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略すなら「ヘビメタ」よりも「メタル」がいい だけど好きならそれでいい

※8月5日、多くの反響へのお礼と、 一言お伝えしたいことを文末に追記しました!

「ヘビメタ好きのアナウンサーって内容で、書いて欲しいんですよ」

…いったい何を言ってるんですか、広報局。
あまたのアナウンサーの中から、私を選ぶことはないんじゃないですか?
いいんですか?けっこう面倒な内容が続きますよ?

あとそもそも「ヘビメタ」じゃないんですよ。
「ヘヴィメタル」せめて「ヘビーメタル」。略すなら「メタル」ですよ。(※)

ね、めんどくさいでしょ?割と終始こんな感じですよ?
そんな記事を書いて広報になると思っているんですか?え?いいの?

…こんにちは。アナウンサーの吉田一貴と申します。秋田局でアナグループのチーフをしております。
ハードロックとヘヴィメタル(以下、HR/HM)を愛して四半世紀。日々爆音を聴きながら、時にはHR/HM絡みの番組も担当してきました。

画像 ギターを持った吉田アナウンサー

今回、改めてメタルと仕事について振り返ってみたのですが、実はそれぞれがつながっているかも?と思うに至っております。
少々面倒な内容が続くかもしれませんが、お付き合いいただければ幸いです。
(なお、専門用語が多いため文末に脚注としてまとめておりますが、あくまで個人の意見です。)

※)「ヘビメタ」…この言い方を嫌う人もいますので取扱注意。ヘヴィメタルを揶揄やゆするような形で使われることもあるからですが、気にせず使用するメタル好きもいます。まあ好きなら何でもいいんです。
一方、NHKにおける表記は、本来なら「ヘビーメタル」。が、あえて、今回は、ここだけは、ヘヴィメタルで書かせてくださいよろしくお願いいたします。

はじまりはガンズとアングラ

出会いは、高校1年の時。
そのころの私は、一部の同級生たちとの人間関係がうまくいかず、もやもやした気持ちを抱える毎日を送っていました。思春期ゆえに、何か世界が薄暗くなってしまったような感覚。ちょっと暗い気持ちで登校する日々。 

そんな時出会ったのが、「ガンズアンドローゼズ」(※)でした。

ある日友人がCDを貸してくれたわけですが、ドクロのCDジャケットといかにも不良っぽい見た目のバンド写真に、何か「イケナイ物」を手に入れたような緊張感を今でも覚えています。
ドキドキしながら再生させると、今まで聞いたことのないギターの音色と、激しいリズム、そしてボーカルのシャウト…頭を揺さぶられるような衝撃。

この音楽って、ひょっとして自分の暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるのでは…?

私は友人にさらなる音色を求めます。
手渡してくれたのは、ブラジルのメタルバンド「ANGRA(アングラ)」(※)。
普通、ガンズから入ったなら次はボンジョビ(※)とかヴァンヘイレン(※)とか、もう少し分かりやすいところに行くもんでしょ、と今なら思いますが、ANGRA聞かせたかったようです。

そしてこれが、私をHR/HMの深い世界から離れられなくしてしまいます。
ツインギター(※)の高揚感、ハイトーンボイスの多幸感、そして独特の世界観を醸し出すサウンド。これがヘヴィメタルというものか!!

こうして私はHR/HMの深みにのめり込んでいきます。しかし、これで薄暗い世界からも開放!…とはならず、相変わらずもやもやも暗い気持ちも持ち続ける高校生活を送るのですが、そんな時寄り添ってくれるのもメタルという音楽でした。

※)ガンズアンドローゼズ…ご存じ「ガンズ」。1987年デビューのアメリカのハードロックバンド。中学から高校にかけてこのバンドを聞くことで、少年少女はちょっと大人になるもの。現在は全盛期のメンバーが復帰し、全世界でツアーを大成功させている。一方筆者はイジーの復帰をいつまでも待っている。

※)ボンジョビ…アメリカのハードロックバンド。最も有名な洋楽バンドの一つであろう。「Livin’on a prayer」や「It’s my Life」など、HR好きでなくても一度は耳にしたことがあるのでは。先日、元ベースのアレックジョンサッチが亡くなったことは、NHKでも報道。
筆者はリッチーの復帰をいつまでも待っている。

