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シンプルな人間関係に明確なゴールの仕事[36歳からの大工さん修行日記 9週目くらい]

[36歳からの大工さん修行日記 9週目くらい]

何だかんだで二ヶ月が経って、いろいろと慣れて来た。日々、楽しい。

写真は現場で余った間柱(30×105ミリの木材。メインの構造を支える105×105ミリの柱の間に立っていてボードを支えるためのもの)で自宅の家庭菜園コーナーを拡張したところ。
丸ノコで欠きこんで四角の枠にしているだけ。
単に土を区切るだけなので、塗装とかはなし。すぐに腐るだろうが、畑の境が分かれば良いだけなので。防腐の塗料って買うと高いし。
間柱も買うと高い。この写真のものでも三千円くらいはかかる。
こうして使わなければ、切り刻んでゴミになるだけなので、有効活用だろう。

余った材料で、小屋を作りたいなんて、この前書いたけど、小屋の前にちょっとした家具なんかから作っていくと楽しそうだし、エコだなと考えている。
何か作って役に立つもの無いだろうか。
家具の基本、箱物からやっていこうか。

ーーー

大工さんも意外と二ヶ月くらいでいろいろと慣れてくる。
もちろん、まだまだ覚えることは多いし、できないことのほうが多い。

それでも、普通の転職の場合、二ヶ月ってまだまだ何も慣れていない頃だろう。
大工さんは仕事、技術を身に付けるには時間はかかりそうだけど、職場に慣れるという意味では早いかもしれない。

というのも、大工さんは会社員みたいに、いろんな人からの目を気にしなくて良い。
とにかく人間関係が
親方と二人きりか、兄弟子だったり、一つの現場に大工さんは四人いれば多いくらいだろう。
現場監督さんとか、他の職人さんも時々はいるけど、親方さんはあれこれ付き合いもあれど、独立するまでは、基本的には親方について修行していれば良いので、親方と仲良くやっていければ、それだけで人間関係はオールオーケーと言ってしまっても良い。
それに、大工さんは、結構ストレートな人が多いので、あんまり神経質な腹の探りあいみたいなことって少ない気がする。

僕の場合、毎日、親方と兄弟子と、あとはおじいちゃん大工さんぐらいにしか会わない。
みんな良い人なので、人間関係のストレスゼロだ。

さらに、毎日、朝と午前と午後と三回も30分くらいのお茶休憩があるので、仲良くなるというか、まあ、馴染む。
特に、年齢がおじいちゃん大工70歳、親方、兄弟子50ちょい、僕36歳と、上の年齢でまとまっているし、歳も開いているので、何というか程よい距離感や落ち着きがある。ほのぼのしている。
特に何を話すでもなくぼーっとお茶飲んでいることもあるし、兄弟子の肘の痛みと親方の膝の痛みにおじいちゃんの肩の痛みについて大工やってると体がぼろぼろになっていくなんて笑いながら話していたり。
特に新しい話題も、刺激的な話題もなく、それでも笑いながらお茶を飲んでいる。別に爆笑しているわけでもないが、沈黙も別に気まずくない、安心感のある空気だ。

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サラリーマンみたいに人数も多くないし、変に腹の探りあいみたいなこともない。
昇進も降格もない。
カラッとしている。
人間関係のストレスが全くない。
人間に会うことはストレスではないと感じるのは人生で初めてかもしれない。

でも、人間って本当はそんなもんじゃないかって僕は思う。

大きな集団でアレコレ難しいルールや決まりがあったり、暗黙の了解があって、さらには人間関係を探りながらやっていく。
やっぱり、そういうのって難しい。

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もちろん、狩猟採集民の時代から、チームワークっていうのは大切だっただろうし、集団でのルールや決まりはあったに違いない。

だけど、狩猟採集民は獲物を捕獲するというゴー付が明確だし、大工さんも良い家を作るというゴールが明確だ。

組織が大きくなるにつれて、ゴールがよく分からないということが増えていく。
ゴールはよく分からないけど、守らないといけない決まりやルールがある。なぜかは分からないけど、それを守らないといけない。

制服や髪型なんて典型的だろう。
いろんな仕事で、なぜか制服なんかがある。
髪型についても、暗黙の了解があったりする。

大昔、初めてアメリカの空港に行った時に、
「え、この空港職員たち、国の玄関の仕事なのに、髪型とかピアスとか随分と自由だな」
なんて、思ったことがある。
制服は着ていたけど、日本の入国の職員じゃまず考えられない髪型をしていた。

必要な制服は確かにある。
一目で見て、その職場の人と分かったほうが良い仕事ってのはある。
店員なんかそうだろう。制服を着ていないと、誰が店員か分からなくて、商品の場所を聞いたりするのにどの人が店員だか分からなくて差し支える。

ただ、髪型まで日本のサラリーマンが一様に同じようにしている、戦時中だったらみんな丸坊主だったりは、なにか必要性があるかというと、あんまり必要性はない。
休日と同じ髪型でも全く問題はない。
極端な話、鼻にピアスをしていたり、ドレッドを編んでいたって差し支えないはずだ。
実際、金髪でピアスのコンビニ店員だって、制服を着ていたり、ネームプレートを付けていれば店員だと分かるわけだから。

そんなに極端な話じゃなくたって、工場でみんな同じ作業服である必要はない。

とはいえ、もしかすると、制服を統一する方が生産効率が上がる可能性もあるかもしれない。
比較実験して統計取らないと何とも分からないけど。

慣習だったり、常識になっていることには、それなりの意味があったりすることも多いし、また逆に人間の感覚的に良いと思われていることが実は錯覚ということも多いので、一概には言えない。

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話を戻すけど、シンプルな人間関係で、難しいルールや決まりがなくて、明確な仕事のゴール。
そういうのは自分には合っていると思う。ありがたい。

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親方がもともと知っている大工さんということもあって、仕事に早く馴染めてよかった。

当初、大工さんへの転職は随分怖かった。
自分なんかに大工さんが出来るんだろうか。
今も不安はある。

でも、まあ、できなきゃできないだ。
高いところがどうにも苦手で、そこがクリアできるか心配だけど。
まあ、できなきゃできないで、また考えよう。

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大工さんしてると、何となくそういう部分が前向きになっていく気がする。

結局あれこれ言ったって、作れるものしか作れないのだ。

営業していた頃は、何だろう、無理矢理でも工夫して何とかしなくちゃいけないとか。
出来なかったら怒られる、どうしようとか。
そういうのって、多かった気もする。
別に誰に怒られるわけでもないんだけど。

大工さんは木があって、家ができる。
そこの間には無理なテクニックや工夫で何とかするっていうのは少ない気がする。
しかるべき木を正しく加工して、正確に組み付けて行く。
無理は通らない。
一つ一つの作業をきちんと積み重ねていけば、きちんと家ができる。
作業を正確に丁寧にしなかったら、次の作業もずれて、できる家もやっぱり上手くない。
別に住む分には困らない範囲なんだろうけど。

無理は通らないし、無理を通そうと頑張る必要もない。
目の前の作業を丁寧にしていく。
できないものはできない。

まあ、そんなこんな。

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