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小さくて大きな海の杜(もり)

私は普段、石川県の金沢に住んでいます。北陸新幹線の開業とともに金沢は観光ブーム。若い世代から年配の方までいろんな方が旅先として選び、年間で1000万人を超える方がやってきます。聞くと、食や歴史、伝統やアートなど様々な魅力があるとか。 そんな金沢に生まれ住んで30年。普段とは違う日本の景色を求め、“はじめて”長崎へ行き、およそ1ヶ月滞在したお話(3話目)です。

▼前回分(2話目)はこちらよりご覧ください。

訪れたのは孤島、壱岐。
長崎市内よりも福岡や佐賀に近く、島民のほとんどが「長崎よりも博多」と声を揃える。ちょっとびっくりして笑ってしまったけど、生活はかなり福岡よりで、方言も少し似ている。「〇〇と〜」って伸ばす感じとか。

島は低い丘陵の地形で、日本海の風の通り道になっているらしく、「明日は風が〜」とか、「波が○mか〜」という言葉をよく耳にする。

そんな壱岐には、長崎空港からORCが運航する小さなプロペラ機に乗って向かう。めっちゃ可愛い。今思えば、こんなちっちゃな機体で、風が強い壱岐に向かうのはすごい。頑張り屋さん。 (搭乗ゲートでアナウンスされないように注意。ゲート開いてから、みんなすぐ乗っちゃって、のんびりしてたら1人になるから。めっちゃ恥ずかしかった。)

朝陽を臨み、日時計とな島原半島

長崎空港のある大村湾を飛び出し、島原半島を眼下に大きく旋回し、日の出とともに壱岐へ向かう。今回、壱岐を案内してくれたのは、島在住カメラマンの目良さん。壱岐のあらゆる自然や人の写真をカメラに収めた目良さんだからこそ知る、壱岐のフォトスポットや魅力をたくさん教えていただきました。

神楽の社、月の社、森の社

はじめに訪れたのは住吉神社。ここは、島の人が初詣に訪れたりする大きな神社。次に月讀神社、その次には熊野神社にも足を運んだ。なんで神社ばかりめぐっているの?と思う人もいるかもしれないけれど、壱岐は日本一の神社の密集地。小さな島内に150以上の神社があり、小さな祠を合わせると数えきれないほどいっぱいあるらしい。地図で見ると本当に神社だらけで、1世帯に1つ神社があってもおかしくないくらいたくさんある。本当にすごい。

海の杜、壱岐という社。

神社が多いことは、それだけこの土地に、何か神秘的なものが眠っているからかもしれない。事実、歴史的には『古事記』の国生みの伝承に登場し、島国日本の中で5番目に生まれたのが壱岐島。古代以前の史跡に溢れ、今もなお日本神話が眠っている土地。島全体が一つの大きな社(やしろ)のように、島を囲む海が一つの杜(もり)のように。ふと、『壱岐』という小さいけれど大きな神社に足を踏み入れていたことに気づく。

住吉神社には、重要無形民俗文化財に登録されている神楽が存在する。もう700年も続くとか。木々の間から漏れる日の光が音を奏でている気がする。

山間いに建つ月讀神社

ここは、薄明かりの朝、月もまだ見える頃に訪れたい。日本は元々太陰太陽暦で、月もまた時を記すもの。忙しなく時を過ごす日々の中、自分の中に流れている本当の時のリズムは、月を読むことで感じられるのかもしれない。

街の声が消え、森の声を灯す熊野神社
干潮時には鳥居まで道ができる小島神社。
ここもまた、月の満ち欠けに時の流れを感じる。
無人島妻ヶ島にある小さな祠と新しい鳥居(衣通姫神社)

神社だけでなく、ちょっと高台にあるオリーブ園から見る景色や、白く透き通る砂浜など、島の各地にある自然と人の暮らしが混ざった情景もまた心地よい。

郷ノ浦を臨むオリーブ園
波の音が綺麗な筒ヶ浜

宿泊したのはLAMP壱岐。屋上にはサウナがあり、勝本港の夜景と星空をみながら、静寂の外気浴。

宿の目の前には、元々焼酎を製造していた会社が手掛ける、クラフトビールの醸造所(ISLAND BREWERY)があり、スタンドで飲める魚介にあうビールたち。スタンダード3種に、季節のビールの計6種。飲み比べセットもあるのが嬉しい。

LAMP壱岐のルーフトップサウナ
ISLAND BREWERYで乾杯
オフ会ゆーりんちー(長崎友輪家メンバーとの一枚) @ISLAND BREWERY

右から、長崎友輪家公式カメラマンの目良さん、妻ヶ島無人島プロジェクトのにごーさん、ISLAND BREWERYのともさん

これは食べておきたい壱岐メシ

「壱岐に行くなら海鮮食っとけ。ウニとか美味しいぞ!」とか、「壱岐牛食べないとね。」とか。美味しい食材に恵まれる壱岐だけに、島外の方からいろいろお薦めされたけど、地域の人たちが何気なく食べている壱岐メシは、カツ丼。

甘くてとろとろ系のカツ丼は、しつこくない甘さでホッとする味でもある。それに安い。

島の人たちに「カツ丼美味しかったです!!」と話すと、「え、カツ丼?!」と驚かれるけれど、「どこどこのカツ丼は?美味しいよ!」と話が広がる。やっぱり、みんなカツ丼が好き。笑

この大きさで700円くらい。しかも、アラの味噌汁が付いてくる。めっちゃうまい。@ふうりん

壱岐は、景色を望み、心を癒すことができる場所。けれども。それは日本の八百万の神にとっても同じで、出雲や伊勢とはまた違う、2000年以上前から続く心のパワースポットであり、コミュニティスポットのように感じた。

photographer / Hiroyuki Mera
 IG:https://instagram.com/merahiroyuki/
 TW:https://www.Twitter.com/merahiroyuki/


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