※)ヴァンヘイレン…こちらも説明不要のアメリカのバンド。今は亡きエディ・ヴァンヘイレンのギタープレイは、世界のギタリストの憧れ。どのボーカルの時代が好きかでファンの意見が分かれることもあるが、筆者は全部好き。ゲイリーシェローンも好き。

※)ANGRA(アングラ)…1993年デビューのブラジルのヘヴィメタルバンド。メタルにクラシック音楽とブラジル音楽を融合させ、独自のオリジナリティを発揮。実はブラジルはヘヴィメタルが熱い所。

※ツインギター…ギターが2人いるバンド編成。リードギターとリズムギターで音に厚みを持たせることもあれば、リードギター2人という形でギターソロを盛り上げることも。いずれにせよ音数の多さや厚みがある音作りは、HR/HMに重要な要素。

画像 ガンズ日本ツアーのチケット
2017年ガンズ日本ツアーのチケット。お守り代わりにいつも財布にしのばせています。

突き抜けるから寄り添える。

あくまで私見ですが、HR/HMはとにかく「突き抜ける」音楽です。

どこまでも激しくもすれば、繊細にもする。
底抜けに明るいメロディ、谷底のような暗いメロディ。
人間業と思えないようなギターの早弾き(※)。
ドラムのブラストビート(※)。
どうやって声出してるの?と言うようなハイトーンボイスやデスボイス(※)。
とにかく突き抜けているからこそ、多様な世界を作り出すことができます。

だからこそさまざまな感情に寄り添うことができるのではないでしょうか。
気持ちを高ぶらせたいときには、雄々しいクラシックメタル(※)を。
パーティー気分ならLAメタル(※)を。
失恋したならメタルバラードを。
鬱々とした気分の時にはブラックメタル(※)を。
少なくとも私はそうしてメタルに寄り添ってもらってきました。
それで現実が変わることはなくても、気持ちを和らげてくれる何かが生活の中にある、というのは救いになってきたと思います。そう、デスメタルで救われる気持ちも確かにあるんです。

こうして私は、メタルを多く扱うCDショップに通い、HR/HMの専門誌を買いあさり、"日本のメタルゴッド“伊藤政則さん(※)のラジオを聞き続け、常にメタルに寄り添ってもらいながら青春時代を過ごしてきました。

以前番組用に自分でまとめたHR/HMジャンルの歴史。ごく簡略化していますが。

そんな私がNHKでアナウンサーをすることになるわけですが、それも音楽とは無縁ではありませんでした。

※)ギターの早弾き…こう聞いて誰を思い浮かべるかは人それぞれ。「鎌倉殿の13人」の大河ドラマ紀行で、「ギター演奏:ポールギルバート」の表記を見てときめいたギター好きは多いはず。

※)ブラストビート…とにかく高速で連打するドラムビート。デスメタルやグラインドコアなど極度に激しい音楽で使われることが多い。初めて聞いた人はだいたい笑う。速すぎて。

※)デスボイス…喉を潰したようなだみ声やシャウトで歌う歌唱法で、デスメタルなどで使われることから日本ではこの名前が定着。海外ではグロウルなどと呼ばれる。下手に真似すると喉を痛めるためアナウンサーは絶対手を出してはダメ。でもたまにやりたくなりますよね。

※)クラシックメタル…明確な定義はないが、70~80年代初期に活躍したHR/HMバンド。ブラックサバスやジューダスプリーストをはじめ、NWOBHM(ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュヘヴィメタル)のバンドが挙げられることも多い。NWOBHMって声に出して読みたいメタル用語ですよね。

※)LAメタル…80年代、ロサンゼルスを初めとするアメリカ西海岸から多くのバンドが輩出。それらを総称した日本独特の呼び方。派手なメイクをした見た目とキャッチーなメロディが特徴。モトリークルーやラットなどが代表格。筆者は何も考えたくない時によく聞く。

