机を叩けば音がする。キーボードを叩けば音がする。鍵盤を叩けば音がする。髪の毛をただすとき、スマホを開くとき、水筒を飲むとき、必ず音がする。 僕は、たびたび音楽を聴く。 僕は一時期、ベートーベンの交響曲第九番を狂ったように熱心に聴いていた。通称『第九』だ。毎年大晦日に、Eテレで流れる第九を聴いていた我が家は、音楽大好き一家である。父は幼い頃からずっとピアノを弾き続け、今でも弾いている。母はあまり楽器はやっていなかったが、ピアノ曲を中心にいろんな曲を知っている。その血を
小学五年生ヘアーと呼ばれた僕が、大学生になって初めて美容院に行った。ついに中学生ヘアーくらいにまでは進化したような気がしないわけでもない。 これまで床屋にしか行ったことなかった。その床屋は小学生の頃から高校卒業するまで通い続けた行きつけの床屋だ。そんな床屋のおっちゃんは、いつもどうでもいい話をふってくる。 「アリ飼っててさ、ゴキブリとかムカデとか、アリジゴクとかと戦わせてるユーチューバ―知ってる?俺最近そのユーチューブよく見てるんだよね」 へーーー。 「ハゲってね、
大学生になりサークルに入ってから、何度か飲み会に参加する機会があった。大人数が苦手な僕にとっては、かなりストレスがたまるイベントだ。正直あまり行きたくない。 飲み会では、普段はおとなしい人でも、羽目を外してわいわい騒いだりする人がいる。リミッターを解除して、ある種一夜の過ちを犯すのである。お酒の力を借りて。大学の飲み会では大概、飲める側の人と飲めない側の人の2つに分けられる。それはもちろん好き嫌いもあるが、ここでは年齢に重きを置きたい。 最も若い大学生は、一八歳であ
ラーメンとかチャーハンとか、人生の中で時々、レンゲを使う瞬間がやってくる。 レンゲ。形が蓮の花に似てるからレンゲというらしい。もっぱら中華料理を食べるときに使うものらしく、中華料理風日本料理が大好きな僕は、よくレンゲに遭遇する。しかし、僕はレンゲを使わない。 なんで。幼い時は、麺をレンゲに移してフーフーしてから食べていた。ただあるとき気づいてしまった。これでは一緒に食べてる人から大きく遅れて食べ終えることになってしまうと。僕の知り合いに60代のおじさんがいる。そのお