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きっかけは“SNSでの出会い”|タカハ劇団『ヒトラーを画家にする話』サポートスタッフ座談会【前編】

コロナ禍下の中でも演劇に携わりたい若者たちはどう活動しているのか、ご存知ですか?

こんにちは。おちらしさんスタッフのしみちゃんです! 

7月20日より開幕する、タカハ劇団 第18回公演ヒトラーを画家にする話。(※7/19追記 残念ながら全公演中止が発表されました。

現在、本番に向けお稽古や準備、広報活動が進む中で、活躍されているのが「サポートスタッフ」の方々です。

今回はU-25世代を応援するユニコプロジェクトの企画として、公演制作の現場で活躍されている「タカハ劇団 サポートスタッフ」の皆さんをお呼びし、お話を聞いてきました!!

写真左より、市原さん(制作助手・字幕オペレーター)、稲葉さん(美術助手)、辻井さん(広報)、石川さん(バリアフリー)、伊藤さん(広報)

「タカハ劇団 サポートスタッフ」とは……
劇団主宰・高羽彩さんの呼びかけで「コロナ禍下で活躍の場を失った学生・若い演劇人たちを救い上げたい」という想いから募集。共感した9名のスタッフが制作過程から各セクションに分かれ活動している。今回お話をお伺いした5名は、20~26歳の方々。

今、演劇に関わりたい! 多種多様なメンバー

しみちゃん(MC):今日はお集まりいただきありがとうございます! 今日はスタッフとして活躍されている同世代の皆さんに、お話を伺えるのを楽しみにしてきました! まず最初にお伺いしたいのですが、皆さんは普段どんなことをされていて、どうしてスタッフ募集に応募されたのでしょうか?

市原さん:私はフリーで俳優として活動をしています。とにかく演劇に関わりたいという想いがあって、スタッフとして活動させてもらえる場があると知り、勢いで応募をしました! 稽古場を見ていると俳優としてもとても勉強になります。

稲葉さん:私はタカハ劇団のTwitterで募集のツイート見たのがきっかけです。

稲葉さん:「スタッフ募集」という文字に惹かれてしまって……あまり詳細を確認しないまま応募したんです。それでもすごく快く対応してくださって、大学の演劇サークルでもやっている舞台美術のセクションに携わることになりました。学びたいと思っていたので、ツイートを見てすぐに飛びついちゃいました(笑)

稲葉さん(美術助手担当)

しみちゃん(MC):お二人とも思い切って飛び込んだわけですね!! ほかの皆さんもツイートが最初のきっかけですか?

辻井さん:私も「○○さんがいいねしました」という感じで、たまたまツイートで高羽さんの言葉を目にしたのがきっかけです。

辻井さん:大学生なのですが、演劇の現場に関わる仕事には興味があるものの制作には馴染みがなくて。しかも外にすら出ないコロナ禍の中、どうやって繋がりをつくればいいのか分からなかったんです。ツイートを見たときには、とりあえず何でもいいからやってみたいという気持ちで応募しました! 大学の授業と並行しながら、直接稽古場に通わなくてもできるということでSNSや広報の担当をしています。

石川さん:私は元々、学生演劇をやってきて自分の小さな劇団でも年に1回ぐらい公演をしていました。社会人になってからは福祉関係の仕事をしていることもあり、バリアフリーやハラスメントの問題とも向き合っていらっしゃる高羽さんのTwitterは以前から見ていて。スタッフ募集のツイートを見つけたときには、「自分にも何かできることがあるかな」という想いや、今後演劇を楽しむためにもプロの現場を知りたいと思い応募しました。

石川さん(バリアフリー担当)

しみちゃん(MC):お仕事との繋がりもあったんですね。

伊藤さん:私も演劇界隈のクチコミというか、たまたまリツイートなどで募集のお知らせが回ってきたのがきっかけです。普段は「演劇ネットワークぱちぱち」という公益財団法人 八王子市学園都市文化ふれあい財団が主催の『場』を運営していて、他にも、演劇の制作や俳優として活動しています。タカハ劇団は観たいと思っていたものの機会を逃してしまっていたので、「この機会に関わるところまでいけるなんて……!」という想いで応募しました。劇団とスタッフとでお互いの最大公約数を探している姿勢が見えるような募集要項にも惹かれて、是非関わりたいなと思ったのがきっかけです。

しみちゃん(MC):皆さんツイートから、「よしやってみるぞ!」と応募されたわけですね!! “SNSでの出会い”というのも私たち世代らしいと思います。

ズバリ、高羽彩さんはどんなひと?

しみちゃん(MC):皆さんタカハ劇団の想いに共感して、スタッフ募集の門を叩かれたわけですが、実際に主宰の高羽彩さんにお会いしてみてどういった印象ですか?

