地域を見守るNHKロボットカメラの秘密
はじめまして。入局3年目、静岡放送局で技術の仕事をしている岡本です。
ニュースや番組の中で静岡県各地の映像をお届けしているロボットカメラ(通称ロボカメ)。
静岡放送局はNHKの中でも屈指のロボカメ保有数を誇ります!
なぜ多くのロボカメが設置されているのか。どうやって操作しているのか。
ロボカメの役割や静岡放送局ならではの特徴を、放送では見ることのできない裏側と一緒にお伝えします。
さらに後半には、技術職員がそれぞれの”推しロボカメ”と熱い思いをご紹介! 知られざるロボカメの世界をお楽しみください。
遠隔操作可能な無人カメラ
ロボットカメラは電話線等を利用して、遠隔地でもリモコンを操作して動かせるカメラです。
天気の様子や交通情報だけでなく、地震や台風の時には海岸線の状況を伝えるなど幅広く活躍します。
設置場所は眺望が良い建物の屋上や鉄塔上を選んでいます。
カメラ映像は専用の無線や光回線、インターネット網などを利用して静岡放送局で使用することができます。
いつ起こるかわからない災害にも対応できるよう、24時間収録しています。
海岸線にずらり!
静岡放送局はほかのNHKの放送局と比べてもロボカメを多く保有しています。その数…
23台!
静岡県は東西に長く、海や山などの自然も多いため、どこで災害が発生しても素早く状況を伝えられるように多く設置されています。
図にしてみると、海岸線を中心に各地にカメラがあります。
放送で使用されている映像は、静岡にお住まいの皆さんにとってはおなじみの地域も多いのではないでしょうか。
雨にも風にも鳥にも!! 負けないための点検作業
ロボカメは丈夫なフレームで内部のカメラを保護していますが、太陽の光や潮風、雨などに長時間さらされる過酷な環境に置かれています。
特に雷は故障する原因No.1です。
定期的な点検作業のほかに、故障発生時は緊急で対応に向かうことも多々あります。
そのほかにも鳥に汚されたり、壊されたりしてしまうこともあるため、鳥がロボカメに近づかないように鳥よけを設置することもあります。
普通のカメラと大きく異なる機能として、レンズ前のガラスに付着した汚れを落とすための“洗浄液の噴射”と“ワイパーによるふき取り”も遠隔で操作できるんです!
海沿いのカメラは潮風で汚れがつきやすいため、必須の機能です。
遠隔操作で対処できないときは技術職員がロボカメのもとに向かいます。
ロボカメは高所に設置してあることが多く、安全確保・法令順守のためにフルハーネス講習を受けた者が作業にあたります。
どんなにきれいな景色が広がっていても、作業中はネジ1本も落下させることがないよう、神経は手元に集中させます。
操作はまるでゲームコントローラ―!?
では、実際に遠隔地にあるカメラを静岡放送局からどのように操作しているのでしょうか。
こちらがロボカメ専用のリモコンです。
上下左右やズームだけでなくピント合わせや絞りの調整、色温度フィルターの変更など機能が盛りだくさん。
撮影する向きや画角をメモリー(記憶)する機能、昼夜の時間経過による明るさの変化に対して絞りやフィルターを自動調整する機能も、このリモコンで設定します。
まるで格闘ゲームのコントローラーみたいですね。(必殺技のコマンドはありません)
さらに、静岡放送局にはロボカメを接続・操作するためにこのリモコンが4台もあります!
ロボカメの操作を開始するには、制御や映像の接続などの準備に少し時間がかかります。
放送中、次々とロボカメの映像を切り替えるときでも、カメラを的確に動かせるようにこれだけのリモコンが用意されているのです。
放送中はこれらを1人で操作しています。
より美しく! 富士山を撮るときのこだわり
静岡と言えば富士山を思い浮かべる方が多いと思います。
静岡放送局では富士山のさまざまな表情を伝えられるように、西側や南側など富士山が撮影できる位置に複数のロボカメを設置しています。
冬の空気が澄んだ日に見える、白い雪をかぶった富士山、とてもきれいですよね。
この静岡自慢の富士山をロボカメできれいに撮るために、実は“色”にこだわっているんです。
実際にどのように色にこだわっているのか見てみましょう!
