくさん抱きしめて
たくさんの大好きを伝えて
一日、いちにち、大切にすごしたいなぁと思うのです。

今日も読んでくださって、ありがとうございます。

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