※)ブラックメタル…北欧を中心に有名バンドが多い。前述したブラストビートに、耳をつんざくようなボーカル、ゆがんだサウンドで決してキャッチーではないメロディを奏でる。明るさは皆無。初めて聞いた人はだいたい「怖い」と言う。筆者もそう思う。だがそれがいい。

※)伊藤政則さん…音楽評論家で、長年HR/HMのTVやラジオのパーソナリティを務めている。海外の世界的バンドとも交流があり「マサ・イトー」の名前は世界中に知られている。レコードやCDでの解説(ライナーノーツ)の世界観は唯一無二。

メタルと司会とアナウンサー

そもそもアナウンサーを目指そうと思ったきっかけは、小学4年生の時に地元ラジオに出演したことです。
自分で何かを伝える面白さを知ったことがその後に続いています。

一方で、どんな仕事をしたいのかを明確にしたのは、大学時代に打ち込んだバンド活動です。(もちろんHR/HMバンドで、私のプロフィールにある「ペインキラーを原キーで」というのもここで培ったものです)

そこで味わったのがMCの面白さ。
いかにお客さんを乗せて、楽しんでもらうか。自分の言葉運び一つで、演奏への観客の入り込み方が変わってきます。
それを目の当たりし、MC・司会の醍醐味だいごみを知ることになりました。

画像 吉田アナウンサーの学生時代、バンド活動の写真
学生時代のバンド活動。ギターポップっぽい格好ですが、弾いてるのはスレイヤー。

「アナウンサーになってステージ司会をしたい」 
その思いを就活でも熱弁し、NHKに入局。その後、念願叶い、「MUSIC JAPAN」や「BS日本のうた」「紅白歌合戦ラジオ実況」などで司会を担当。
音楽のジャンルは色々あれど、どの番組においても、メタルバンドをしながら感じたMCの魅力が、自分の原動力になってきました。

一方で、HR/HMへの思いを隠しきれず、様々な形で仕事にも昇華していきました。

富山局時代に担当したラジオ番組では、「ジングル」という、コーナ-を切り替えるための短い音楽に、こっそりセパルトゥラ(※)を使ってみたり、京都局で立ち上げた音楽コーナ-では、日本メタル界が誇る・THE冠さん(※)をゲストに呼んだりと。

いや、もちろんただの趣味というわけではなく、ジングルに関して言えば、切り替えにふさわしいシャープさを持った曲を選んだだけで、THE冠さんに関しては、地元出身のこんな素敵な方がいる、ということを京都のみなさんにもっと知って頂きたい!という思いからのもので決して私欲からというわけではない、とも言い切れないところがあるので心よりおわび申し上げます。

また「おはよう日本」では当時世界を席巻せっけんし始めていたBABYMETAL(※)のみなさんを特集。これはあまりメタルには詳しくないディレクターと二人、本当に楽しい企画でした。
当時のやりとり、以前おはよう日本のブログにも載せた記憶がありますが、再掲いたします。

え?VTRでアイアンメイデン(※)使うんですか?いいですねえ!で、どの曲を使えばいいかですか。えっとですね。そんな一曲に絞れって言われても難しいんですよ。どれだけ名曲ぞろいだと思ってるんですかまったく。僕が好きなアルバムは7枚目なんですけどね。一般的に分かりやすいのは別のアルバムですかね~。そもそもボーカルはブルースディッキンソンでいいですか?ポールディアノ時代も嫌いじゃないんですけどね。おっとまさかブレイズベイリーですか?あはは。でもメイデンだけじゃ、なんかもったいないですよね。おはよう日本でメタル、なんてしばらくなさそうだし…そうだ!ほらBABYMETALの皆さんのお話の中で、スレイヤー(※)が出てきたじゃないですか。一緒に写真撮らせてもらって、『優しいおじさんだった』なんてお話し。思わず笑っちゃいましたけどね。スレイヤーを優しいおじさんって(笑)。ほら、そのインタビュー使うことでスレイヤーの映像も使いましょうよ。あっそうそう、同じ文脈でカーカス(※)についてもお話しされてましたよね!覚えてない?そもそも知らない?マジっすか!?いいですよ今度CD貸しますよ!いらない?なんで?とにかく出しましょうよカーカスの映像!NHKで朝からカーカス!