まず何も調整していないときの、静岡県裾野市にある十里木ロボカメで撮れる富士山がこちら。
よく見てみると、雪の白い部分などが若干青っぽい印象です。
実際に人の目で見たものとカメラで撮影したものでは、色に違いが出てしまうことも。
そこで、できるだけ目で見た富士山の色と近くなるように、リモコンのつまみを回して、赤や青を足したり引いたりして色を調整します。
調整後の富士山がこちら!
並べて見比べてみるとこれだけ違いがあります。
青っぽい印象からより肉眼で見た時と近い富士山になったのではないでしょうか!
視聴者の方に「きょうも富士山がきれいだなぁ」と思ってもらえるように映像の色や明るさを調整しています。
今回紹介したのは日中の調整例ですが、もちろん朝日や夕日によって色づく富士山など、その表情ごとに季節感や時間が伝わるよう魅力的な色に調整しています。
僕、私の「推しロボカメ」
実際に朝のニュースや番組でロボカメを操作しているのは技術担当者です。
その1人である私、岡本の推しのロボカメを紹介します。
【静岡局歴3年 老後は静岡で過ごしたい岡本】
私は静岡県内にあるロボカメすべてが好きな“箱推し”ですが、一つ挙げるとすれば日本平デジタルタワーに設置された日本平ロボカメを推しています!
富士山はもちろん、駿河湾や清水港、静岡市街地も撮影することができ、まさに静岡の魅力が盛りだくさんでロボカメ静岡代表だと勝手に思っています。
操作するときはもちろん、点検で日本平ロボカメのもとに向かうと「静岡で働いているんだな…」としみじみ感じます。
放送ではあまり出すことがない、私が好きな日没直後の日本平ロボカメを今回特別にお見せします。
きれいに輝く港と駿河湾、それらを見守るようにうっすらとたたずむ富士山。
職場で少し疲れがでてくる夕方、この映像がふと見えると「もう一息頑張ろう!」と気合が入ります。
私の推し語りはこのあたりにして、ほかの人はどのロボカメを推しているのか、それぞれの技術担当者に好きなロボカメを聞いてみました!
【静岡局歴 約25年 静岡を愛する山田さん】に聞いてみた
静岡が地元の山田さんが好きなロボカメってどこですか?
僕は舞阪(浜松市)のロボカメが好きだよ。
浜松支局に勤務していたときに整備もして、静岡県内で一番関わったロボカメだから愛着も湧くよね(笑)
浜名湖越しの薄暮のカットが特にお気に入りで、夕方ニュースの「たっぷり静岡」の放送でも使ったことがあるよ。
紫色とオレンジのグラデーションがきれいですね!
たしかに山田さんがロボカメ担当の時は舞阪ロボカメの利用が多い気がします(笑)
ロケでもよく撮影に出ている山田さんですが、舞阪ロボカメの操作でこだわっていることはありますか?
舞阪ロボカメで浜名湖を映すときは、空と夕日が映った水面がきれいなので、固定の画角でゆったり見てもらえるようにしているよ。
さらに夕日の位置も季節によって違うので、季節感が伝わるように夕日がきれいに映る画角を探してるかな。ほかの人がなかなか見つけられない画角を見つけられるとうれしいよね。
たしかに季節によって夕日の位置って変わりますよね!さすがカメラマンの山田さん!
定位置にあるロボカメだからこそ季節の変化が分かりやすい、奥深いです…。
大変勉強になりました!!
【静岡局歴4年 かわいいものに目がない岡さん】に聞いてみた
岡さんが推しているロボカメってどこですか?
推しのロボカメって初めて聞かれた(笑)
私は鳥が良く見られる沼津ロボカメが好きかも。
鳥ですか!?
放送だとあまり見たことない気が…どんな鳥が見られるんですか?
鵜の仲間や、ノスリ、カラスとかよく見られるかな!
かわいいんだよね!
こんなに間近で鳥が撮れるなんて知らなかった…!
無人カメラだからこそ撮れるのかもしれないですね。
カメラを動かしたら逃げちゃうこともあるけど、ちょっと距離があればズームして見ることができるよ!
珍しい鳥を見つけたら報告しますね!ありがとうございました!
2人の担当者に聞いただけでも全く違う色がでたロボカメの操作。
番組でロボカメが使用される際にも、どこの映像でどんな動きをしているか注目してみてください!技術担当者の個性やメッセージが表現されています。
情報を伝え、見守り続けるロボットカメラ
静岡放送局では県内各地の様子をロボカメで撮影し、得られた情報を日々の放送に活用しています。
また災害発生時、迅速に映像を届けられるように操作の習熟と保守に力を入れています。