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私は普段、石川県の金沢に住んでいます。北陸新幹線の開業とともに金沢は観光ブーム。若い世代から年配の方までいろんな方が旅先として選び、年間で1000万人を超える方がやってきます。聞くと、食や歴史、伝統やアートなど様々な魅力があるとか。 そんな金沢に生まれ住んで30年。普段とは違う日本の景色を求め、“はじめて”長崎へ行き、およそ1ヶ月滞在したお話5話目)です。

前回分(第4話)は、こちらよりご覧ください。

五島列島ってご存知ですか?

長崎市内から1時間半。滑るように海を走る高速船に乗り、見えてきたのは五島市の中心地、福江島。島にほど近いところでは、海上風力発電が大手を振って迎えいれてくれているのが見える。その日は特に雲の流れが速かった。五島列島のいくつもの小さな島に吹きつける風によって、潮流はかなり速く、事実、漁れる魚は身が”ブリンブリンッ”に締まっている。北陸以北では脂がトロけるイメージのブリも、ここではしっかりとした歯応えがあり、優しい旨みを奥に感じる魚になっている。鰆の昆布締め?みたいな。(言い過ぎかも笑)

正直、長崎に来るまでは「五島列島ってどこ?」って思っていた。ただ、地図で調べるとかなり大きくて、列島南北の長さは80km。もはや、一つの県で「五島県登場!」みたいな衝撃もあった。島内は海と山が近く、福江島には火山まであり、それも驚きだった。カトリック協会?が点在し、2018年には世界遺産にも登録されたことでも有名になった。

四季の味 奴 さんのお造り

五島の色、五感の音

福江島は、西から東、北から南へ車で30分〜40分ほどで向かうことができる。離島はやっぱり海でしょ!と、美しい海を求め、カメラマンの澤田さんとともに、いろんな海岸線をめぐった。島の南東、南、西、北東、それぞれ全く違う景色。でも、どれも美しい。是非ともみてほしいと思ったので今回は写真多めで紹介する。

言葉はいらない絶景

絶景は息をのむと言われるけど、どんな景色でも言葉にする前に感じられることはたくさんある。五島に来て「晴れてたらよかったのに。」なんて思わないでほしい。この日この瞬間に見せる自然の美しさは、コントラストだけじゃない。淡くて細かな色の違いの美しさ。風の音の流麗さ。空気の粒、質感の心地よさ。切り取られた映像の外に広がる世界を想像して。
紹介できるのは、ほんの一部。

もしかすると、この景色に辿り着くまでの道のりが一番楽しいのかもしれない。

島の南:遠く浅く、ウスイロに晴れる

どこまでも続くかのように浅瀬が広がり、晴れた日に敷かれるマリンブルーの絨毯。空に薄いレースがかかったこの日、潮が引いた砂浜に映る風模様も美しい。どこまでも遠くに続く白い空。淡く溶けるうす雪のような、やさしい空。ゆっくりと目を閉じてみて。世界が広がるから。

島の北東:照り色。
音を眺め、朝陽に耳を傾ける photo by Yuji Doi

目に映るのは、堆積岩の小石が集まる海岸線。波が引き、海に惹かれてコロコロと小石が踊る音。トビが鳴き、朝陽が芽吹く音にも耳を傾けてみる。すると、森の草木が遊れる音も聞こえてくる。舌先に空気を、肺で温度を感じる。少しずつ、身体が自然と融和していく。


島の南東:焼きつく黒い海岸線 鬼岳の麓、溶岩が固まった海岸線。
7kmに渡り続く岩石が、未だに海を焦がし、飲み込むように。

島の西:碧い海が朱く燃ゆる
薄曇りの中、島の西へ向かう。西へ抜けた瞬間、雲間から陽が射し、色を失う碧い海。福江島の海は驚くほどに透明で青々としているのに、太陽に全てを奪われた瞬間。ちなみに海の青さは、栄養分が少ない証拠でもある。高い山がない福江島の海ばかりを紹介しているけれど、本当は森の美しさに心惹かれている自分もいた。人の手が加えられてない、数少ない森の木々。この海の綺麗さを生み出す、森の美しさがそこには広がっていた。

ここは食べておきたい五島メシ

五島の海鮮を紹介したのだけど、紹介したいのは、ソトノマと、その2号店knitで食べることができる、五島のお母さん かずこさんの手料理。離島でありつつも島内で多くの農作物が作られ、地産地消ができる福江島。地産地消の1番の魅力は、”最も美味しい状態”で野菜が食べられること。五島産の食材を使った優しくて落ち着くご飯は、食べ終わると元気になれるパワー飯。新鮮な野菜の味を感じれるのも、島へ旅する醍醐味かもしれない。

かずこさんのチャーミングな笑顔と明るさに照らされて、3日間の滞在の中で2回もお邪魔しました。笑 旅先では、ついつい味の濃い外食がメインとなる中で、かずこさんが作る優しい味付けの手料理はどれだけ食べても美味しい。思い返すだけで、お腹が空いてくる。嗚呼、食べたい。

海岸をめぐり、想いをめぐらす

五島を訪れた時には、「こんなに綺麗なとこがあるんだ!」と感動していたことを覚えている。でも振り返ってみて思ったのは、自分が感じていたのは、単に五島に対するものではなく、長崎の豊かさへの感動だったんだと。長崎の各地を巡り、さまざまな景色をみたにも関わらず、まだこんなに綺麗な景色があったんだ!という。

今までの記事の中でも紹介できなかった、長崎の美しい景色たち。ちょっと雑だけども、せっかくなので思わず撮った写真を紹介しておきたい。

影模様
廃色
虚像が実像
扇風機
砂防 photo by Naohiro Sawada
叢雲と群島
鉄のきりん「てっきりん」

自然の美しさは言わずもがなだけど、自然の中に暮らす人も、その一部。そして人が意図しない所で生まれた自然の情景も、こんなにも美しいのかと。人がいたからこそ生まれた景色。長崎の魅力は、自然と人が混ざり合っていること。人と人が混ざり合っていること。このバランスの良さが最大の魅力なんだと気付かされた。

photo by Naohiro Sawada

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