…CARCASSは叶いませんでしたが、朝からヘヴィメタルがお茶の間に響く喜び。NHKって結構色々できるんだな、と感じたものでした。

そんな私にとってなんと言っても特別だったのは、
FM「今日は一日、ハードロック・ヘビーメタル三昧」です。

※セパルトゥラ…ブラジルのスラッシュメタルバンド。スラッシュメタルとは何かを書くと2万字を超えるため割愛。

※THE冠…京都府宇治市出身のヘヴィメタルシンガー冠徹弥さんによるソロプロジェクト。メタルを愛する者の喜びと悲哀を日本人離れした歌唱力で歌い上げる。宇治市観光大使でもある。

※BABYMETAL…日本が世界に誇るメタルダンスユニット。海外の大型フェスに次々と参加し、イギリス・ウェンブリーアリーナで日本人初となるワンマンライブも。去年、ライブの封印宣言を行ったが、筆者は新たな「お告げ」をいつまでも待っている

※アイアンメイデン…イギリスのベテランメタルバンド。メタルとは何かの答えの一つがアイアンメイデンと言う人も。ちなみに筆者がおはよう日本を卒業するときに、アナウンスメンバーが贈ってくれたのが、メイデンのメタルTシャツだった。

※スレイヤー…アメリカのスラッシュメタルバンド。結局スレイヤーに始まってスレイヤーに終わるんですよ。何言っているかよく分からないと思いますが、それくらい影響力のあるバンド。

※カーカス…イギリス・リバプールのバンドと言えば、ビートルズとカーカス。メロディックデスメタル(※)というジャンルを確立したバンドの一つ。ちなみに筆者は高校時代、オアシス好きの友人に、「これもブリティッシュロックだから!」と聞かせて怒られた。

※)メロディックデスメタル…激しい曲調とデスボイスが特徴のデスメタル。そこに美しいメロディを添えるとあら不思議。得も言われぬ高揚感が。前述のオアシス好きの友人も、「Heartwork」はいい曲、と言ってくれた。勝った。

三昧はフェス

NHK-FMで不定期に放送している「今日は一日○○三昧」。一つの音楽ジャンルをとことん掘り下げ、1日たっぷり堪能してもらう番組です。

HR/HMをテーマにした「今日は一日ハードロック・ヘビーメタル三昧」は、2007年が初回放送。これまでに何人ものアナウンサーが担当してきましたが、私も2015年、第6弾の放送から携わることに。

その時はとにかく楽しくて、色々なメタルに触れながらさまざまなお話を伺えるのがうれしくて。
何せ司会をご一緒したのは”メタルゴッド“伊藤政則さん。青春時代、伊藤さんのラジオに没頭していた自分が、共に番組ができているなんて…。
プロフィールに変なこと書いたせいで、生放送でメタルゴッドの目の前でペインキラーを歌唱するハメにはなりましたが、ああ、この音楽を聴き続けてきてよかったと思ったものでした。

「今日は一日○○三昧」は本当に特別な番組です。
一つのジャンルを9時間~12時間にわたって、同じ趣味のリスナーと共に、分かち合う。
司会をするアナウンサーの力量もそりゃ問われるわけですが、時間が経つにつれ、だんだんとそのことも忘れ、ラジオの向こうの皆さんと一つになっていく感じ…。
これって何かと似ているんですよ。「フェス」です。

2021年2月、第7弾のオンエアでそのことに気づきます。
(※8月3日修正。第7弾のオンエアは2021年12月ではなく、2021年2月でした。記事をお読みいただいた方からご指摘いただきました…!ありがとうございます。)
コロナ禍で、ライブハウスは営業できず、海外アーティストは来日できず、もちろん音楽フェスは軒並み中止…。
こんな時だからこそHR/HMの突き抜けた響きが必要、と数々の名曲をお届けしていたのですが、番組に寄せられるSNSを追っていると、多くの人がこんな言葉をつぶやいていました。
―――「まるでフェスみたい」――――。
そうか、「三昧」は、「フェス」なのか。だから番組という形で音楽を共有し、一体感を感じられるのか。
リスナーに気づかされました。