高羽彩(たかは あや)
早稲田大学卒業。早稲田大学の学生劇団「てあとろ50`」を経て2004年に個人演劇ユニット『タカハ劇団』を旗揚げ、主宰・脚本・演出を手掛ける。緻密な構成と生々しくチープでありながら何処か叙情的な言語感覚が旗揚げ当初から高い評価を得る。【詳しいプロフィールはこちら】

市原さん:楽しい気さくな方です! アップからすごく楽しんでやられているので、周りの俳優さんたちもきっと楽しんでやれるんだろうなというのが伝わってきます。

稲葉さん:演出されているときは役者さんより、役者です。情熱があって諦めない方だなと思います。

しみちゃん(MC):私も高羽さんのインタビューやご自身のコメントを読んで、パワフルに突き進んでいかれるような方というような印象を受けていました。役者さんとしても活動の軸を持たれているんですよね。

辻井さん:企画会議で提案したものを「それいいね!!」と言ってくださって、柔軟な考えをお持ちの方だと思います。ハラスメントの対策や観劇サポートもそうですが、新しいものを取り入れてこれからの時代にあった作品作りを目指されている推進力のある方です。

石川さん:私も似ていて、今の時代に当事者意識を持って色々なことにまで目を向けている方だとすごく感じます。

伊藤さん:稽古場を見てると、頭が切れる方というのが一番の印象です。俳優に対してどうしてほしい、どう考えているということがしっかり伝わるような言語化をされていて。その結果、高羽さんを中心に、みんなで作品をより良くしようという雰囲気が作られていると思います。すごくいい稽古場です。

伊藤さん(広報担当)

選挙の前後に考える『ヒトラーを画家にする話』

しみちゃん(MC):では、話題を変えて、まもなく上演の『ヒトラーを画家にする話』についてお聞きしていきたいと思います。今回の作品の好きなところを教えていただけますか?

伊藤さん:タイトルの通り、突拍子もない設定ではあるのですが、それを置いてけぼりにしないところが良くて。時代考証がしっかりされているのでファンタジーでありながら、「もし」をみんなに考えせるような作品です。

しみちゃん(MC):私もこのタイトルがすごく好きなんですよ!! ひとことでおおよそのあらすじと、「ヒトラーが画家にならなかった結果何が起きたのか」「もし画家になったなら歴史がどう変化するのか」という意味まで含んでいて瞬時に分かるのが、本当に素晴らしいですよね。

石川さん:私はストーリーを読んだ段階なのですが、ヒトラーという個人の性格や、人間が歴史を作っているということに注目しているところが好きです。ただただ歴史的、社会的な大枠だけを捉えていないところが演劇らしいなと思います。

辻井さん:私は政治と芸術の組み合わせが面白いと思っていて。コロナ禍では政治が芸術に対して「不要不急なもの」とある種、突きつけるような形になったと思うんです。今回はヒトラーを芸術側に引き込むことによって、政治を変えていこうとするお話なので、影響をする側とされる側の関係性が逆転したような作品だという印象です。

辻井さん(広報担当)

しみちゃん(MC):なるほど、確かに!! すごく面白い視点ですね。

稲葉さん:稽古を見ているとセリフのテンポ感がすごく良くて、聴いていて気持ちいいところが好きです。なのに脚本を読んでいるだけも面白くて。

市原さん:私は皆さんのお話を聞いていて、今選挙を控えているじゃないですか。自分には選挙権があって、選挙前の色々を見ていて……という状況にも重なってくるなあと思いました。この作品を読むまでヒトラーが芸術家になりたかったことも知らなかったんですけど、プロパガンダや芸術を排除している側でありながら「自分も本当はなりたかったんだ」ということに驚いて。そういったところも、歴史を知らなかった人でも面白く観てもらえるんじゃないかなあと思います。

Q. 担当部署の推しポイントを教えて!!

A. ①広報(伊藤さん、辻井さん)

伊藤さん:広報チームとしては、タカハ劇団としてはやったことのなかったInstagramアカウントの開設などを行いました。この公演やタカハ劇団のためだけでなく演劇業界全体の広報をアップデートしていきたいという想いで、先輩スタッフと活動をしています。戦略的に数字やデータを見るなど、観に来てくださるお客様のためにも、劇団のためにも、両方がハッピーにマッチングできるような効果的な広報・宣伝を模索しているところです。

Instagram(@takaha_gekidan)では、
公演ビジュアルを全面に押し出した広報が展開されています!

辻井さん:私は広報として「偶然の出会い」を大切にしたくて。たまたまSNSでいいねが流れてきたとか、誰かがリツイートしていたとか、そういったところが知るきっかけになればいいなと思っています。大学生の感覚だと舞台を観にいこうと思ったとしても、原作を知っていたり、大型の公演だったり、必ず自分が楽しめそうなものを選んでしまいがちになるんです。未知なものに手を出しにくいというか……。そういった方や普段演劇を観ない方にこそ、ちょっとでも興味を持ってもらえるような情報が届けばいいなと思っています。

しみちゃん(MC):学生のうちは使えるお金も限られていますし、余計にそういった傾向になりがちですよね。すごく素敵な心がけだと思います。

辻井さん:SNSでできることは限られているけれど、投稿するだけじゃなくてこれまでのタカハ劇団の作品について呟いている人にいいねをしに行くだとか。偶然の出会いをもっと外に作っていくような働きかけをしていくことが自分の目標です!

