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旅先10kmラン 那須塩原市

那須塩原には親戚が居て、子供の頃から良く遊びに来ていた。今回はおよそ10年ぶりの塩原来訪。
実家に帰ることを口実に、塩原の温泉にゆったり浸かろうという魂胆だった。

親戚へのあいさつを終え、足湯を満喫した後、今晩宿泊するホテルにチェックイン。
温泉やらご当地グルメやらを満喫し、僕達はあっという間に眠りに落ちた。

ここまでは計画の通り。

朝4時、こっそり起床。
手早く走る準備をしながら1階のロビーに移動。
一通り準備体操を終え、静かな温泉街に繰り出した。

今回の走行軌跡…アプリが途中で止まってしまったので手作りした次第。

①~滝見の湯~ゆとりろ那須塩原

ホテルを出ると、目の前に小高い山が迫っていた。
あの山の中に屋外形のレジャー施設があるのは調査済み。
先ずはそこまで行ってみることにした。
ホテルの前の道は、まだ4時台にもかかわらず、そこそこ車が走っていた。
この温泉街で働く人たちの朝は早い。
勝手の知らない街で、孤独を感じないで済むのは、なんとなくありがたい。

ホテルの標高はおよそ550m。目の前の山は目測で+100mくらいだろうか。

②ファミリーマート塩原温泉店

山中へ向かう道を探していたらファミリーマートを発見した。
別荘地などでよく見られる茶色い配色の看板。
そう言えば、ここ以外のコンビニはデイリーヤマザキしか見てないな…。
あちらは赤と黄色のいつもの配色。
気取ってなくてかえって親しみが湧く。
さておき、このファミリーマート…いい場所にあるなぁ。
後でちょっと寄ってみようかな?…という気にさせる。

ファミリーマートの看板を見ると、何故かホッとする自分が居る。

③中塩原板室那須線

ひたすら登りが続く。傾斜はなかなかきつい。
坂の入り口の交差点にあった学校に思いを寄せる。
過疎化が進み小学校と中学校が併合されて、小中学校となった施設だ。
あの学校に通う地元の子供たちは、余裕でこの坂を上り切るのだろうな…と。
息が切れる。体に無駄な力みが入る。
何度か足を止めるたびに、わけのわからない敗北感を感じた。

坂道が緩くなってきた…と気を抜いたら足が止まった。

④箱の森プレイパーク

目当ての看板を見つけ、横道に入る。
一転、急な下り坂が続く。
帰ることを考えるとしんどい。
このしんどさはどこから来るのだろう?
実力をわきまえず、山中に足を踏み入れた罰だろうか?
…地形に抗うのは止めよう。
下り坂が終わり、再び急な傾斜の上り坂が現れる。
息を整え、歩幅を小さく、控え目のペースで…再び坂に挑むことにした。

坂を上ると複数のコテージが並ぶ宿泊スペースに出た。

⑤箱の森プレイパーク~どん詰まり~

坂を上りきるとコテージが並ぶ宿泊スペースが見えてきた。
駐車している車の台数から、コテージは満室のようだ。
ここで気付く。道が途絶えていることに。
プレイパークの外周を一周し入り口に合流するはずだったのだが、道を1本間違えたらしい。
たとえ道が途絶えていても、山道を突っ切れると踏んだのだが、見立てが甘かったようだ。

柵の向こうは崖。地形を完全に読み間違えていた。

⑥箱の森プレイパーク~抜け道~

柵に沿って坂を下る。
崖の切れ目を探すために。
ほどなくそれを見つけることが出来たのは、本当に幸運だった。
というか…施設の地図とかしっかり確認しとけばこんなことにならなかったとは思うのだが。
少し反省しながら抜け道の階段を下る。
管理棟から施設の入り口までは平坦な道のりが続く。
度重なる坂道に辟易していた自分には、大変ありがたい地形だった。

事前に施設の地図を確認していれば、こんなに苦労することもなかったのだろうに…。

⑦塩原小中学校付近

中塩原板室那須線に戻り、坂を下る。
下りながら数軒の民家の隣をすり抜ける。
これらの家には人が住んでいて、当たり前だがそれぞれ違った人生が、そこにはあるわけで…。
走っていると、他者を追い抜くことに優越感を感じることがある。
また追い抜かれることに劣等感を感じることもある。
時として、自転車や、車にまで対抗意識を燃やすこともあるのだが、自分の拙い感情とは関係なく、人々は歩き、車で移動し、世間は動いているわけで…。
世間の片隅で七転八倒する今の自分はいったい何なのだろうか…と、ぼんやりそんなことを思いながら坂を下っていると、大根を満載した軽トラックが僕を追い抜いて行った。
ドライバーは老婆だ。
坂を下りきり、小中学校のある交差点に戻る。
さて、仕切りなおそうか。

小中学校に面した細い道に狙いを定め、ふたたび走り出す。

⑧中塩原~どん詰まり~

渓流に沿った道を走る。
この渓流の下った先には僕の実家があるわけでだが、実家付近で見る川の姿とこの渓流とでは、透明度に雲泥の差がある。
川は下流に行くにつれ、水量を増していく。
そして水量を増すごとに様々な濁りを身にまとっていく。
少し寂しいことのように思えるが、この濁りが様々な生き物を養う栄養分にもあるわけで…たんなる水質汚染と割り切るのは、ちと了見が狭いのではと最近では思うようになった。
純粋さを取り戻すことは出来ないが、濁りを受け入れ恵みを与えることが、川に求められる役割なのかもしれない。
人間中心のご都合主義が過ぎる考えだな…自然愛好家が聞いたら怒られそうと、軽く反省。
道は民家の庭先に続き、そこでどん詰まりとなった。

箒川の清流。

⑨塩原八幡宮~逆さ杉~

川沿いの道を引き返す。
体は軽い。
スタート地点付近で見たファミリーマートが近づいてくる。
ちょっと寄ってみようかとも思ったが、まだ走行距離は10キロに至っていない。
ファミリーマートの近くに名木「逆さ杉」の看板を見つけた。
どうやら坂を上った先にあるらしい。
寄るならこっちだな…と坂道を上る。
国道沿いの神社の境内に「逆さ杉」は聳えていた。
その存在感故に、この巨木にまつわる伝説は多いのだが、個人的に気に入っているのは、この巨木に竜が住んでいるという話。
荘厳な雰囲気を身にまとうこの巨木は、竜の住処に相応しいと勝手に思っている。
竜の威容を巨木に重ね、深く一礼。
国道を出て、宿泊先のホテルに向かう。
再び箒川の川沿いに向かうと、アユ釣りの釣り師たちがポイントを取り合っていた。
まだ5時台だというのに、山奥の温泉街は異様な熱気に包まれている。

塩原の朝は早い。

塩原八幡宮の境内。逆さ杉はご神木なので写真にとらないようにしている。

走後

ホテルをチェックアウトし、家族と木の葉化石園に向かう。
実際に本物の化石が掘れる隠れ名スポットだ。
場所は塩原小中学校の向かい側。
駐車場から校庭の様子が見える。

校庭に目をやると、黒い幟が立っていて、人が集まっているのが見えた。
目の前を数人のランナーが横切る。
どうやらトレイルランのイベントが行われているらしい。

後で知ったのだが…参加者には大根がふるまわれたらしい。

早朝、僕を追い越していった軽トラックを思い出す。
ドライバーの老婆の軽快な表情…。
大量の大根…。

来年はこの大会に出るんだろうなぁ…と淡い予感が胸に宿った。

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