しかも、これは本当に私の臆測に過ぎないのですが、HR/HM好きとして、同じような経験をしてきたみなさんが、ひとつになっていたと思うのですよ。

画像 伊藤正則さん・吉田アナウンサーの写真
「今日は一日、HR/HM三昧Ⅶ」放送時に。メタルゴッド伊藤政則さんと。
いつもやさしく力強く導いて下さいます。
語り手としても勉強することばかりです。
画像 第7弾のプレイリスト 1~36曲目
画像 第7弾のプレイリスト(37~77曲目)
第7弾のプレイリスト。ちなみに49~51曲目は、私が選曲。「コロナ禍で希望を持てる曲」というディレクターからのオーダー。
ちゃっかりANGRA入れてますが、第6弾との間に亡くなった元ボーカル、アンドレ・マトスと、私にメタルという希望を教えてくれた友人への敬意をこめて。

これまでの三昧のプレイリストはこちらから

「マイノリティー」であることが広げる世界

「どんな音楽聴くの?」
「ハードロックとかヘヴィメタルとか…」
「え、ヘビメタ(笑)」

何度繰り返してきたやりとりでしょうか。
何なんだ、その(笑)は。あとヘビメタじゃない、ヘヴィ(以下略)

…とにかく、メタルが好きというと、なんとなく世間一般の趣味とは違うのかな?と感じるような反応を受けることがあります。
音楽の好みとしては多数派ではないのかもしれません。まあ少数派ですよね、恐らく。

ひょっとすると「メタルは古い」とか「ダサい」とか、そのような印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし現在進行形のメタルはあまた存在していて、今の若者が聴いても「かっこいい!」と思える音はきっとあるはずです。

一方で、仮に「古くてダサい」部分があったとしましょう。でもね、そのダサいことも含めて愛おしいのです。

ヒットチャートにも上がってこないし、カラオケで歌ったら引かれることもよ~く分かっています。
でもね、いいじゃないですか好きなんだから。

「古い」ことも「ダサい」ことも構わず内包して、どんな感情にも寄り添い、少数派であることを堂々と受け入れる。この懐の広さと言ったらどうでしょうか。

それこそがHR/HMの魅力なのではないか、そして三昧では、そんなメタルを愛する人たちが集う場を提供することに、微力ながら携われていたのかなと感じています。

一つのジャンルを愛し、誰に何を言われても「好き」を貫いて、分かち合える仲間は多くなくても、時には仲間なんて1人もいなくてもやっぱり「好き」。
そんな人たちが集う「フェス」として「三昧」が機能していたのならば、実にうれしいことだと思うんです。

(誤解が無いようくり返しますが、古くもダサくもないメタルは無数に存在しています。ぜひ聞いてみて下さい!)

そしてこれは、「メタル」や「三昧」に限ったことではないのかもしれません。
ジャンルは何だっていいんです。
どんな番組でも可能だと思うんです。
同じものを好きなアナウンサーとして、みなさんに情報を提示し、一緒に楽しみ、寄り添えることがあるのだとすれば、それは自分たちの役割ではないか、大げさなことを言ってしまうと公共メディアとしてできることの一つなのではないかとも最近感じています。

それは管理職として、色々な「好き」に向き合ってきたからです。

管理職として見てきた、「好き」の大切さ

そう、恐ろしいことにこんな文章書いていても、私、管理職なんです。大丈夫ですかね色々と。
…ともかく、秋田局で部下として出会った若い仲間たちを見てきて、それぞれの「好き」は、多くの方と分かち合い、寄り添える物なのではないかと感じつつあります。

例えば、秋田局の大谷昌弘アナウンサー

画像 乃木坂46のグッズを持つ大谷アナウンサー

夕方のニュース番組「ニュースこまち」でキャスターを務める彼は、アイドル好きで、ラジオ番組ではアイドルのコーナ-を企画し、アイドルTシャツを着てくる人です。ラジオなのに。