A. ②バリアフリー(石川さん)

石川さん:バリアフリーは前作『美談殺人』に続きタカハ劇団として2回目の導入になるのですが、もっともっと充実した鑑賞サポートにしようという気持ちを周りの皆さんからも感じているところです。

『ヒトラーを画家にする話』では鑑賞サポートつきの公演が2回設定されており、
手話通訳や池袋駅までの送迎をはじめとするサポートが用意されています(公演チラシより)。

石川さん:私も劇場で手話通訳などのサポートをされる担当の方との打ち合わせに参加して、どの席からが観やすいんだろうといったことを考えました。けれど一方で自由に好きな席からも観てほしいですし、どういったサポートが必要なのかもお一人お一人で違います。演劇業界の先駆けとして「いろいろな人に観てもらえる環境を作っていこう」という意識が制作チーム内で共有されているところが良いなと思っているポイントです。

しみちゃん(MC):充実したサポートにしていきたい一方で、自由に観ていただけるようにというお考えは本当にその通りだと思いました。

A. ③美術助手(稲葉さん)

稲葉さん:舞台美術は現時点ではできあがっていないのですが小道具は絶対に可愛いだろうなと(笑) 早く観たいなあ、お手伝いできたらいいなと思っています。舞台監督さんはこれは落とすからどのくらいの素材が良いだとかとてもこだわられていて、「すごいなあ……!!」と思いました。

しみちゃん(MC):それは楽しみですね!! お近くでお仕事を見られているんだなあというのが伝わってきます! 

A. ④制作助手・字幕サポート(市原さん)

市原さん:字幕を作られるプロのスタッフの方との打ち合わせがまだなので具体的な所は決まっていないのですが、「このくらいの長さだと表示できるかなあ」「長いセリフはどうするんだろう」と考えながら稽古を見ています。

しみちゃん(MC):映画じゃないですけれど、字幕だとセリフの長さの部分を考えなければいけないわけですね!

市原さん:そうなんです。私自身はサポートが必要な状況ではないので、必要な方の視点で全部を理解するのはまだ難しいのですが、考えながら稽古を見ているのはすごく楽しいです。

市原さん(制作助手・字幕サポート担当)


ここまで座談会の模様はいかがでしたでしょうか? サポートスタッフの皆さんとのお話では、同世代ならではの感覚や「演劇をもっと知りたい」という想いに共感し、私も胸が熱く思わず前のめりでおしゃべりしてしまうひとときになりました。記事の後編では稽古場での裏話や、サポートスタッフの皆さん目線の『ヒトラーを画家にする話』という作品についてグッと迫ってまいります!! こちらもお楽しみに!!

また、座談会の中ではSNSで公開されている、『ヒトラーを画家にする話』公演PVが面白いと話題に……! スタッフ・市原さんも「まんまとハマっています!」と仰っていました。こちらもぜひご覧ください!!

タカハ劇団 第18回公演
『ヒトラーを画家にする話』


脚本・演出:高羽彩

日程:2022年7月20日(水)~24日(日)
※7月22日(金)19時・7月23日(土)14時公演は鑑賞サポートつき公演
※7/19追記 全公演中止となりました。

会場:東京芸術劇場 シアターイースト

チケット:
前売/当日 4,800円
U-25 2,500円
高校生 1,000円

あらすじ:

――どこから間違えた?

進路に悩む美大生、僚太、朝利、板垣。
三人はひょんなことから、1908年のウィーンにタイムスリップしてしまう。
そこで彼らが出会ったのは、ウィーン美術アカデミーの受験を控えた青年、アドルフ・ヒトラー。
彼らは未来を変えるため、ヒトラーの受験をサポートすることに。
けれどヒトラーにはまったく絵の才能がなくて――
果たして三人は、ヒトラーを独裁者でなく画家にすることができるのか?!
人類の未来をかけた絵画レッスンが始まる。

高羽彩(たかは あや) プロフィール
早稲田大学卒業。早稲田大学の学生劇団「てあとろ50`」を経て2004年に個人演劇ユニット『タカハ劇団』を旗揚げ、主宰・脚本・演出を手掛ける。緻密な構成と生々しくチープでありながら何処か叙情的な言語感覚が旗揚げ当初から高い評価を得る。第4回で初の学外公演、5年目にして座・高円寺演劇村フェスティバルに参加。2010年 紀伊國屋ホール『僕等のチカラで世界があと何回救えたか』(演出:青木豪)脚本、2013年 神奈川芸術劇場『耳なし芳一』(演出:宮本亜門)脚本、2013年芸劇eyesでは新時代の5人の女性劇作家に選出される。2019年『魔法使いの嫁』脚本・演出、2020年『魔法使いの嫁~老いた竜と猫の国~』脚本・演出、2021年『息子の証明』脚色・演出。近年はアニメ・実写ドラマ・ゲームシナリオとジャンルを問わず活躍の場を広げている。主な脚本作品にアニメ『魔法使いの嫁』、ゲーム『takt op.』、ドラマ『ここは今から倫理です。』など。


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