特に乃木坂46のみなさんの熱烈なファン。
その思いがどこかに響いたのでしょうか。ことし2月に放送した「今日は一日“乃木坂46”三昧」の司会に抜てき。

多くのリスナーが注目する中で、乃木坂のみなさんのおしゃべりをサポートしました。好きな曲を選ぶのに丸2日かけていたのはやり過ぎだと思いますが、その愛がファン(オタ)にも伝わったなら嬉しいです。
(当日の本人の思いはこちらのブログに)

新人として秋田に赴任した浅田春奈アナウンサー(現・名古屋局)。

画像 アニメ・カードキャプターさくらと浅田アナウンサー

アニメが大好きで、いつかアニメに関わる仕事をしたいと言っていた浅田アナは、入局3年目にその思いを実現。
NHKが誇るアニメ作品を活かした「アフレコ」のイベントと番組を企画(2021年6月25日の欄が当日の様子です。) 高校放送部や声優志望の若者たちを集めて、プロの声優さんとともに開催。

本人が若手の仲間を集めて「やりたいんです!」と言ってから、ゲストのブッキングや権利関係の処理など、大変だったと思いますが、好きだからこそ熱意を持ってやれたのでしょうね。

何よりありがたかったのは、イベントに参加した高校生たちの反応です。
「地域にいるとなかなかこんな体験出来ないので本当によかった」「声優になる夢、がんばってみようと思えた」など。
誰かの「好き」を後押しする力になれたのではないかと思います。

そしてこの人宮﨑慶太アナウンサー

画像 蝶の標本を持つ宮﨑アナウンサー

今は夕方の「ニュースLIVE!ゆう5時」のリポーターを務めておりますが、先ほどの記事にもある通り、無類の昆虫好き。
局内のみならず、ニュース番組でも虫への愛を熱く語るその姿、初めて目にしたときには驚きましたが、そこにあるのは確かな「愛」でした。
ああ、1ミリも理解できない話だけど、本当に好きなんだな、と秋田局みんなが感じていました。

でも本気の「好き」はきっと他の誰かに届くはず。
だからこそ多くの賛同者を得て、昆虫の番組やイベントを開催でき、こども達にも喜んでもらえたのだと思います。

今は渋谷の代々木公園でも虫を探しているみたいですが、いつか「香川照之の昆虫すごいZ!」に関われるようにがんばって下さい。

誰かの「好き」に寄り添って

管理職だーなんて言っていますが、別に私が何かしたわけではありません。
それぞれのアナウンサーが、他の人より「好き」なことを何かの形にした。
同じものを愛する人たちに届いた。
私は、はぁ色んな興味があるものだねえ、と見ていただけです。
ひょっとするとかつての私の上司たちも、メタルメタル言う私をこんなまなざしで見ていたのかもしれません。「あ、こいつセパルトゥラ使ってるな」ってバレていたのかもしれません。

でも、そんな仲間達を見ていて一応の管理者として思うことは、「好きな気持ち」を大切にした上で、そこから何かに貢献出来ることもあるのでは、ということ。

だって「好き」って最強の感情ではないですか?

「好きなこと」で日々の生活が少しだけ彩られます。
触れることでもうちょっとだけ頑張ってみようかな、と思えることもあります。そんな存在があるって実に素敵なことですよね。

一方で、これだけ趣味も嗜好しこう性も多様化している時代。分かち合える仲間がそばにいないかもしれない。
でも全国、全世界を見渡せばきっとつながれるはずです。ネットに書き込むのもいいでしょうし、SNSでつながるのもいいでしょう。
そこにできることならNHKも寄与できれば。
そんなつながりに、我々NHKアナウンサーも携われたら。

全国には数多くのアナウンサーがいます。色んな「好き」を持った人材がいるはずです。
そんな私たちの趣味や興味や個性が、誰かに寄り添う手助けになるのであれば。
そんなことを若い部下達から教えられた気がしております。

みなさんの好きなものはなんでしょうか。そのどれかと私たちがつながる日が来ることを心から願っております。

というわけで、どなたかまずはスラッシュメタルでつながってみませんか。

吉田 一貴

※8月5日追記

画像 どーもくんとポーズをとる吉田アナウンサー

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